第060話 渚さんとロボット構想
「いやぁ、仕上がりが楽しみだなあ」
「おい、まさか全部使ったのか。あれを全部? いや、そりゃナギサの狩猟者初仕事だったし、今後の準備のために好きに使ってくれとは言ったが……」
ライアン局長との話も終えてリンダの家に来たルークが知ったのは、今回のパーツやアイテールのほとんどがビークルの改造費用になってしまったという事実であった。そして、それを行った人物はたいそう満足そうな顔をして頷いた。
「おうよ。あたしらはチームだからな。仲間を護るために全力を尽くしたぜ。なっ!」
グッと親指を立ててドヤ顔の渚は満足げであった。
「まあ、一応全部ではありませんけれど。それにルーク、今回の依頼報酬はまた別でしょう?」
リンダの言葉にルークも「まあな」と返す。
渚たちが改造の費用として使ったのはテクノゲーターたちから回収したものを売って得たお金であった。一方で今回のテクノゲーターの巣の探索についての報酬はまだ未払いなのである。
「巣の掃討までおこなったから報酬は上乗せされる予定だが、今その計算をあっちでしてるところだから支払いはソレ待ちだ。そっちは、ちゃんと……ちゃんと分配する」
そう言ってルークはため息をつき、それから周囲を見回した。
リンダの家のリビングにいるのはルーク以外では今は渚とリンダだけだ。
バトロイドであるセバスは外で待機しており、ミケは必要があればテーブルに置かれたタブレット端末から声をかけてくるはずであり、またミランダの姿はここにはなかった。
「ミランダの姿がないけれども、あいつはデウスのところか?」
「ええ、そうですわ。ミランダならデウスさんのところにビークルと共にいっていますわ。夜通しで改造するそうなので明日には戻ってきますわよ」
「そうか。まあ機械人だから寝る必要もないしな」
そのルークの返しを聞いた渚が首を傾げる。
「デウスは寝ない? それって機械だからってことか?」
「そうだ。基本的に機械人は俺らと同じような睡眠は取らない。定期的なメンテと、あとは必要がないときは省電力モードになることで休みを入れているらしい。要は休息の取り方が違うだけってことなんだが」
「なるほど。あれ、そうなるとAIであるミケはどうなんだ?」
その渚の問いに、端末からの『んー』という声が聞こえてきて、画面に猫の顔が映った。
『一応僕には睡眠を取る習慣はあるよ。とはいえ、僕は猫のシミュレーションをしているだけだから、本当に寝ているわけではないけど。それにそういうときでも一定の演算処理を確保しているし、必要なとき以外は使っていない部分は眠っているといっていいかな』
ミケの言葉に渚が「へぇ」と口にした。なお、意味はあまり分かっていない。
「それぞれに休息の取り方があるということですわね。それでルーク。あなたは所長と会ってきたのでしょう? あの方、何か言っていました?」
「そうだなあ。巣を潰したのにはさすがに呆れてたが、まあよくやったって言ってたぞ。あと、オスカーにはキツイお灸を据えてもらうようにも話しておいた。今回は色々とやり過ぎたからな」
「オスカーか。あいつ、いきなり死にかけてたからな」
「アレには焦りましたわ」
渚とリンダ、それにミケがしみじみ頷く。
戦闘終了後、オスカーはしばらくして急にブッ倒れていた。
原因は、テクノゲーターに襲われたときの傷と、サイバネスト化の処置やマシンレッグとの接続の負荷もすべて薬で抑えて戦っていたためであった。
「プツンと切れた感じで落ちたからな。ミランダだけじゃあ足りなかったってのはよっぽどだよなぁ」
その言葉にはルークも頷く。
タンクバスターモードを発動したために修復モードに入った渚のファングが復活するまで気の抜けない状況が続いたのだ。結局夜通し治療は続けられ、オスカーの症状が安定するまでミランダに任せて渚たちは少し寝て、それからクキシティに向かって移動したのであった。
「ま、だからこそ、安全を考慮してのビークルの改造さ。ルークも見てみりゃ、これはって思うはずだぜ」
「へぇ。面白そうだな」
渚の言葉にルークが興味を惹かれたような顔をすると渚がふふふーんとドヤ顔になった。
「装甲をランドゲーターのものに替えるだけじゃなくてさ。補助腕を二本付けて内部にいるミランダでも外に銃を撃てるようにしたんだよ。それにあたしだって中にいるときは操作できるんだぜ。左右のアーマードベアアンサーの腕もな。あとは足と頭付けたらロボットになるってわけだ!」
その言葉にはミケが『足は効率的ではないけどねぇ』と口にする。
『というよりも、アーマードベアアンサーの腕を足代わりにして、補助腕を腕と見立てれば、二足歩行のロボットと呼べるんじゃないかな?』
「あ、マジだ。すげえ」
喜ぶ渚に、ルークは話の内容からの改造されたビークルの姿を頭に思い浮かべつつ口を開く。
「強化装甲機もどきか……あとは頭を付ければ様にはなるのか? んー、センサーヘッドなら持っているが……そうだな。頭付けてみるかナギサ?」
「え、マジで?」
「ああ、面白そうだしな。明日に頭を持ってデウスのところに行ってみるわ」
どうやらルークも乗り気のようだった。
それにリンダが呆れた顔をするが、それから思い出したように再びルークに口を開く。
「あのルーク。それで局長の話に戻しますけど、お仕事の依頼とかは今はないのですわよね?」
「ないぞ。ダンたちも近辺のスケイルドッグの巣の掃討には成功したらしいからな。あとは各地と連絡を取って状況を見てからの対応になるだろうし、今日明日に仕事が来るってことはないはずだ」
その言葉を聞いてリンダがニッと笑うと渚を見た。
「でしたら、ナギサ。明日はVRシアターに行きましょう」
「ぶいあーるしあたー? そういえば依頼を受ける前にそんなことを言ってたっけ。なんなんだよ、それ?」
首を傾げる渚にリンダとルークが意味ありげに笑う。
「そうだな。知らないのなら驚くぞ」
「ええ、楽しみですわ。うふふふふふ」
そのふたりの反応に渚はますます首を傾げたが、どうやら明日の予定はVRシアターに向かうことになるようであった。
【解説】
強化装甲機:
ワーカーは2メートルから5メートルほどの人型重機であり、強化装甲機とはそれに装甲と武装を付けて戦闘を行うように改造したものである。




