表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/471

11.承認


――ギィー……。


 後ろ髪を引かれる思いでアメジストは入り口の扉へ手を置き、ジャニスティの部屋を出ようとする。が、しかし――二人の事が気がかりで仕方がない。早くここを出るようにと言われていた彼女だったが、足が止まってしまう。


「あの、ジャニス?」


「……」


 ジャニスティは集中しているのか? それとも彼女の声が小さすぎて聞こえないのか? 返事はない。「このまま出て行ってしまったら、きっと後悔してしまう」そう思ったアメジストは、今の気持ちを彼に伝える。


「聞こえていなくてもいいの。でもこれだけは言わせて! ジャニス、どうか無理はしないで。その子の命はもちろん助けたいわ。でも……でもね。あなたの身に何かあったら私、悲しいの」


――きっと、耐えられない。


 ベッドの部屋にいるジャニスティの白いシャツが、少しだけ見える。ピクリともしない大きな背中から、やはり返事はなかった。聞いてくれているのかも分からぬジャニスティの姿をもう一度遠くから見つめ、入り口に向き直った。寂しい気持ちになりながらもゆっくり扉を開く。周りに誰もいない事を確認すると、静かにその場を後にした。


 ガチャ……――コツ、コツ……。


 足音が遠くなっていく。アメジストが部屋から離れたのが分かると、ジャニスティは扉へ向かい鍵を閉める。そして、小さく呟いた。


「お嬢様、ありがとうございます」


 ベッドへ急いで戻ると、心痛な面持ちでレヴシャルメ一族の生き残りと思われるその子に話しかける。もちろん意識のない状態で答えが返ってくる訳はないのだが、レヴ族への敬意と許しを得たいという思いからの行動であった。


「夢想のレヴシャルメの血を継ぐ者よ。これから私が起こす行い――どうか認め、許しを」


――今後、どのような未来になろうとも。


 承認を求める言葉を、眠るその子に告げるジャニスティ。そしてアメジストの準備した透明ガラス皿に入った水を確認すると、それが置かれたテーブルの引き出しを開ける。そこから彼が取り出したものは、手紙などを開封する時に使うペーパーナイフであった。


「許せ、こうするしか方法がないのだ」


 スーッ……――ポタ……ポタッ。



 急ぎ足で自分の部屋へ向かうアメジスト。そして運良く、誰にも会わずに辿り着く事が出来た。


 ガチャッ――パタン。


「はぁ~、無事に」


――でも。


 明日一日、絶対に部屋へは近づかぬようにと言われているアメジスト。しかしその心はざわつき、不安が過ぎり始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「???!!!!」 うう…続きが気になります…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ