蘭華(対話)
古代インドに語り継がれる叙事詩「ラーマーヤナ」、ヴィシュヌ神の化身「ラーマ王子」の愛する「シーター妃」を奪還するために耗発した羅刹羅闍「ラーヴァナ」との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再開を果たした物語...
もしこの物語は運命によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生「椎谷・蘭華」がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出した。
彼女が痛感する...コミュニケーションの大変さを
スリランカの最大都市、コロンボ
市内の宿屋の中
蘭華は思った。
ようやく一歩が進めた気がする。
小さな一歩だけど、人類にとっては大きな一歩だとどこかの宇宙飛行士が言っていた名言があった。
それと同じぐらいここで私も人類としてはじめて羅刹とのコミュニケーションを取ったのだ。
さらに相手は超大物の魔王と呼ばれる存在...世界的な超有名芸能人とか国際的な権力者とかのレベルを超越して、古から伝わった...叙事詩の中に登場した架空だと思った存在が...今目の前にいる。
昨日のあの大きな蛇との戦い...
あの空色の肌...
あの鎧と武器...
あの天まで轟くような咆哮...
だと思ったら、あの大蛇さえも勝てないのにあっさり謎の子供に拳を止められて、さらにもっと遠いところまでぶっ飛ばされた。
そして、あの子供が消えた...
前の謎の少女みたいに...
それからなんとかスタッフに話して、男性2人かかりでピックアップトラックに気絶した巨漢を乗せてコロンボまで運んで、この宿屋の部屋まで連れていただいた。
一苦労だった...
お金は要らないと言われたけど、一応チップのような口止め料のような感覚でお金をある程度渡した。
警察沙汰にならなくて、よかったけど...
早く日本に帰りたいけど、まだ目の前の大きな課題が...残っている。
謎の巨漢をかくまっているということで警察が来てもおかしくない。
ここは日本じゃないからこそ、少し怖くなった蘭華。
そして、あの巨漢が目覚めた。案の定目覚めたばかりには目の周りにある物に興味を持って、外の光景を見た彼?には固まったようだ。
本当に何千年前の存在が今の世界を見ると、カルチャーショックのところじゃないな...と思った私は見守るしかできなかった。
「ランカ」と言われた時、一瞬自分の名前が分かるではないかと思い、ふっと言葉が出たが、冷静に考えると、それはここがランカ島のことを指すのではと自分の早とちりに少し反省した。
でも...
全てが確信に至った今...
この人?に聞かなければならないことがたった一つ。
謎の牢獄や謎の矢に刻まれた文字から推測して、自分が分かった古代言語、【サンスクリット語】の単語をありったけ脳内で整理して、必死に作ったカタコトでの質問をしたら、初めて相手から意思疎通ができた!
サンスクリット語が読めても、実際には話したこともないし、そもそも話す相手もいないことだけで蘭華の語彙力が弱い話ではなく、単純に話せるまでのレベルではない。
それでも必死に何かを伝えようと思ったら、案外できるもんだな...と蘭華が感動した。
さらに、「あなたは魔王ラーヴァナですか?」という質問に対して、「はい」という答えが帰ってきた。
どうしよう...どうしよう!
自分の考えが正しかったというものの、いざ本物の羅刹の王と対面することになったら、緊張してきた。
超大物とのインタビューに挑んだ記者さんとかって...どうやって緊張せずにペラペラと話を進めるの?今すぐその方法を教えてほしいよ~
今自分が分かったことが一つある。
ここで慎重に言葉を選ばないといけない。
ギャルゲーや乙女ゲームでよくあるやつだ。
選択肢を間違えると、自分が進みたいルート進めなくなる。
さらに言うとバッドエンド...
今の場合...羅刹の王に食われるか殺されるかもしれない...
自分が伝えたいことを伝えつつ、相手の気持ちを害しないような言葉選び...
なかなか高いコミュニケーション能力が要求される。
私、食われちゃうのかなということまで考えてしまう。
それはそうだ。
相手は未知な存在だ。
しかし、だからこそもっと知らないといけない。
最初に会ったときには助けてもらったようなものだもの...
もし食われるならとっくにあの矢を消滅させたときにやられる。
ここは羅刹でも理性なく人を食べる魔物とかじゃなくて、理性があるという仮説を立て、
それを信じて、ちゃんと会話が通じるように...
最近のことである程度信用ができたから...
何を食べるのか?どのように前みたいに変身するのか?
聞きたいことが山ほどある。
それ以前には自分の言語能力でどれぐらいコミュニケーションが取れるかだ。
まずそこから...
「あなた...死亡...した...然り?否?」
...
...
。。。
黙り?
これは...答えられないのか答えたくないのかどっちだ?
質問を変えよう。
と思った時、蘭華はスマホを取り出した。
何かを検索しているようだ。
「シーター...この人...然り?否?」
とスマホの画面には検索したシーター妃の画像、絵画を巨漢に見せてみた。
「否」
そこから、何枚も画像を見せたが、答えは同じ...
それはそうだよな...これは写真がない時代だから、絵画は書いていた人の想像とかになっちゃう。
写真とか似ている人が分かれば一発で見せられるけど...そんな都合のいいことが...
とそのとき、彼?は指を刺した...蘭華の方に。
そして、一言を放った。
「其方...似る」
...え?
まさか?
本人に近いのは私?
なんで?
私、日本生まれ日本育ちだよ。
縁を感じるけど、インドもネパールもゆかりもないのに...
こんな私が似ているってますます訳が分からないよ。
と何か言いたい顔をしている彼?に言葉を聞いた。
「板...絵...もう一度...」
また画像を見せてほしいの?何かあるの?
と見せた一つの画像に彼?の目付きが変わった…
「猿...ヴァーユの子...シーター」
これ?あ...なるほどな...物語ではこの場所がかなり重要だけど。
「アショックバティカ...庭園」
そして、彼?の表情が何かの決意がついたように表情になって、また言葉を放った。
「行く...所望する」
最後までお読みいただきありがとうございました。
古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
本当にネイティブさえも苦労するのに、別の言語でコミュニケーションが取れる方って、すごいなと感動しました。その大変さが少し伝わると幸いです。
ご興味ある方はぜひ登場した言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もしお気に入りやご興味があれば、「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も受け付けます。
毎日更新とはお約束できませんが、更新をできるだけ頻繁に続けますので、お楽しみいただければ何より幸いです!




