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128.心温


 『ベルメルシア家にいる皆の事を守りたい』

 そう切に願い思うアメジストに芽生えた、力。しかし望み続けたその魔法能力が開花した時から感じている新たな不安。そもそも自分に亡き母、ベリルのような魔法が使えるのか? と、彼女の持つ本当の心は静かに一人、苦しんでいた。



「えッ! お、お嬢様、泣いておられるのですか!?」

「あ、涙が……えへへ、何だか嬉しくなって。とても……心が温かいの」


 ラルミの深い思い、その敬う気持ちを込めた言葉は今のアメジストにとって、支えだ。その『お嬢様の為に』というのはアメジストの自信にも、繋がっていった。


 そして微かに抱いていた自身への喪失感も温かく包み込んでくれるラルミの声により安堵感へと、変化していく。


――アメジストの心は、救われる思いであった。


「し、しかし……あわわわー大変! お嬢様、どうか泣かないで下さいまし」


 彼女の急な涙に慌てふためき、おろおろとするラルミの姿を見てフフッと笑いが込み上げてきた、アメジスト。そして親しみの気持ちを込め、愛称で呼んだ。


「うっふふ、グスッ。ありがとう“ラミ”」

「ハッ! お、お嬢様。そんな、私の――」


 いつも笑顔のラルミが言いかけた、ある言葉。それが何かを察したアメジストはそっと彼女の口唇に、人差し指で触れる。


「――んッ」

 声を静止され少し驚いた彼女にアメジストは微笑みながら、話す。


「言おうとしていたのは『私のような』、かしら?」

「んぁ……はい、申し訳ありません」


 すぐに自分の事を卑下してしまう。しかしそれはラルミだけに限った事では無い。彼女は謝罪の言葉を口にすると下を向き目を伏せながら、返事をした。


「そんな、謝ることではないの。でも……」


「『ラミ』、そう呼んで頂き、大変嬉しく存じます」

(このようなありふれた言葉ばかりで、私がお嬢様を敬う気持ちの半分も、伝えられておりませんが)


 そう心の中で溢れる想いを抱えながらもラルミは、恥ずかしそうに笑みを浮かべるとアメジストよりも真っ赤な顔でそう素直に、応えた。


「うふふ、良かった。何だか今日は幸せな日になりそう……いえ、きっと輝く一日にするの」


「はい! お嬢様が笑顔で私も幸せでございます」


 そして――。


「あっ、そうだわ! こんなに素敵な朝を下さったのは……そう、お仕事の代わりをラルミに依頼してくれた方に、お礼を言わないと――」


 しっとりと両手を組み祈るように目を瞑ったアメジストはラルミに優しく、話し始めた。


 

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