羅亜夢(工夫④)
彼は...また工夫を考える
古代インドに語り継がれる叙事詩【ラーマーヤナ】、ヴィシュヌ神の化身【ラーマ王子】の愛する【シーター妃】を奪還するために耗発した羅刹羅闍【魔王ラーヴァナ】との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再会を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生【椎谷・蘭華】がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
ある夜中のあるコンビニ
この時間帯では客足がこのような場所で止まるのはほとんどなかった。
ここにとどまる客はどちらかと言えば、帰りが遅くコンビニの飯で済ませようとする者か帰宅前に追加のお酒とおつまみを買おうとする酔っ払いの者が多い。
人がまばらなこのコンビニでは、一人の青年店員が絶えない笑顔でレジのカウンターの向こう側で待機している。
そして、店内でさっきから弁当選びに悩んでいた客の一人がやっと選んだ弁当といくつかの商品をカウンターに持ってきた。
「お弁当をお温めいたしますか?」と店員は優しく伺った。
「お願いします...」
「XX円になります。」
客がお金を取り出しているうちに店員がすぐさまに弁当をコンビニ用レンジに入れてから、すぐにトレイに置かれた現金を会計に進めた。
ここで、店員さんがお釣りとレシートを客に渡したときに
「いつも同じ弁当をすぐに決めたのですが、今日は随分迷っていますね。」と店員がその客に自分が感じることを直接に伝えた。
「あ...ちょっと仕事で新しいことにチャレンジすることになったので、それで...今日は少し思考を変えて普段食べてないものに挑戦してみようと思って。」とその客も素直に答えた。
そこで、店員の青年はとても興味津々な顔をして、こう言った。
「この弁当は少し前に発売されたばかりで、中々手を伸ばす客はまだまだですが...自分も一回試したので、味は保証します。興味を持ってくれてありがとうございます。」
「あ、そうなんですか?店員さんがそう言ってもらえると、挑戦しようとする私もなんだか嬉しくなってきました。」
そして、カウンターの裏のレンジの音が鳴った。
その弁当をレジ袋にスプーンとウェットティッシュと一緒に入れて、取っ手が掴みやすくするために少し巻いて、「今日もお疲れ様でした。」と共に笑顔で客に渡した。
受け取った客もさっきより元気になったようだ。
「こちらこそいつも言葉をかけてくれて...ありがとうございます。楽しみにしています...このキーマ風本格四川麻婆豆腐を...」
そして、客はコンビニを去った。
「ありがとうございました!」という店員さんの元気な声で送られながら...
その店員の爽やかさは最近の都会では全く違和感を感じさせないその肌色とは少し違和感を感じさせる。
それは、設楽・羅亜夢の素の部分が醸し出した。
この時間帯だからこそ疲れへの癒やし...一日の鬱憤を晴らす雰囲気の店員がいつの間にか愚痴の相手や悩み事の相談に乗ってくれた名物店員さんという評判だ。
「本当に兄ちゃんはお話聞き上手というか...優しさの塊みたいなもんだな...」と次に会計を待っている少し酔っ払いの客が言い出した。
「いいえ...そんなことがありませんよ...ただ皆さんの少しでも役に立てればと思って...」
「そこだよ!最近の若者がこんな話を聞いてくれねーし、兄ちゃんのそういう天然のとこから話しやすい雰囲気を作ったんじゃねー?」
「それなら何よりです。」とラームはまだいつもの笑顔をしている。
「天然たらしの兄ちゃんには敵わねー...唐揚げも追加で頼む!」
「ありがとうございます!」
そして、その客もコンビニを去った。
「今日はいつもよりお客さんに好かれたね。」という誰かの声が聞こえた。
「店長...お疲れ様です。」
「本当に設楽くんがシフトに入ると、まるで深夜と思えない違う店になったと感じるよ。」
「いいえ...僕は特に大したことをしていませんよ。」
「その大したことじゃないことこそが、君がお客さんに好かれる理由じゃないのか?」
「そう...ですね。あと、最近一つの事に気づいて...」
「何に気づいたのかい?」
「今までもそうですが、さらに一工夫すれば...もっといろんなことが変わるじゃないかと...」
「ほ...工夫か...設楽くんの場合は何をしたのかな?」
「えーと...これも大したことじゃありませんが...純粋に自分の気持ち...願いを込めて仕事に取り組む...そうすれば、お客様により伝わるかと思って...あとはお客様が自ら話します。」
「それは君がそういう性格だからこそできるんだ...そうだな、君の願いがまるでお客さんに届いた...まるで魔法みたいだと感じるね。」
「はは...魔法ですか...そんなものは...いや、まさかそのときの...」
「ん?どうした?」
「あっ!なんでもないです。」
「...じゃ、今日もよろしくね...」
「はい!ありがとうございます!」とラームが店長と呼ばれた人にお辞儀してから、さっきの立ち位置で次のお客さんの来店を待機する。
そうだ...
上川さんが言っていた工夫...仕事も使えるし、もし...より願いを込めることができたら、アレももっと...工夫できるかも...
思い出せそうで思い出せない...あのとき、何を...誰のことを思って...
と何か思い出そうとした瞬間、コンビニのスライディングドアが自動的に開いた。
「いらっしゃいませ!」と爽やかな声でお客さんを迎えたラームだったが、そのお客さんの方を見ると、さっきまでの笑顔が少し驚きの表情が混じった。
店に入ったのはラームにとっても見知りの顔だった。
「父さっ...いや、師匠...」
それはラームの父であり、ラーム自身に課せられた使命を果たすために自ら師匠と名乗り、今はラームに任務を与えている男である。
その男はすぐにカウンターに来て、何かを取り出した。
それは一枚の紙だった。
「荷物の受け取りでお願いします。」と言われたラームはその紙をよく見ると、コンビニで荷物を受け取るときに使う伝票みたいなものだった。
ラームは紙に書いてある内容でレジを操作してから、店の奥にある部屋に入った。
そして、戻ってきた時には一つの箱も一緒に運ばれた。
紙に書いてある内容をもう一度確認して、「この荷物で間違いないでしょうか?」と男に尋ねた。
「はい。合っています。」
「では、こちらに受け取りのサインを...なぜここを指定したの?」とラームは疑問に思ったことを我慢できずに言った。
「あなたの様子見も兼ねたのです。どうやら...斧の方は成功したようですね。順調に進んで私も嬉しかったです。」
「うん...ありがとう...この中身は?」とラームは興味本位で男に聞いてみた。
「いつもの笑顔が消えそうですよ。私相手でもそれはお忘れなく...」
「あ、はい!では、これで受け取り完了です。ありがとうございました。」と言われたままにいつもの笑顔に戻ったラーム。
「あなたの次の任務に使うものです...シフトが終わったら、向こう側の神社で打ち合わせしましょう...良いのですね。」
「はい!かしこまりました。」
「あと...」
「はい?」
「肉まんを一つください...」
「ありがとうございます!」とラームは満面な笑顔で応えた。
次の任務が知らされる前に...ラームは自分の父であり、師匠でもある男に肉まんを渡した。
「ありがとうございました!」
そして、その男もコンビニを去った。
今回の感想↓
久々のラームくんの回だ!
え?あれ?
なぜかコンビニの話になったのかって?
そう言えば、ラームくんは何の仕事をしているのかずっと書いていないままだったと作者が気付き、じゃ...何の仕事だと考えるとき、そうだ!コンビニ店員ならどうだ!
恥ずかしながら、作者は想像でコンビニの店員さんのセリフを書いたのですが、これで大丈夫でしょうかね?
実は本当に実際で会ったことがあるのです。マジで爽やかで超真面目な店員さん!
本当に毎回毎回その接客態度に感動しました。
それで少しキャラを拝借しました。
ラームくんの天然たらしなら、合うかなと思って書いてみると、名物店員さんになっちゃいましたw
この回でラームくんのキャラをより広げることと次の展開に繋げるためにこんな感じにしました。
工夫というシリーズにしたいので、少し拗らせ感ありますが...前のときに成功した斧の件で仕事の工夫も加える...さらに本人ももっと工夫するつもりも見えますね。
ここで...斧?お父さん?師匠?が現れました!
次の任務は一体!の前に肉まんかいw
そ、れ、は...
もうどうなるかそれは次回の楽しみとしか言いません!
乞うご期待!
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改めて最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
また、お陰様で...この作品は33000PVに達成しました!!!
本当にありがとうございます!
この作品を描き始めてあと少しで4年が経ちます。
それでもまだ読んでくれている読者がいる限り、やめるつもりがありません。
(もしかしたら、別の作品を書くこともあるかもしれませんが...並行にしたいです)
このような作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします!
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
https://book1.adouzi.eu.org/n6239hm/
現代社会を匂わせる安全で健康な(訳がない)冒険の世界を描くハイファンタジーです。




