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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第1章 狩猟者(ハンター)への道
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第038話 渚さんとスーパーチョップ

 埼玉圏のアゲオ村とクキシティの間にある地。そこでは狩猟者ハンターたちとアーマードベアたちの戦闘が今もまだ続いていたが、状況は狩猟者ハンターたちに決して良いものではなかった。確かにダン率いる狩猟者ハンター部隊は銃撃による牽制で機械獣の接近を防ぎ続けてはいた。しかし装甲の厚いアーマードベアに対しての決定打に乏しく、彼らは徐々に距離を詰めつつあった。


『仕留めた数、二十を超えたか?』

『超えたな。しかし、数はまだ四十はおるな』


 眼爺の言葉にダンが舌打ちする。

 後退するにも手持ちの弾薬の数はもはやギリギリで、それは他の仲間たちも同じ状況だ。つまり戦闘継続はもう間もなく不可能となる。そして、渚とリンダはまだ戻ってこない。


『もうチョイか。お嬢たちはまだ来ない。止むを得んか』


 このままでは全滅の可能性もある。ダンが作戦を切り上げるか否かを考え始めたが、その横にいる眼爺が『やったようじゃな』と口にする。その意味するところはひとつ。それに眼爺がそれを察したということは……と、状況を把握したダンが崖の上を見た。


『遅いぞリンダ!』


 ダンが笑みを浮かべ、それから崖の上から飛び降りて近付いてくる相手に声を上げた。


『これでも急いで来たんですわよ!』


 近付いてきたのは抗議の声を上げるリンダだ。その返ってきた声が明るいものであることに気付きながら、ダンが『それで首尾は?』と尋ねるとグッと持ち上げられた親指が返ってきた。


『マッシュさんとダニエルさんは無事ですわ。お腹が空いたとか愚痴ってますけど、ひとまず離れたところに置いてきています』

『はは、後でエーヨーチャージでも詰め込んでやれ。そんでナギサがいねえってことは?』

『すでに所定の配置に向かっております』


 その返答にダンが『よっしゃ』と声を上げ、背負っていたバズーカを取り出して手に取った。ずっしりと重いそうなソレは彼らが扱っている銃器とは別の系統のフォルムをしていた。


『じゃあ、仕上げと行くか。こいつは、取っておきなんだがな』

『ダンよ、だから今使うんじゃろうが』

『虎の子が合図代わりに使われるのが、ちとな。まあ、やるさ』


 そう言ってダンがバズーカを構え、アーマードベアの群れへと砲身を向ける。

 それはスコーピオンバズーカと呼ばれる、タンクスコーピオンという機械獣の尾を加工して造られた高火力兵器だ。通常の銃器類とは違い、弾頭も含めてタンクスコーピオンからしか回収できぬ、まさしくダンの取っておきであった。


『じゃあ、ぶっ飛ばすぞ!』


 その声と共にダンがトリガーを弾き、放たれた特殊弾頭が飛び出て機械獣の群れに直撃すると、その場で巨大な爆発が発生してアーマードベアたちを吹き飛ばしていく。もっとも、それでアーマードベアたちを全滅させられるというわけではない。活動不能になったのは精々が五体。だが、彼らの動きを一時的に止めるには十分な威力だ。


『合図だ。隊長の取っておきが出たぞ!』

『さっさとズラかれ!』

『後はあのミニドクロゴリラに任せやがれ!』


 狩猟者ハンターたちが一斉に背を向けて、走り出す。

 それが作戦の最終段階の合図であることは全員に事前に伝えられていた。そして、他の狩猟者ハンターたちと同じように背を向けて走り出したリンダが、向かう先にある崖の上へと視線を向けた。

 瘴気の霧に阻まれてリンダからは見えないが、そこに彼女の相棒がいるはずなのだ。


『じゃあ、頼みましたわよナギサ!』


 リンダがそう口にしながら駆けていく。すべての準備は整った。後は最後の仕上げのみ。それを行うのは当然……




  **********

 


 

『来たよ渚』

『だな。ああ、眼爺をリンダが担いで走ってるや』


 リンダたちが駆け出した先にある崖の上では、渚がマシンアームを地面に向けながら待ち構えていた。瘴気の霧に阻まれて肉眼では見えなくとも、チップの計算能力でフィルタリングされて鮮明化された映像を渚は確認できる。ダンの一撃で狩猟者ハンターが一斉に後退したのも分かっている。それをアーマードベアたちが追うが、そこは事前にトラップが山のように仕掛けられてある場所だ。配置を把握している狩猟者ハンターたちとは違い、アーマードベアたちが早々に追いつけるものではない。


『それにあのデカブツも来たか。あれだけ逃したらマズイところだったぜ』


 渚が目を細めて、そう口にする。アーマードベアの群れの中には先ほど渚が対峙したアーマードベアアンサーも混じっていた。渚にやられてボロボロではあるが、それでもあの巨体と装甲は脅威だ。


『そうだね。うん、解析も完了。アーマードベアたちが指定ラインに到着した時に、計算通りに斬ってくれればすべて『上手くいく』』


 ミケの断言に『了解』と渚が言うと、右手のマシンアームを天にかざした。ここに至り、すべてのお膳立ては完了した。後は達成するのみ。すべては渚とマシンアーム『ファング』にかかっている。


狩猟者ハンターたちは指定ポイントを越えた。これで彼らに被害が出る可能性はなくなった』

『うっし。そんじゃあ、行くぜ!』


 その声と共に渚のマシンアームが緑色に輝き、タンクバスターモードを発動させる。暴走ギリギリまでアイテール変換を行い、拳にアイテールライトを物質化させた緑色に輝く装甲を重ねて拳を肥大化させていく。それはメテオライオスのときよりも大きく、巨大なゲンコツとなっていった。


『おお、ガイドライン出てるな』

『そうだよ渚。君はそこをなぞればいいだけさ。アーマードベアたちももうすぐ到達する』


 ミケの言葉に頷いた渚がゲンコツを手刀の形へと変え、一気に振り被った。狙いは足下に引かれたガイドライン。


『先頭のアーマードベアが想定ラインに到達した。今だ渚!』

『イッケェエエエエエエ!!』


 次の瞬間に渚のマシンアームが凄まじい速度で振り下ろされ、巨大なチョップが崖を斬り裂いていく。


『ブっ千切れファングッ』


 振り下ろすと同時に伸びたアイテールライトは岩壁を見事なまでにスライスしていき、それは重力の力によって落下していく。そして砕けた岩石は雨のように真下へと降り注ぎ、アーマードベアの群れを破壊していく。凄まじい轟音が発生し、土煙が舞い上がり、白き霧すらも吹き飛ばした。それは狩猟者ハンターたちからも確認できるほどに、完璧にアーマードベアをすべて巻き込んでいった。であれば、戦いは終わったのかと……


『いいや、まだだ』


 しかし、その中でミケはまだ終わっていないと渚に警告を発する。

 同時に土煙の中から咆哮が発せられ、一体の巨大な熊の機械が土煙の中から飛び出してきた。それは他のアーマードベアよりも巨大で、だが全身はボロボロで、もはや気迫だけで動いているようであった。


『自分を潰していた岩石をエアウォールで吹き飛ばしたか。よほど頑丈らしいね、アレって』


 その様子に渚が『ま、問題ねえさ』と口にする。

 取りこぼしは想定内。当然、渚以外の仲間たちも油断などしていない。そして、ミケ同様に敵の生存を把握していた眼爺の合図によって狩猟者ハンターたちが一斉にアーマードベアアンサーへと攻撃を始め、渚も岩場の上からライフル銃を構えた。


『ま、ひとりじゃないってのはいいもんさ。なあミケ?』


 そう言いながら渚が撃った弾丸は、狩猟者ハンターの誰かの攻撃で装甲板がめくれて見えていたコアを貫通し、ついにアーマードベアアンサーもその場に崩れ落ちたのであった。

【解説】

タンクバスターモード・スーパーチョップ:

 面のマックスパンチに対して線のスーパーチョップ。タンクバスターモードは手の動きに合わせて様々な応用が利くが、マックスパンチとスーパーチョップは渚が決めた名称である。

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