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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
終章 終末の世界で謳う猫
303/321

第303話 渚さんと反省会

『これでひとまずは片付いたという認識でよろしいのかしらクロ?』

『外からグリンワームの増援が来たという報告もありませんし大丈夫でしょう。市中に潜伏してアイテールをかすめ取ろうという個体もいるかもしれませんが』

『それはこれから時間をかけて潰していくしかないでしょうが、お嬢様の手を煩わせるものではございませんな』


 クキシティ一番区でのグリンワーム討伐を終えたリンダとクロ、それにバトロイドのセバスはそんな言葉を交わし合いながらクキシティ内を歩いていた。

 リンダと渚がビッグワーム三体撃破と一体を退却させたことで戦力不足となったグリンワームはアンダーシティへの侵入を諦めて市外に後退しながらアイテールを確保する方向に動き、夜に入る前には市内での戦いは一応の決着がついた。そして目に見えた限りのグリンワームの駆逐は完了したリンダは後始末を残った狩猟者ハンターたちに任せて、渚たちと合流すべく狩猟者ハンター管理局へと向かっていたのである。


『人型に変わったことといい、グリンワームの応用力は相当に大きいようです。アレらが隠れているとなると見つけるのは難しいでしょう』

『確かにそうですわね。厄介な相手ですわ』


 そんな言葉を返しながらリンダが周囲を見渡す。クキシティ中からいくつもの黒煙があがっているし、見える限りの建物のいくつかも崩れている。


(復旧をするにしても奪われたアイテールの量は多いですし、その多くは個人資産のもの。こうなると街のヒエラルキーが崩れるのは必至ですわね。それに再びグリンワームの襲撃が来たら耐えられるかどうか)


 復旧のための資源のみならず、エーヨーチャージなどといった食料品の多くもアイテール変換に頼っている現状を考えれば、今回の襲撃は人類の敗北と言ってもいいものであった。その上に再度のグリンワーム襲撃の可能性も考えれば、今後の状況は決して明るいものではない。


(このまま放置すれば被害は拡大していくばかり。その前に大元を叩くしかないのでしょうが……ん?)


『クッソ。あのミミズ野郎!』

『落ち着けよナギサ。お前はよくやったって』


 リンダが狩猟者ハンター管理局の敷地内へと入ると中庭に狩猟者ハンターたちが集まっているのが確認できた。その中心には渚がいて、その様子はいつもに比べてどうにも荒々しいようだった。


『あそこにいるのはナギサですね。若干興奮状態のようですが』

『本当ですわね。珍しい』


 リンダの知る渚は年相応の反応こそ見せるものの、周囲の状況如何に関わらず常に落ち着き払っているという印象があった。それはマシンアームから得た戦闘技術に情緒をコントロールする技術があったこととミケという相談相手がいるためではあったが、ともあれリンダの知る渚の印象からすればそれは少々いつもとは様子が違っていた。


『おっと、ナギサ。リンダが来たぜ』

『よぉリンダ。そっちは大活躍だったみたいだな』


 渚のそばにいたルークとオスカーがそう言ってリンダに手を振る。


『オスカー、それはそちらも同じじゃないですか。合流後はひと暴れしたと聞いていますが、あの……何かありましたの?』


 その何かについてリンダは渚がビッグワームを取り逃がしたことなのではないかと当たりをつけていた。ビッグワームは確かに強敵だが、それは一般的な狩猟者ハンターにとっての話であって渚が倒せない相手ではないはずなのだ。だから

その状況にはリンダの知らぬイレギュラーが起きていたのではないかと考えていた。

 そしてリンダの問いに渚が少しばかりうつむいたまま、ゆっくりと口を開いた。


『あいつらさ。人質を取ってきたんだよ』

『人質……ですの?』


 リンダが眉をひそめる。そんな野盗バンディットじゃあるまいし……と思ったリンダの前で、その場にいた狩猟者ハンターたちも苦い表情をして頷いて渚の言葉を肯定した。それから渚の肩に乗っているミケが口を開いた。


『戦闘中に狩猟者ハンター同士が庇いあったのを見てソレが有効だと判断したのかもしれないね。実際にグリンワームが狩猟者ハンターを拘束してライフル銃を突きつけてきたんだよ』

『銃を? そっちでも人型が出たんですの?』


 人型のグリンワームについてはすでに報告済みであるため狩猟者ハンターたちもその情報は共有していたが、現時点でその姿は一番区でしか確認できていなかった。それが渚たちの前にも現れたのかとリンダは考えたが、ミケは首を横に振る。


『いいや。人型に変形した個体はいなかったよ。あの細い体の先を直接変形させて掴んでね。あれはAIの僕から見てもシュールな光景だったよ』

『あいつらが機械獣と同じと考えていて油断してた。箱庭の世界ミニチュアガーデンの未来予測で気づいた時には間に合わなかった。おかげであのでっかいのを逃しちまったよ。ハァ』


 渚が大きく溜息を吐く。

 周囲の情報を習得して擬似的に未来観測を行う箱庭の世界ミニチュアガーデンの予測も絶対的なものではない。疑わしき要素が観測できた時点で修正は入るし、距離があって対処する手段がなければ当然防ぐことはできない。


『そうは言ってもな。お前が人質救出を優先したから捕まった狩猟者ハンターは全員無事だったんだぞ。だから気に病む必要はないさ』

『わーってるってのルーク。まあ、とりあえず勝ったんだ。今はそれで良しとするしかないよな。うん』


 渚の返しにルークが頷くとそれからリンダへと視線を向けた。


『それとだリンダ』

『なんですの?』

『クキアンダーシティから迎えが来てる。疲れてるところ申し訳ないが、今からみんなで地下都市に潜ることになる。今後の予定も話し合わないといけないからな』

【解説】

クキシティの現状:

 銀行などで一括管理していたアイテールの被害も大きいが、個人で保有していたアイテールも相当量奪われており、今後のクキシティの建て直しは相当な困難が予想されている。また他都市でも同様の状況が想定されており、埼玉圏全土が危機的状況に陥っている可能性は高い。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] だから その状況にはリンダの知らぬイレギュラーが起きていたのではないかと考えていた。→改行ミス。 [一言] いくらスタンドアローンだからって、本体との進化の方向性が違い過ぎませんかねぇ…
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