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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第2章 ルーキーズライフ
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第076話 渚さんと警備員

『発見、発見』

『逮捕だ』

『手を上げて出て来なさい』


 朽ちたビルとビルの間。その中へと何体もの人型ガードマシンが突撃していく。彼らは左手にライオットシールドを、右手にはレーザーガンを持って、このエリアに訪れた不審者へと攻撃を行っていた。無論、その侵入者とは渚たちのことだ。


「ちっくしょう。まだいるのかよ!?」


 瓦礫を縦に交戦している渚が眉をひそめ、次々とやってくるガードマシンたちを睨みつける。商業区画へと向かう途中のこのエリアで渚たちは彼らと遭遇し戦闘となっていた。とはいえ、入り口近くのガードマシンはすぐに片付いた。だからこちらも苦もなく倒せるだろうと渚は考えていたのだが、ガードマシンの持っているシールドが思いの外頑丈で、現在渚たちは取り囲まれつつあった。


「仕方ねえ。閃光弾使うぜ。リンダとルークは牽制を頼む」

「分かりましたわ」

「三秒抑える。いけナギサ」


 リンダとルークの言葉に渚が頷くとガードマシンたちに対して閃光弾を投げる。そしてわずかな間の後に白い光がその場を覆うと、標的を見失ったガードマシンの攻撃が止んだ。


「ミケ」

『行くよ』


 同時に渚はマシンアームを飛ばしてビルの上部の窓際を掴ませ、繋がったワイヤーを引いて一気に飛び上がった。


「リンダ。三秒」

「はい」


 そして渚が離れるのを確認したルークとリンダの射撃が行われ、ガードマシンたちも正面に向かって応戦を開始した。その間にも渚は壁を走って下を見下ろす。


『数は8。一気に潰そう』

「おうよセンスブースト!」


 三秒きっかり。ルークとリンダの射撃が止むのに合わせて渚が飛び降り、降下しながら二機のガードマシンの頭部をライフル銃で破壊する。


(おっしゃ)


 減速している空間の中、渚は落下ダメージを展開した補助腕サブアームで殺してガードマシンの背後へ降り立った。


(おっと、気付いたか。けど遅え)


 渚に気付いた人型ガードマシンが振り返ろうとしたが、渚の両腕にはすでにショットガンとライフル銃が握られていた。そして現実時間にしてわずかに二秒の間に四機のガードマシンが渚の銃弾に倒れ、最後の二機がようやく渚の方へと盾と銃口を向けたのだが、


(だから遅いんだよな)


 渚の前で二機のガードマシンの頭部が破裂した。それを実行したのはリンダとルークだ。彼らは渚へと向いて隙だらけの人型ガードマシンの後頭部を撃ったのだ。

 それから動きが止まったのを確認した渚はセンスブーストを解いて、ホッと一息ついた。


「やりましたわねナギサ」

「おう。リンダもルークもバッチリだったな」


 渚の言葉に二人が頷く。この三人プラス一匹のチームも随分とうまく機能するようになっていると三人ともが実感をしていたのである。


「しかし、お前のマシンアームはこういう場所の方が得意みたいだな。その補助腕サブアームは機動戦に特化しているようだ」

「かもな。それにしても人型のガードマシンか。盾が厄介だったな」

「グレネードランチャーなら盾ごと潰せるんだがな。さすがにこいつら相手にそこまでコストはかけられない。ま、こういう盾持ちは罠を張ったり、捕縛弾で動きを止めて対処するんだが」


 ルークがそう言って、人型ガードマシンを見た。


「罠か。小手先使うのはあんま得意じゃねえや」

「俺も苦手だ」


 ルークが肩をすくめた。なおリンダも同意の頷きを返していた。


「で、こいつらもアイテール持ちじゃあないんだな」

「ああ、今も稼働しているアンダーシティの電力で動いているからな」

「そこらに転がってるレーザーガンも彼らでなくては扱えませんし、回収できるパーツもあまり美味しくはないんですわよね」


 リンダがそう言いながらアイテールナイフを取り出すと、ガードマシンの装甲を外して内部の回路を物色し始めた。リンダが取り出そうとしているのはアンダーシティ指定の回収リストに入っている換金用パーツであり、指定されていないパーツは珍しくとも金にならぬのでガラクタ扱いである。


「けどさ。ガードマシンってなんで湧くんだ? 別に無限に物資があるわけじゃあないんだろうし」


 リンダに続いて渚もパーツの回収をしながら、疑問に思ったことを口にする。それに対してルークが「アイテールだ」と返した。


「機械獣もだが、こいつらはアイテールによって大部分が複製されている。まあこういうガラクタになった機体も回収して再利用してるらしいんだけどな」

『なるほどね。一から製造されているわけじゃあないわけだ』


 端末から興味深そうなミケの声が響いていた。


「アイテールからって……ミケ、そんなことできんのか?」

『できるも何も、君だってこのファングでエーヨーチャージを造ってたじゃないか。それにタンクバスターモード後は焼き切れた内部を作り直しているしね』

「え? あれってそういうことなのか?」

『うん。アイテールを用いて新規に部品を生成しているんだ。まあ、コストパフォーマンスから考えれば普通に生産ラインに乗せて造って組み上げた方がいいんだけどね。この時代はそうした生産能力自体が失われているようだけど』

「けどさ。アイテールはどうしてんだ? ここにもまだ貯蔵されてるってことか?」


 眉をひそめた渚に、ルークが首を横に振る。


「採掘して手に入れてるんだ。アンダーシティの地下にはアイテールの鉱脈があるから、それを掘り出してエネルギーにしている。もっとも生産量はあまり安定していないから、生きてるアンダーシティは狩猟者ハンターたちからアイテールを購入しているんだけどな」

「はぁ。採掘ねえ?」


 渚が地面を見た。ミケも考え込む顔をしていたが、何も口にはしない。


「ともかくパーツを回収したら先に行くぞ。このエリアを抜ければ商業区画だ」


 それから渚たちは回収を終えるとこの場を離れ、さらには開けた入り口から地下へと入っていく。その道中にも二機ほど人型ガードマシンと接触したが危なげなく対処し、ほどなくして彼らはショッピングモールへと辿り着いた。




  **********




「なんというか、物悲しいというか」

『何も動いていないんだね。当然のことではあるんだけど』


 渚たちが到着したのは埃と砂がたまり、朽ち果てたショッピングモールだ。その場が『終わった場所』だというのが渚にもはっきりと理解できた。もっとも横にいるリンダにしてみれば、別の感想になるようである。


「懐かしいですわね」

「懐かしい?」


 首を傾げる渚にリンダが頷く。


「ええ。とはいっても1年前のことですけど。クキのアンダーシティでも同じような場所がありまして、月に一度はお買い物にいってましたのよ」


 どうやら今も生きているアンダーシティにも同じような場所はあるようだった。それに渚は少しばかり安堵した顔をして笑う。


「ああ、そっか。そりゃあそうだよな。生きてる都市になら残ってるか」

「それはもう。興味があるのであれば、行ってみますか?」


 そのリンダの言葉に「マジで?」と渚が返す。アンダーシティへは市民IDがなければ入れないと聞いていた渚にとって、リンダの提案の意味が分からなかった。


「はい。お兄様にゲストパスを手配してもらえれば、いろいろと制限はありますが一泊程度なら入ることはできますわ。戻ってすぐにというのは無理ですが、元々里帰りの際にナギサを招待するつもりでしたし」

「おい、お前ら。話してないで付いて来い」


 ふたりがそんな話をしていると、前を進んでいたルークから声がかかる。


「はいですわ」

「おうよ。けど、ルーク。そっちは店の外だぜ? 店ん中を見て回るんじゃないのか?」


 渚の言葉にルークが肩をすくめる。


「いくら探索がほとんどされてないからって、あんな目立つ場所に置かれた目ぼしいものなんてもうほとんど回収されてるさ。俺らが向かうのは倉庫だ。ほら、この中だ」


 そう言ってルークがスタッフオンリーと書かれたドアを指差した。どうやら渚たちはようやく目的地に辿り着いたようである。


【解説】

人型ガードマシン:

 かつては街の警備員さんで親しまれた彼らも狩猟者ハンターにとっては強力なエネミーである。

 装備しているライオットシールドは電磁流体装甲で対装甲弾でも貫通せず、また盾も銃もID認証により彼ら以外には使用できないものとなっている。

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