『角が折れても、刹那の舞踏会を俺は飛ぶ』─筋肉は裏切らない─【ラジオ大賞企画作品・全キーワード使用】
こちらは『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞(https://www.joqr.co.jp/ag/article/164182/)』企画への参加作品です!
・文字数(空白・改行含まない):1000字 (ちょっきり!)
・全キーワード(年賀状/オルゴール/合い言葉/自転車/雨宿り/ギフト/ホットケーキ/風鈴/サバイバル/木枯らし/舞踏会)使用!
…えっと、「クリスマスまでの間、彼らは何をしているんだろうな〜?」と思ったんですよ(笑)(*´艸`*)
「まだだ…まだ足りねぇ!」
木枯らしが骨まで削る北の朝、ルドルフは吠える。
倉庫の床に蹄を叩きつけ、限界を越えたスクワットを続ける。
これは信仰だ。
空を飛ぶという行為に、甘えは死を意味する。
「飛ぶ前に、まず鍛えろ」
汗が凍りつく中、壁に貼られた古い紙切れが視界に入る。
戦友からの年賀状だ。
─クリスマスはサバイバルだ。
それが俺たちの合い言葉だった。
自転車型トレーニング器具を全力で漕ぐ。
肺が焼ける。心臓が裂ける。
オルゴールを鳴らすのは情緒のためじゃない。
リズムで呼吸を支配するため。
これは心拍を整えるための武装だ。
外では吹雪。
若いトナカイが戻れず、廃屋で雨宿り―いや遭難していた。
震える肩を掴む。
「筋肉があれば、迷わない」
厨房ではホットケーキが焼かれていた。
甘い。
だがこれは慰めじゃない。
血となり肉となる覚悟の食事。
明日を飛ぶための燃料だ。
風鈴が鳴る。
ちりん、と。
異国の風は、覚悟が整った合図。
夜、最終確認の舞踏会ならぬ武道会。
優雅さなど不要。
俺の背中、広背筋が語る。
必要なのは、筋肉と意志と執念だけだ。
角が軋む。
脚が震える。
大臀筋、ハムストリング、脊柱起立筋―すべてが悲鳴を上げている。
それでも俺は立つ。
背後で蹄の音が揃う。
鍛え上げられた同士たちだ。
胸郭は厚く、首筋には筋が浮き、角には無数の古傷が刻まれている。
誰一頭として、地獄を見なかった者はいない。
視線が集まる。
言葉はいらない。
俺が一歩踏み出せば、全員が続く。
『筋肉は裏切らない。空もまた逃げない』
それが、この群れの掟だ。
今夜は一度きりの舞踏会。
視線の端に、彼女がいた。
群れの後方、灯りの届かぬ場所で、静かにこちらを見つめている。
細い首、白い息、儚げな瞳。
俺の恋人だ。
蹄を止めることはできない。
近づくことも、触れることも許されない。
今夜、俺が飛ばねば、明日は来ない。
別れの言葉は交わさない。
それは弱さになる。
ただ一瞬、角を伏せる。
向こうでは、戦友が待っている。
赤い外套を脱ぎ捨てたサンタ。
その身体は筋肉で覆われ、白い髭の下で歯を食いしばっている。
奴もまた、生きる獣だ。
「遅れるなよ、ルドルフ」
聞こえなくても分かる。
筋肉がそう告げている。
音楽は風。
照明は星。
踊りの名は、配達。
誰かの枕元へ、確実にギフトを届けるため、
俺たちは空で命を削る。
俺の大腿筋も唸った。
木枯らしの向こうに、使命がある。
鍛え抜いたこの身体で、今日も飛ぶ。
サバイバルの、その先へ。
(了)
…で、「サンタさんはプレゼントの準備で忙しいなら、トナカイさんたちは空を飛ぶために筋トレしてるのかな〜?」と思ったんです!(笑)(*^▽^*)a<パワー!
…プレゼントが、プロテインばかりだったらどうしょう…?(;・∀・人)<お読み下さり、ありがとうございました!




