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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第2章 ルーキーズライフ
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第086話 渚さんと説明会

『おっし、やったぜリンダ!』

『ええ。完璧ですわナギサ!』


 スパイダーの下部を抜けた強化装甲機アームドワーカーの中で渚とリンダがそう言い合い、また胴体部を破壊されたスパイダーが緑色の放電をあげながらその場で崩れ落ちていく。


『後はガードポリスを片付けて、お?』


 続けて渚がガードポリスを片付けようと周囲を見渡すと、上空でヒュンッという音がした。


『なんだ、今の?』


 それに気付いた渚が頭上を見上げると、建物の屋上で光学迷彩のマントを纏った男が自分の右腕を押さえながら立っているのが確認できた。


『あいつ、パトリオット教団!?』

『やっぱり隠れていましたのね』

『うん。ルークに控えていてもらって正解だったよ』


 ミケの言葉通りに、パトリオット教団の男を撃ったのはガレージ内で隠れていたルークだ。そして渚がガレージの中に視線を向けると新たに入手したレーザー狙撃銃と広域スキャナーを手にしたルークがさらに攻撃をしようと構えていた。

 ここまで渚たちが戦っている間、光学迷彩によって隠れている敵を探り出すためにルークはガレージ内に隠れて監視していたのだ。またルークの攻撃を受けたパトリオット教団の男だが、その身体に変化が起きているのをミケは見逃さなかった。


『渚。見てよあいつ。腕が再生している』

『なんだありゃ。クソッ、逃げるぞ!』


 パトリオット教団の男が逃げていく。それに気付いた渚が追いかけようと強化装甲機アームドワーカーを動かすが、そこにガードポリスたちが一斉に突撃してくる。もはやなりふり構わぬというその動きに渚は動きを止められ、ルークが何度か狙撃をしたのだが命中させることはできず、渚たちがガードポリスを殲滅させた頃にはパトリオット教団の男の姿はなかった。


『チッ、逃げられちまったな』

『仕方ないよ。ルークの狙撃を相手は読んで避けていた。恐らくあちらも弾道を予測する手段があるんだろう。それよりも渚、さっきの男だけど基地の生き残りの可能性があるかもしれない』


 ミケの言葉に渚が『はぁ?』と言葉を返す。


『ちょっと待て。あいつら、全滅したんじゃなかったのかよ?』


 驚く渚にミケが先ほどのパトリオット教団の男の腕が再生するシーンを渚の視覚に表示させる。それを見た渚が『エグい』と口にするが、問題は再生していることそのものにあった。


『この映像が生理的に受け付けないのは分かるけどね。けれど、あの再生能力はナノマシン制御によるものだ。再生能力の程度によっては爆発の中でも生き残った可能性があるかもしれない』

『あのー。ナギサにミケさん。何かお話をされているようですけれども、結局どういうことなんですの?』


 渚とミケの話を聞いていたリンダが声をかけると、渚が少し困った顔でミケを見た。結局のところ、軍事基地のことなどについてはミケの判断によってリンダたちにはまだ話していない状態だ。それからミケが少しだけ眼を細めてから渚に対して頷いた。


『仕方ないね。教団が接触してきたことを考えれば、ルークとリンダには話せるところまでは話してしまった方がいいか。ただリンダ、ここから先の話は僕らだけの秘密にしておいてくれよ』


 その言葉にリンダがコクコクと頷くと、ルークが合流してくるのを待ってからミケと渚はパトリオット教団との因縁について説明を伝えたのであった。




  **********




『なるほどな。ナギサは造られた人間だったということか』


 話を聞き終わったルークがそう言って難しい顔をしながら頭をかく。

 ミケと渚が説明をしたのは、渚が軍事基地内で生み出された再生体であること、そして生み出したのがパトリオット教団であるという二点だ。また基地を襲ったグリーンドラゴンについてもルークが反応し、状況の説明をしていた。


『まあ、あたしは昔に生きていた人間の再生体らしいんだよ。もっとも今のあたしには昔の記憶はないし、実感もないんだけどな』

『あの、そのナギサの記憶がないというのはどういうことですの?』


 リンダの問いにミケが『うーん』と唸って返す。


『言葉通りの意味さリンダ。渚には過去に存在していた己の記憶が思い出せない。まったくないわけでもないようだけど、ただそれが意図的なものなのか、或いは何かしらの事故によるものなのか……作られた過程までは僕も把握できていないから説明ができない。渚にもね』

『で、それを行ったのがあのパトリオット教団か。何のためにだ?』


 ルークの問いに渚が『分かんねえ』と返してため息をつく。


『それをあたしも知りたい。けど、再生体ってのは奴隷扱いされるってミケが言うし、迂闊に連中に近付くことはしなかったんだ。まあ相手がパトリオット教団だって知ったのも最近だし、まだこれから調べようってところだったんだけどな』

『奴隷って……旅団の影響の大きい埼玉圏の西部ならまだしも、アンダーシティのお膝元じゃあその辺りは厳しく取り締まるからな。狩猟者ハンターになった今なら教団も迂闊には動けないと思うぞ。けど、パトリオット教団とグリーンドラゴンねえ。厄介な組み合わせできたもんだ』


 その言葉にミケが『ルーク』と問いかける。


『先ほどもあの巨大生物、グリーンドラゴンというのをずいぶんと気にしているようだが、何かあるのかい?』

『ああ。今回のシャッフルの原因だが、ありゃあグリーンドラゴンが原因だっていうのが今のところ有力なんだ』


 その言葉に渚とリンダの目が見開かれる。


『それが故意か否かはともかく、真相が明らかになればシャッフルを起こしたのはパトリオット旅団だという結論になるだろう』

『それはそうでしょうけど……』


 リンダが動揺した顔で頷くと、ルークが渚の方を見た。


『となるとナギサはその責任問題に巻き込まれる。確実にな』

『マジか? いや、そういうことになるのか』


 驚きながら納得する渚にルークが頷く。


『ああ。お前が悪いわけじゃないのは俺も分かってはいるが……ただミケが隠してたのは結果的には正解だろう。そんなもん、嘘でも本当でも広まればロクなことにならないのは目に見えてる。ま、状況が好転するのでもなければ当分は黙っておくのがいいだろうな』


 神妙な顔をしたルークの言葉に渚は頷かざるを得なかった。


【解説】

再生能力:

 特殊部隊や要人警護向けの強化人間に施されていた能力のひとつ。チップに生体情報のバックアップを定期的に取ることで、それを元にナノマシンで肉体を再構成させることができる。

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