昔話(お鶴の話②)
これは昔話...ただのお鶴の話
古代インドに語り継がれる叙事詩【ラーマーヤナ】、ヴィシュヌ神の化身【ラーマ王子】の愛する【シーター妃】を奪還するために耗発した羅刹羅闍【魔王ラーヴァナ】との戦の末、羅刹の王が敗北者となり、王子と妃が運命の再会を果たした物語...
もしこの物語は何者かの筋書き(運命)によって定められたとしたら、それに抗えないだろうか?
時は現代日本、ある女子大学生【椎谷・蘭華】がラーマーヤナの物語(世界)に巻き込まれ、滅んだはずの羅刹の王との出会いで運命の歯車がついに再び動き出して、心を探す旅が始まった...ぶらりと...
私は...幸せだ...
私は...自由だ...
あの村での役目を全て投げ捨て、この人と一緒に遠くまで逃げてきた。
そう...私は【巫女】という束縛から解放され...今はただただ平穏な暮らしを送ってきた。
神様の力を使わなくても、私はこの人と一緒なら...幸せに暮らせる...
あの村では私にとっても村人たちからの扱いは決して酷いものなんてなかった。
むしろ、手厚く...誰も彼も私を敬意の眼差しで見ている。
しかし、ある日私は分かってしまった。
それは私というより...まるで神様を拝めるような...そんな目で私を見ている。
そうだ...誰も本当の私...突然現れた記憶の無い私自身を見ていなかった。
この人を除いて...
彼も最初は皆と同じ目をしたが、次第にその目は巫女を拝める目から私、彼に頂いた名前...お鶴の私を見る目に変わった。
彼だけが...私を見ている。
本当の私が何者か分からなくても...人間である私をちゃんと見ている。
だから、あの時私の心が決意した。
彼と一緒に村を抜け出した。
社に納めたあの石の破片さえも手に取らず...
ただ私と彼だけ...
そして、たどり着いたのは彼さえもここまで訪れたことのないこの地の果て...
そこには一軒の空き家があった。
前の家主はどこに行ったかも分からず、今はただ誰にも手入れをされずに寂しく捨てられた。
途中でなんとか食料を確保しつつ、ここまでたどり着いたが、ここからは何もないところで暮らし始めるにはとても大変だった。
私は力を使えば、苦労しないのにもかかわらず...彼は私にこう言った。
「お鶴さんは力を使わなくていい...ここからは二人で...一緒に乗り越えましょう...」
「でも...」
「その力が使いたくないから、ここまで来たでしょう?なら、二人の腕と足でなんとかするしかありませんよ。」
今までの暮らしに比べてとてつもない苦労の日々が続いた。
灯りもほぼ炉端に起こした小さな炎だけ...
無論、敷き布団もなく床で寝ていた。
彼は食料確保のために出かけて、最初の食事はただの山菜と近くにある川で取った小魚だけだった。
でも、なぜか...今まで頂いたどんな食事よりも美味しかった。
そうか...
やっと訪れた...私が本当に【自由】を手に入れたんだ。
これは自由の味...他には比べられない味だった。
その後、彼はより良い食材を入手するためにおそらく片道でも4時間かかる一番近くにある集落に出向いた。
幸いなことにその空き家には生活に必要な道具はまだ少し残っている。
私ができることは川から水を汲み、その空き家を少しずつ片付けることしかやることがなかった。
あるとすれば、その辺にある山菜を採るぐらいだが、どれが食べられるか分からない私には最初全部取って、その空き家...私たちの家に持って帰った。
そして、彼が帰ってきたのはすっかり夜になった。
彼が持ってきたのはその日に集落の人々の雑用で稼いだお金で買った食材と家にはない道具だった。
決して量が多くないが、二人で分けてなんとか空腹をしのぐことができた。
そして、初めて採ってきた山菜を彼に見せると...彼は思わず笑い出した。
「お鶴さんは慣れないだけかもね...これ、ほとんどが食べられないものだよ。でも...本当にありがとうございます。」と怒る様子も一切なく後にどの山菜が食べられるか一緒に山の方に行って、いろいろ教えてくれた。
こうして...少しずつ物が足されていき、必要な物は少しずつ揃い始めた。
食料は相変わらず見つかった山菜や木の実...そして、彼が持って帰ったお米や漬物...たまには少量の肉のお裾分けをもらったりした。
少しずつだが、ここは家らしくなってきた。
生活が大変なのは変わらなかったが、彼のおかげで苦とは思わなかった。
一緒に...そして、お互い支え合って...慣れない生活も慣れてきた。
そして、ある夜...彼は持って帰ったのは藁を詰めた敷き布団みたいなものだった。
彼は満面の笑みで私にこう言った。
「これでお鶴さんは床で寝ずに済みましたね。」
そう...その大きさは一人用のものだった。
それを聞いた私の心には何か変化が起きた。
そして、その夜...敷き布団みたいなものの寝心地は床が比べにならないぐらいよかった。
しかし、それよりも私の心は...別のものを求めている。
不自由の中に感じる自由...
これ以上ない自由を手にした今は...それより求めているのは...
私は、この人のことが...
私は彼が床で寝ているところまで体を近づき、彼の体に添って...彼の名前を呼んだ。
「ジロウさん」
その呼び声に気づいた彼は目を開けて、月明かりで照らされた私の顔を見て、慌てた。
「お鶴さん?なんでここに?そんな粗末な布団では寝られませんでしたか?」
「違うの...布団のことは感謝している。ただ...」
「ただ...?」
「あなたのそばにいたい。いいえ、いさせて。」
「それは...こ...困ります。お鶴さんには私なんかに...」
そう言われると、私は手を彼の頬に触り...私の方を見るようにした。
「お鶴さんはやめて...私は鶴よ...あなただけの鶴...だから...今は私だけを見て...」
「お鶴...いや...鶴...ずっと前から...これからも...俺はお前のそばにいる。」
「私もよ...ジロウさん...」
...
......
.........
長い夜が私たちを包み...
そして、夜が明けた。
私が求めたのは自由だけじゃなかった...
それを手に入れて、私は本当に幸せを手に入れた。
そう...思った。
ある日...全てが変わってしまった日が訪れるまで...
今回の感想↓
お鶴!!!
何この展開!
まさかの...そんな!大胆!
急に雰囲気が今までのこの作品から別のジャンルに変わったようなこの感覚!
おおおお!(作者が1人で恥ずかしくて興奮していますw)
まあ...何が起きたかは皆さんの想像にお任せします。
いや...なんかよかったですね(何が?)
あれ?...そういえば前回はめっちゃシリアスの終わりでしたね。
呪いとか罪とか罰とか...
どこに行ったのですかね?
さあ...不思議ですねw
まあ...こんな作者なので、また次に何を書くかって...作者自身でも分かりません。
(実際の話...今回は別の話を書こうと思ったのですが、急遽変更になりました)
なので、次はどうなるかは保証しませんが、それでもよければ、暖かく見守ってください...
もう一回言います!
次はどうなるか?
そ、れ、は...
もうどうなるかそれは次回の楽しみとしか言いません!
乞うご期待!
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改めて最後までお読みいただきありがとうございました。金剛永寿と申します。
こちらは「第11回ネット小説大賞」の一次選考通過作品です!
二次選考で選ばれませんでしたが、一次選考通過作品である事実は消えません。
だから今もこれからも胸を張って、誇りを持って言えます!
これを励みだと思って、前にもっと進みたいと思います。
今まで応援していただいた読者の皆様にはお礼を何回言っても足りません。
また、お陰様で...この作品は33000PVに達成しました!!!
本当にありがとうございます!
この作品を描き始めてあと少しで4年が経ちます。
それでもまだ読んでくれている読者がいる限り、やめるつもりがありません。
(もしかしたら、別の作品を書くこともあるかもしれませんが...並行にしたいです)
このような作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします!
もうここまで来て、付き合ってくれた皆さんに御礼を申し上げます。
次回は誰を登場させるか...どのような物語と展開になるか...今後の展開もぜひお楽しみに!
この作品は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」をベースにした輪廻転生系ローファンタジーフィクションです。
日本では三国志や西遊記よりかなりマイナーですが、南アジアから東南アジアまで広く親しまれる作品です。ぜひご興味ある方は原作にも読んでいただければと思います。
ご興味ある方はぜひ登場した気になる言葉をキーワードとして検索してみていただければと思います。
もし続きが気になって、ご興味があれば、ぜひ「ブックマーク」の追加、「☆☆☆☆☆」のご評価いただけるととても幸いです。レビューや感想も積極的に受け付けますので、なんでもどうぞ!
毎日更新とはお約束できませんが、毎週更新し続けるように奮闘していますので、お楽しみいただければ何より幸いです!
追伸:
実は別の作品も書いていますので、もしよろしければそちらもご一読ください!↓
有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
https://book1.adouzi.eu.org/n6239hm/
現代社会を匂わせる安全で健康な(訳がない)冒険の世界を描くハイファンタジーです。




