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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第1章 狩猟者(ハンター)への道
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第036話 渚さんと脱出レース

『GuOOOOOOOOOONN!』


 叫び声が天遺物の中を響き渡る。三体の巨大な機械の怪物が通路を突き進んでいく。それはアーマードベアアンサーと、それに付き従うアーマードベアたちだ。

 すでに外では戦闘が始まっていて、当然アーマードベアアンサーもそれに気付いてはいた。

 だから、外に出る前の念のための確認にと、内部への連絡を行ったのだが返事が返ってこなかったのだ。

 今もまた再確認の合図を行ったのだが返ってきていない。

 先ほど直接会ったときにはスピーカーが故障していた様子はなく、であれば不測の事態が発生したのだとアーマードベアアンサーは判断した。だから、急ぎ仲間の反応が消えた倉庫へと駆けていく。


『GuOOOON!?』


 そして、アーマードベアアンサーが角を曲がり、倉庫に到達しようとした直後である。カメラの映像が白く焼きつき、センサーも判定不可能となったのだ。それはわずかな時間でのこと。けれども、それを起こした者たちにとっては十分な時間でのこと。

 アーマードベアアンサーは自身のセンサーが回復してすぐに真横を駆け抜ける何かを感知したのだが、振り抜いた右腕は空振りであった。そして、何かは通路を

一気に駆けて行く。それは渚とリンダ、ふたりに抱えられているマッシュとダニエルであった。



『あっぶねええ!?』


 渚がそう口にしながらマッシュを後ろに乗せたバイクを加速させて通路を走行していく。ほんのわずかだが、アーマードベアアンサーの一撃は渚の頭部を掠めていた。本当にギリギリであったのだ。


『やりましたわねナギサ!』


 一方でダニエルを担いだリンダが喜びの声を上げ、ダニエルとマッシュもホッと一息ついた顔をしている。ともあれ彼らがアーマードベアアンサーとの接触をかわせたことは確かであった。渚たちはアーマードベアたちが近付いたのと同時に閃光弾を使って視界を潰し、その場を通り抜けたのだ。


『GuOOON!』


 背後からアーマードベアたちの咆哮が聞こえるが、ふたりは振り返らずに出口へと向かって通路を駆けていく。けれどもこのまま逃げ切れるほど、状況は甘くない。


『このまま、一気に抜けるぜ!』

『いいえ、そう簡単にはいきませんわよナギサ』


 リンダがそう口にしたのとほぼ同時に、彼女らが抜けてきた通路の奥から爆音が響き渡り、そして緑の炎が見えたのだ。その光景に渚の目が丸くなる。


『おいおいおいおい。なんだ、ありゃ?』

『ドクロの嬢ちゃん。アーマードベアアンサーってのはブースト持ちの機械獣なんだよ。クソッタレ、メチャ速ぇえ!?』


 バイクの後ろに乗っているマッシュが悲鳴のような声を上げた。

 一緒に来ていたアーマードベアの姿は見えぬが、アーマードベアアンサーが背から緑炎を噴き上げて恐ろしい速度で近付いてくるのは分かった。


『だったら動きを止めれば!』


 すかさずリンダが二連グレネードランチャーを撃った。射出されたのは捕縛弾だったが、それが命中する前に、


『BAU!』


 アーマードベアアンサーが放った咆哮によって拡散した捕縛弾の糸が弾かれた。


『嘘でしょ。声で弾いたんですの?』

『エアウォールだ。あれには捕縛弾が効かねえんだよなぁ』


 驚くリンダに、リンダが担いでいるダニエルがそう説明する。

 残念ながら実戦経験の少ないリンダはエアウォールの能力までは正確に把握していなかった。その結果にリンダが苦い顔をするが、アーマードベアアンサーの移動速度は変わらない。


『マズイな。こりゃ。出口まで間に合わねえ』

『いや、なんとかなるかも』


 渚の呟きにミケがそう返す。それに『何?』と渚が声を上げたが、ミケは返事をせずにルートガイドを出して『渚。その角を曲がって』と指示を出した。


『分かった。リンダ、曲がんぞ!』

『え、ええ? 分かりましたわ。でも』


 リンダが背後を見る。

 すでにアーマードベアアンサーは目と鼻の先。


『足止めぐらいにはなんだろ!』


 対して渚がライフル銃を構え、そして銃口下部に設置してあるグレネードランチャーを撃った。


『BAU! GuO!?』


 再び咆哮が響き渡ってエアウォールが繰り出されるも、弾かれる前に対装甲弾頭は空中で破裂してアーマードベアアンサーを巻き込んだ。


『接触直前に爆発するようにプログラムした弾頭だ。上手くいったようだね』

『おっしゃ、でかしたぞミケ! あいつは、これでっ、止まれってんだよ』


 そう叫びながら渚と、それに続くリンダは速度を緩めて丁字路の通路を曲がった。アーマードベアアンサーも先ほどの攻撃ではさすがに動きが鈍ったようで追い付けない。そのことに安堵しながら渚がミケに尋ねた。


『で、こっからどうすんだミケ?』

『移動中に室内の構造を解析していたんだ。その先に少し開けた場所があるはずだ』


 そのミケの言葉と共に通路を抜けた渚たちが辿り着いたのは、天遺物の中庭のような場所であった。そして、渚が頭上を見上げて『吹き抜けか?』と口にする。

 どうやらこの天遺物は筒のような構造だったらしく、頭上には外へと抜け出す穴があったのだ。


『君のバイクとリンダのマシンレッグなら登れるはずだ。このまま上まで登って外に出れば他のアーマードベアは追ってこられないだろう。けれど』


 ミケの言葉の途中で渚たちの背後から咆哮が響き、そして巨大な機械獣が突撃してくる。


『そいつはどうにかしないとどこまでも追ってきそうだよ渚!』

『だろうなっ。えっとマッシュだったっけか? バイクは任せた!』

『え、おい!?』


 マッシュが動揺した声を返すが、渚は構わずバイクから飛び降りてアーマードベアアンサーへと向かっていく。


『うおぉおおっりゃぁああああ!』


 そして渚がマシンアームのブースターを噴かして拳を振り下ろし、アーマードベアアンサーの振るった右腕と激突する。


『ナギサ、無茶ですわ!?』


 それを見てリンダが驚きの声を上げるが、マシンアームの出力はアーマードベアアンサーにも負けてはいない。


『一撃程度なら、ぉおおおおっ!』


 両者のブースターの出力が上がり、そして次の瞬間に反発する磁石のようにどちらもその場で弾かれて、宙を舞う。


『おっとぉ!?』

『まったく、無茶をするね渚』


 吹き飛んだ渚だったが、ミケの操作する補助腕サブアームのクッションにより壁への激突を免れた。


『アッブネエ。サンキューミケ。で、ヤツは?』


 対してアーマードベアアンサーの方は壁に激突して、その場にうずくまっている。


『衝撃の損傷確認かな?』

『余裕あんな』


 ミケの言葉にそう返しながら渚は床に着地した。それからライフル銃を手にとって構えると、リンダもダニエルを壁のそばに置いて自分もグレネードランチャーを手にとって、アーマードベアアンサーに対して向けた。


『リンダ。こいつはここで仕留める!』

『一体だけなら……承知ですわナギサ』


 そして、渚とリンダとアーマードベアアンサーが同時に動き出し、戦闘が始まった。

【解説】

エアウォール:

 咆哮と共に空気の壁を正面に発生させて攻撃を防ぐ技術で、機械獣だけではなく内蔵されたマシンアームなども存在している。

 実際には円錐状に、ドリルのように空気の壁ができるため、壁を造って防ぐよりも逸らすことに特化されたものである

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