表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/471

139.思索


「良かったな、クォーツ」

「んなぅあ! 『えーほん』ですの、お兄様!!」


 きゃっきゃと喜び満面の笑みで答えたクォーツの姿に優しく笑い頷く、ジャニスティ。まだ一日と少しの時間しか一緒に過ごしていないはずの二人はすっかり、兄妹としての新たな人生を歩み始めていた。


「助けることが出来て、本当に良かったわ」

――私の気持ちを尊重してくれて、この子を救うために……自分の命をかけてでも回復魔法を施してくれた、ジャニスティのお陰ね。


 感謝の気持ちを心の中で思いながら、その“命の繋がり”の深さに目を細めるアメジストは頬をピンク色に染め微笑み、頷いた。

(心を通わせるのに地位や名声、種族や歳も関係ない)


 ガタッ、ゴト……。


「おや……」

 馬の手綱を軽く引いた御者のエデが、呟く。


「ん? どうしたエデ、何かあったのか」


 エデの操縦はいつも心地良く馬車の中は過ごしやすい。朝、一日の始まりに安らぎの空間を与えてくれる。その彼が珍しく馬車をとめ、発せられた声にジャニスティは振り返り尋ねた。

 

「街で服飾の催事があることは承知していましたが、どうも時間と場所の変更があったようですな」


 その言葉にジャニスティは街側のカーテンを少し開け外の様子を、覗う。


「なるほど……」

(此処の場所は、使用許可が出ていないはずだが)


 鋭い眼差しで問題を思索する彼の表情はいつも以上に、警戒をする。


(屋敷へ戻ったらすぐ、フォル様に報告しなければ――本日の業務に響く恐れがある)


 ジャニスティがそう思う理由。それはアメジストの父オニキスが日々、分刻みに仕事をこなしていること、そして忙しすぎる予定にあった。


(時間も午後から開催だったはずだ)

「何かが、おかしいな」


 年に一度、街で行われる服飾の祭典は午後からと聞いていた。そのため取引先の洋服店へ呼ばれているオニキスが来場するのは、午後一時。


 もちろんエデやジャニスティも祭典については最終確認済みだった。


 今日のように街で行われる催し事で急に――しかも連絡無しに場所等の大幅な範囲変更をするというのは、滅多に起こり得ない話。


「ジャニス、何か問題があったの?」

 空気の重くなった馬車内の雰囲気によほどのことか? と察したアメジストが、口を開く。


「いえ、心配ございません。ただ本日は少し、学校までの進路を変更いたしますので、ご容赦下さい」


 いつも通り優しい笑顔で答える彼の声が少し固いな、と気になりつつも彼女は「分かったわ」と、納得した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ