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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第7章 地獄輪廻界『群馬』
236/321

第236話 渚さんと地下都市行脚

『抵抗はやめなさい』

『強制退去を行います』

『手をあげなさい』


 アゲオアンダーシティ第一階層。廃墟となったビル群の中を人型ガードマシンであるガードポリスがライオットシールドを構えながら十体並んで進んでいる。その手にはレーザー銃を持ち、今も正面にいる侵入者への攻撃を行なっている。もっともレーザー銃の出力は低く、それらは侵入者が隠れている瓦礫によって阻まれていた。とはいえ、ガードポリスもそのことは先刻承知だ。彼らはレーザー銃で牽制しながら包囲を固め、ライオットシールドで囲んで制圧するつもりで動いていた。


『やっぱりスパイダーやガードソルジャーはでてこないな』

『そりゃあな。ガードバレルはこういう瓦礫の多い廃墟にゃ不向きだから整備された施設内にしかいないし、こういう街中にいるのはガードポリスだけだな』


 突き進むガードポリスの様子を観察しながらルークが渚にそう説明をしていた。

 以前にここに探索に赴いた時に渚たちが遭遇したのは樽型でテーザーガンと光学迷彩持ちのガードバレル、人型でレーザー銃とライオットシールドを持っているガードポリス、また軍仕様となる人型のガードソルジャー、多脚戦車であるスパイダー、搭乗型のスパイダーロードであった。

 しかしガードバレルは樽型の形状から平らな場所でなければ移動ができず、ミリタリーガードは基本禁止区画に入らない限りは遭遇しないため、この場にいるのはガードポリスのみであった。


『さて、あと少しだ。準備はいいかナギサ?』

『あいよ。綺麗に半々と行こうぜルーク。せーの』


 そして道路の左右の廃墟ビル内にあらかじめ隠れていた渚とルークが、ガードポリスたちがビルを通り過ぎた途端に姿を見せて背後からライフル銃を撃ち始めた。

 センスブーストによって加速した世界に突入した渚とルークがガードポリスたちが反応する間も無く、表面上はノータイムの連続撃ちで倒していき、最後の二体も同時に破壊され、綺麗に抱きつくように倒れこんでいった。


『ふむ。ルークといったか。ヤツも随分とやるものだ』

『そりゃあ、一応わたくしたちの先輩ですし』


 瓦礫の後ろからひょっこりと頭を出したマーカスとリンダがそんな言葉を交わしあいながらスッと出てくる。その後に続けてミケが乗っているアーマードベアがのっそりと出てきた。ガードポリスのライオットシールドは攻める分には比較的厄介だったために、囮組と奇襲組に分かれて戦闘を行ったのだが、特に問題もなく対処できたようだった。



『今んとこ、ガードマシンの数は普通だな』

『巡回自体は増えてるらしいがな。とはいえ危険なのはやっぱり禁止区画だ。ミリタリーガードが殺気だってるって話だぜ』


 戦闘後、再び移動し始めてすぐに口にされた渚の言葉にルークがそう返す。

 ヘラクレスがアイテール結晶侵食体を返した後もアゲオアンダーシティは以前通りには戻らず、警戒が厳重になったと渚たちは聞いていた。


『ふぅん。反応自体はあるんだよな』


 ドクロメットから出ている猫耳を動かしながら渚がそう口にした。

 その猫耳は機械種であるミケによって造られた渚の新しい器官だ。また改修されたドクロメットは現在猫耳カバーがついていて耳の動きを阻害しないような形に変更されてもいる。何しろこの猫耳は生体型の多機能レーダーであり、周辺の状況を渚に的確に教えてくれているものだ。

 現在もその猫耳レーダーは時折設置されている監視カメラなどから流れている電気信号の動きの変動を計測していた。


『確かに監視カメラの動きがおかしいね。反応の揺らぎに知性を感じる。見られてるよ』


 アーマードベアを操作しながらミケが渚にそう返す。監視カメラの動作反応と情報のやり取りの速度を得て、渚はチップによって精査された情報から無意識的に、ミケは機械種より生み出されたボディの能力を使って意識的に感じ取っていた。


『別に、すぐに襲いかかって来るってわけじゃあないんだろ?』

『まあね。昨日の機械獣襲撃の件もあるから今、中にいるのは僕たちだけだ。だから必然的に監視している存在の注意は僕らに向けられているんだろう。これならダミー用にほかの狩猟者ハンターも侵入させるべきだったかな?』


 ミケの言葉に渚が首を横に振った。それは囮にすることに否定的……というわけではなく、地上の問題のためであった。


『そいつは無理だろ。外じゃあいつ機械獣が来るかも分からない状況だ。あたしたちだってここに入るの渋られてたじゃんか』


 埼玉圏中央で行われているグリーンドラゴンと機械獣の争いはすでに狩猟者ハンター経由でも周知のこととなっている。そのため地上のアゲオ村は機械獣の襲撃に備えて警戒態勢を敷いており、最大戦力である渚たちにもいて欲しいと狩猟者ハンターたちが考えるのは当然のことではあった。

 しかし渚たちの行動が成功すれば、ガードマシンを気にせずこの地下都市を避難所として利用することが可能となる……と説得して、渚たちはこの廃地下都市へと降りていた。


(あたしも地上は心配だけど、そもそもグリーンドラゴンについてはいつ落ち着くのか分かんないわけだしなぁ。ここを確保できる方がアゲオ村にとってもいいはずだ)


 そう考えながら渚は先へと進んでいく。道中に何度かガードポリスと遭遇したが渚たちのチームの前では敵ではなく、そのすべてを退けながら第二階層へと辿り着いた。



『そういや、以前は第一階層までしか降りなかったんだったか』

『まあな。もっとも以前に潜ったのは瓦礫に道が埋もれて人の手があまり入ってなかったところだったけどな』


 前回渚たちが挑んだのは、廃地下都市内でも未発見だったエリアだ。

 対して現在渚たちが進んでいるのは以前から解放されていて探索者トレジャー狩猟者ハンター遺失技術ロストテックを取られ尽くされたエリアであった。

 渚たちはクキアンダーシティから提供されたマップに従って第三階層への向かうためのルートを進んでいた。


『ここまでは問題ない。けれども今はともかく第三階層の入り口に向かっているのがバレれば一気に襲いかかって来るかもしれんな』

『そうだろうな。まあ、そうなったとしても問題はないけどな。ナギサ、予定通りいくんだろ?』


 ルークの問いに渚が頷く。すでに今後の予定も決まっている。立体マップを頼りに前に打ち合わせをし、どのように攻略するのかも目処を立てていた。


『当然、それが一番確実だろ。みんなが囮になっている間にあたしが忍び込む。そんでさっさと市長室に辿り着いて、警戒態勢もさっさと解いてもらうようにするさ』


 今後のことを考えればミリタリーガードと正面からぶつかってアゲオアンダーシティの戦力を損なうのは得策ではなく、だからこそ地下都市の被害が少ない方法で攻略することを渚たちは決めていた。

 そして一行は目的地に向かって進み続け、彼らが第三階層へのゲートへと辿り着いた時、そこにもう渚の姿はなかった。


【解説】

ガードバレル:

形状が樽に似ているガードマシンの一種。テイザーガンを装備し、地下都市内の各種案内などもこなす。光学迷彩を使うレア個体もいる。

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