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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第7章 地獄輪廻界『群馬』
258/321

第258話 渚さんと道案内の男

「おい、なんでオスカーが一緒にいるんだよ?」

「なんでと言われてもな。こんな時に郡馬圏に向かおうなんて面白そうな話を聞かされたんでな。それに子猫ちゃんたちもいるようだし、どうにも金の匂いもする。ははーん、アーガムのその顔。やっぱり当たりだったみたいだな」


 デキソコナイとの戦闘終了後にアーガムの元に戻った一行の中には何故かオスカーが混ざっていた。彼女が一緒にいる事情は本人が口にした通りであり、そのことにアーガムが眉間にしわを寄せながら少し考えた後でルークを睨むと、ルークの方は「俺は関係ないから」とでも言いたげな顔で首を横に振りながら肩をすくめた。


「チッ、その馬鹿は今借金漬けだからな。馬車馬のように働くから重宝してたんだがよ」

「ご期待に添えずすまないがね、アーガム。何人たりとて俺を縛り付けられる者など存在しないんだよ」

「いや、アンタ借金に縛られてるじゃねえか」


 渚のツッコミにオスカーが「上手いこと言うなよ」と笑った。

 それに渚は少しだけイラっとしたが放置することにした。これ以上突っ込んでも話が進まないし、渚は彼女たちが入る前からこの局長室にいた人物の方が気にかかっていたのだ。


「で、ダン隊長がいるってのは……さっきの戦闘の報告……ってわけじゃないよな?」


 アーガムのそばにいたのは先輩狩猟者ハンターであるダンだ。その男はかつて渚とリンダも世話になったことがあり、ルークやオスカーとも知己で、クキシティの狩猟者ハンター管理局所属の狩猟者ハンターであった。とはいえ、この街に来てから渚たちとダンとの接点はなかったはずだが、それがこの場にいるということはただの偶然ではないはずだった。


「こっちからも助っ人を出すって言ったろ。で、ダンを道案内に付けようと思ってな。まさかオスカーも一緒に来るとは思わなかったが」


 どちらもクキシティ付きの狩猟者ハンターであり、増援としてこのハニュウシティに呼ばれたメンバーである。だからこそ、クキシティのライアンが賛同している群馬圏への遠征に参加させるのは適切であるとも言えた。


「ダン隊長が道案内?」

「ああ、ダンは郡馬圏探索ではここら辺でもベテランになる」

「昔の話ですよ。それで話は聞いたぞナギサ、リンダ。まったくお前たちは……あまり無茶をしてくれるなよ」


 呆れた顔をしたダンに渚とリンダは少しだけ困ったように笑った。

 確かにこれまでの戦いははたから見れば無茶ではあったのだろう。けれども、それでもやるべきことをしているという自覚が彼女たちにはあった。止まるつもりは当然なく、だからこそダンの言葉に従うこともできない。

 そんなふたりの様子にダンが困った顔で「まったくなぁ」とため息をついた。ダンがここに来たのはアーガムに郡馬圏の道案内を頼まれたからだ。この状況下でのあまりにも酔狂な話にダンは最初渋い顔をしたが、案内する相手が渚たちであることと、どこに案内するのか、そして何を目的としているのかを聞いては無視もできなかった。


「それにルークも相変わらず面倒をみてるようだが、自由にさせ過ぎじゃないか?」

「悪いなダン。そいつらは俺の手を離れたどころか、今や俺を下につけてるんだよ」


 アゲオアンダーシティ復興計画委員会のことまでは聞かされていないダンがその言葉に眉をひそめたが、周囲の誰もが指摘してこないところを見て、それが冗談ではないのだろうと理解した。

 実際、今のルークの立場はアゲオアンダーシティ復興計画委員会の会長である渚の傘下にあると言ってもいい。そして今やアゲオアンダーシティ復興計画委員会はアンダーシティ、コシガヤシーキャピタル、狩猟者ハンター管理局が協力している埼玉圏内でも有数の組織である。

 そしてダンがその言葉の意味が分からず眉をひそめていると、アーガムが渚とリンダに口を開いた。


「ダンに関してはこれから話を詰めていくとしてだ。それでお前ら。デキソコナイとの戦いはどうだった? 機械獣とは違ってただろ」

「まあな。正直良い気分ではねえよ」

「そうですわね」


 機械獣はあくまで機械なのだ。生物ではないし、ミケのように意思疎通ができる相手でもなく、これまでも渚は機械獣を倒すことに対して何ら抵抗感はなかった。

 けれどもデキソコナイは違う。アレは人の形をして、人と同じように赤い血を流し、人と同じように感情を持っているような素振りすら見せている。また殺らなければ殺られるとはいえ、先ほどの戦いは虐殺に近い。であれば当然人間としては拒絶反応が出る方が正しいのだろうが、渚もリンダもその事実から目を背けてはいなかった。


「ふんっ。トリー・バーナムの孫の方は少し引きずってるが、お前は違うようだなナギサ。まあ、どちらも合格だ。あとはそっちに適性がなきゃいいんだがな」


 その言葉に渚が首を傾げたがときおり『出てしまう』のだ。頭のネジが外れて血に酔ってしまう輩が。頭がおかしくなったのか、或いは元々資質があったのかもしれないが、ともあれ血の味を覚えて壊れた連中が今度はデキソコナイだけではなく人間を襲うこともある。それが実際馬鹿にならない頻度で発生して街の中で被害を生み出すので、アーガンたち狩猟者ハンター調査局は狩猟者ハンターの精神状態にも気を配っており、それは狩猟者ハンターの証であるトークンでメンタルスキャンを行って監視しているほどであった。


「そいつらが大丈夫なのは俺も保証するよ。ま、積極的にここで狩りをさせるつもりもないしな」


 ルークの言葉にアーガンが頷くと、それからダンを見た。


「というわけでだ、ダン。お前が抜けるのは痛手だが、こいつらの案内はお前に任せようと思う。行けるな?」

「アーガム局長の指示なら従いますよ。それにここで乗っておかないと、知らぬ間に何もかもが終わっていた……なんてことになりそうだ。機会があったのに逃すなんてのは、この地で生きる者としては間抜けもいいところだからな」


 そう返すダンにルークがニヤリと笑って頷いた。何しろ渚たちはこれからグリーンドラゴンと融合した宇宙戦艦の制御を行う手段を得るためにパトリオット教団に接触をはかろうとしているのだ。生半可な覚悟では挑めない。だからこそ挑もうというダンの覚悟をルークは肯定したのであった。

 その横でオスカー(本名:マリア・アリソン(女性))が訳知り顔で「へっ、お前もかよ」という顔で肩をすくめていたが、こちらは本当に何も聞いていないのでただの知ったかぶりである。

【解説】

ダン:

 クキシティ所属のゴールドランク狩猟者ハンターで、狩猟者ハンター管理局の準局員でもあり、管理局主導による作戦時などでは指揮をとる立場になることが多い。そのため、作戦下でなくともダン隊長と呼んで慕う者も少なくない。

 熟練の狩猟者ハンターの中では珍しくサイバネスト化していない生身であり、着実に実績を積んでアンダーシティ入りも射程圏内に入れている。

 戦い方はオーソドックスで万能型。スコーピオンバズーカという機械獣の部位を加工した武装を所持しており、大型の機械獣に対しての攻撃手段も持っている。

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