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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第7章 地獄輪廻界『群馬』
274/321

第274話 渚さんと巨樹のウロ

『ここだ。この巨木のウロの中、そこに地下通路に繫がる穴があるはずだ』


 渚たちが案内された先、そこはワタラセ渓谷内にある、グンマエンパイアと呼ばれている施設より1キロほど離れた地点にある巨樹の森の中だった。そして周囲の木々の中でもひときわ巨大な巨木のウロの中を、マーシャルがバイザーに表示されたマップと照らし合わせながら指を差した。


『なるほど。隠してあるけど……確かに地下通路があるな。木の根に持ち上げられて隆起したせいで地上近くまで上がってきたみたいだ』


 渚が目を細めてそう口にする。ウロの中から地下通路までは意図的に隠されていて一見しただけでは分からないようになっているが、渚の猫耳レーダーはすでに周辺情報の収集を終えている。なので今の渚は地下通路までのルートを正確に掴んでおり、またその情報は箱庭の世界ミニチュアガーデンによってこの場の全員に共有化され、他のメンバーのバイザーにも表示されていた。


『これが機械種の生体強化によって得られた力か。凄いな』


 マーシャルが素直に感嘆の声をあげる。リンダたちは流石に慣れてはいたが、他のペンタゴンのメンバーたちも驚きの様子であった。


『しかし、よくこんなところ見つけたな。言われりゃ分かるけど、普通は気づかねえだろ』

『元々教団はここの監視を目的としていたからな。150年前の巡回中に偶然発見したそうだ』

『ずいぶん昔の話だな。その間にグンマエンパイアをどうにかしようってことにはならなかったのかよ?』

『そうだな。教団とて一枚岩ではないし、機械種のコアの出力と機械獣によって半永久的にエネルギーが供給されている施設は魅力的ではある。だから当然手に入れようと提案されることもあったようだが実行されることはなかった』

『なぜだ?』


 眉をひそめたダンの問いにマーシャルが『過去の経験のせいだ』と返す。


『お前たち埼玉圏の狩猟者ハンターたちがグンマエンパイアに幾度となく挑んだように、こちらでも仕掛けたことはある。だがすべて失敗に終わった』


 その返事にダンが苦い顔をする。マーシャルの言うようにデキソコナイの発生源を止めるために狩猟者ハンターたちは何度となくグンマエンパイアに挑んだ。そして一度たりとて成功したことはなかった。


『それに勝手に増える埼玉圏とは違い、パトリオット教団は地下都市同様に人口を計画的に調整している。戦える人員の確保にも十年単位の年月が必要となる。数度壊滅する被害にあえば諦めざるを得ない。元より教団の目的は監視なのだからな』

『けど、今回アンタらはまた挑むことを決めたわけだ。なんでだ?』

『必要があれば動かざるを得ない……ということだ。ダーパが消え、我々は現状維持をするのが精々。今のままではいずれは衰退し、パトリオット教団は消滅するだろう』

『だから行動すると? 現状維持でも生きてはいけるだろうに』


 ワシントンSDCを見れば、それが埼玉圏の地上と比べてずいぶんと恵まれた環境であるようにダンには思えていた。けれどもマーシャルは首を横に振る。


『我々はアメリカの復活を掲げ、それを希望に生きている。それを為すにはダーパが必要で、そして賢人ワイズマンがいればダーパを復活させることも可能だ。それは譲れぬことだ』

賢人ワイズマンね。まだ彼に頼るつもりかい?』


 ミケがわずかに眉をひそめてマーシャルに尋ねた。


『あの方は我々の父だ。子供が父に教えを乞うのは正しいことだろう?』


 マーシャルはそれが当然であるという顔をして言葉を返すとミケは目を細めて『そうかい』とだけ返した。その様子にミケの中で何かが引っかかったのだろうと渚は察したが、その疑問を口にするよりも早くミケが話を続けた。


『それでマーシャル。ここから先は当初の予定通りに行動する……ということでいいのかな?』

『ああ、ここでのんきに話をしている場合ではないな。これまでのそちらの様子を見ても、特に変更するべきところは見受けられない。予定通りにチームを分けて行動しよう』


 マーシャルがそう言うと、渚たちはあらかじめ決めていたチームに分かれていく。

 その内訳は渚、リンダ、マーシャルをチームアルファ、ペンタゴンの部隊を三人編成でチームブラボー、チームチャーリー、チームデルタとしてグンマエンパイアに潜入し、ルーク、ダン、オスカー、ミランダと残りのペンタゴン組がチームエコーとして入り口の確保するために待機するというものであった。

 その分担にはオスカーが『俺ら地味じゃね?』とボヤいていたが、基本的に狩猟者ハンターは機械獣との戦闘が専門であって敵地へ潜入する能力に優れているわけではない。

 対してペンタゴンのメンバーは潜入訓練を受けており、それに付いていけるのは機械種による強化で隠密行動能力も優れている渚と、渚がフォローに回れるリンダのみであった。なお、ミケはもちろん渚とセットである。

 そして渚たちがウロの中に隠された穴へと入り、すでに動かなくなった通路へと降りていく。その先は灯りひとつない暗闇だが、渚の箱庭の世界ミニチュアガーデンによって周辺状況はバイザーにはっきりと映し出されていた。


『エネルギーの流れはない。やはりこの通路自体、ずっと稼動してはいないようだね』

『この先は崩落していたと記録に残っている。恐らく崩落によって通路自体が機能しなくなったことで、基地本体から廃棄されたんだろう』

『崩落って……じゃあこの先に行っても無駄じゃねえの?』

『いや、発見時に崩落した部分を取り除いて進入路は確保しているとのことだ。あとはその後にデキソコナイたちに発見されていないかどうかだが……』


 周囲を見る限り、通路は長い期間侵入された形跡はないようだった。

 それから渚たちが先へと進んでいくと確かに崩落して壁が崩れている地点を発見し、それからグンマエンパイアに続いているであろう進入路へと慎重に中へと入っていく。


(抜けた……と。ああ、ここもやっぱり同じような構造なんだな)


 そして、渚が今にも崩れ落ちそうな狭い通路を抜けると、その先にあったのは軍事基地や地下都市に近い構造をした部屋だった。

【解説】

新規格人間研究所:

 愛国者連合によって造られた研究所。元は軍事施設のひとつで機械獣たちが集めたアイテールを一時的に貯蔵する役割を与えられていた。

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