駱(非科学④)
少年は...非科学に振り回され...る?
古代インドに語り継がれる叙事詩【ラーマーヤナ】、ヴィシュヌ神の化身【ラーマ王子】の愛する【シーター妃】を奪還するために耗発した羅刹羅闍【魔王ラーヴァナ】との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再会を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生【椎谷・蘭華】がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
都内某駅前
そこには一人の少年、設楽・駱は誰かを待ち合わせしている。
彼は少し落ち着かない様子を醸し出しながら、本人では平然を装っているつもりでスマホを見ている。
そのスマホの画面に表示されたのはある人とのチャットのやりとりの画面だった。
...今回会うのは2回目...か
1回目はどちらかというと全てが成り行きだった。
偶然に遭ったのにもかかわらず、自分の悩みを打ち明けてしまった...
さらに相手もそれが嫌がる様子も見せなくて、話を聞く相手になってくれた。
優しくて...なんだか暖かくて...
出逢ったその晩、自分からせめて御礼を伝えないといけない...そう決意した僕は交換してもらった連絡先に御礼のメッセージを送った。
その後、相手から返事と共に何かもっと力になれることがあるじゃないかという内容ともう一度会って確かめたいというお誘いのようなメッセージが送られてきた。
それを見た僕はためらいもなくオーケーのスタンプを押した。その直後にスタンプだけでは失礼だと思い出して、分かりました。ぜひお会いしましょうというメッセージを送った。
それで次の待ち合わせ日程と場所を教えられて、今に至った。
この辺ではカフェなどがいくつかあると確認した僕は、知り合いと遭遇する確率が低く、よりお話ができる環境を選んでくれた...そのような配慮があるじゃないかと推測した。
ここで僕はもう一度スマホの時間表示を確認した。
待ち合わせ時間の少し前か...
なぜか...緊張してきた。
なんで緊張する必要があるのか?
相手も一度会ったことがあるじゃないか...自分の事情も一部知っているし...というより自分で打ち明けておいて今になって恥ずかしいと感じるのか?
いや、恥ずかしいという気持ちじゃない。
なんか...こう...待ち焦がれたような...
...また非科学的な言葉が頭に浮かんだな。
相手と初めて会ってから、そんなに時間が経っていないのに...何が待ち焦がれたという抽象的な言葉を選んだんだ。
会いたい...という気持ちは嘘じゃないが、なんでここまで相手に会いたいのか自分も上手く説明できない。
まただ...こんな非合理的な気持ちが...なんと表したらいいのか分からない。
でも...確かにこれは...もしかして...この気持ちは...と思った瞬間、別の人物が僕の脳裏に蘇った。
...香蓮さん...
今は何をしているのか...
結局連絡はしなかった...できなかったに近い。
どの話で連絡すればいいか迷っているからできなかった。
その時に僕は閃いた。
そうだ!もしカレンさんにも一緒に会わせて体験した不思議で不可解の出来事の話ができたら、何かが解決できなくても...力になるじゃないか?
その椎谷村のことも聞けるし、うん!これだ!
そう思った自分はスマホのチャットアプリを起動して、そこに古海さんという名前のアイコンをタップして、メッセージを打ち込んだ。
そして、送信ボタンを押そうとしたその時、
「こんにちは~」
という声が聞こえた方向にラクは反応して見ると、
現れたのは...待ち合わせする予定の相手...竜宮寺・時炎じゃなかった。
「あ、あの...僕に話しかけたのですか?」
「そう!お前だよ~」
「お前?...あの...勧誘ならお断りします。待ち合わせがあるので...」
「その相手は俺なんだよ!俺!」
「いいえ、何を言っているか分かりませんが、あなたじゃなくて...」
「竜宮寺さんと待ち合わせしている...でしょう?」
その名前を聞いたラクは驚きの表情を見せながら、警戒している。
「なぜその名前が...」
「あ...言っておくけど、その竜宮寺さんを攫ったとか...彼女に危険な目を会わせるみたいなことはしていないぞ。逆だよ。」
「逆...とは?」
「パシリだよ...パシリ...その竜宮寺さんにパシられて、お前を迎えに来たんだ。」
「じゃ...竜宮寺さんはどこにいるのですか?」
「それを答える前に...一つ確かめさせてもらいたいことがあるんだ。」
と言った相手は何かを取り出して、ラクの目の前に見せた。
それは、紐に吊された何かの石...
その形...神社でよく見たことがある...そう!【勾玉】だ!
「これはね...龍の涙と呼ばれて...見た目は勾玉だけど...こうして、お前に見せると...」
その瞬間、その勾玉は通常の色から白い光を放った。
「やはり...ね...」と相手がニヤけた顔をした。
「これは何の化学反応ですか?宝石とかは太陽や何かの光を当てると、その石自体が光るということは決して珍しいことじゃありません。」
「あ...そういう理屈っぽいのは要らないんで...」とここで相手はその石をしまって、次のように言った。
「はじめまして...いや...今世では...か。じゃ、久しぶり?の方が良いかな...いつぶりだろう...」
「何を言っているのですか?あなたのことは全く...」
「...同胞...」
「え?...同胞って...何のですか?」
「まさかこんな身体に隠れているとはね...だから匂いとかで全然気付かなかったんだ。見つけるのは一苦労というわけだ。まあ...函館まで行った甲斐があったわ。」
「さっき何を言っているのですか?僕は...竜宮寺さんと会う予定だけで...」
「いつまで寝ぼけるつもりなんだ?いや...支配権はまだ人間の方にあるからか。でも、お前も最近何かの違和感を覚えるときがあるはずだ?
「違和感...というと?」
「夢を見たようで夢じゃないような気がするとか...覚えていないかもだけど...起きたら、なんだか疲れた感じがするとか?まだ若いから、回復が早いか...」
「そんなの...」がないと否定したいが、なぜか否定しきれなかったラク。
「まあ...ついきてもいいよ。本当の待ち合わせ相手に会わせてやる。あの方とお会いしたら、お前も気づくだろう...自分は何者か...とな。
少年は今まで気付かなかった。
彼は非科学に振り回されるではなく、
彼こそが...非科学そのものだと...
今回の感想↓
ラクくんの回だ!
何話ぶりだね...
最近全然登場しないしな...メインストーリーと繋げようとしてもなんだか別行動になっているし、これ以上の出番はどうしようかなと...
あれ?
なんかおかしいな...
龍宮寺時炎...シホさんと会う予定だけだったのに...
ちょっとうぶの感じのラクくんを出してみたかっただけなのに...
ほのぼののラブコメ感が出したくなっただけなのに〜
なんでこうなった!(いつものことだろうがとツッコまれそう)
怪しい相手...見せたのは勾玉...(龍の涙は思い付きでした)
そして、同胞...?
...まさか!
そんな!
じゃ、ラクくんは、普通の人間じゃない!?!?(そこまで驚くことじゃない気もする)
一体ラクくんは何者の?
というか段々物語が核心に迫っている...
どうなっちゃうの〜?
そ、れ、は...
もうどうなるかそれは次回の楽しみとしか言いません!
乞うご期待!
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改めて最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
また、お陰様で...この作品は34000PVに達成しました!!!
本当にありがとうございます!
この作品を描き始めてあと少しで4年が経ちます。
それでもまだ読んでくれている読者がいる限り、やめるつもりがありません。
(もしかしたら、別の作品を書くこともあるかもしれませんが...並行にしたいです)
このような作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします!
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
https://book1.adouzi.eu.org/n6239hm/
現代社会を匂わせる安全で健康な(訳がない)冒険の世界を描くハイファンタジーです。




