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渚さんはガベージダンプを猫と歩む。  作者: 紫炎
第4章 地の底より
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第124話 渚さんと通常営業

『ミケ、あれから何日経ったっけ?』

『ウルミに緑竜土を預けてからかい? 今日で一週間だね』


 ミケの返しに渚が『そうか』と口にしながら、引き金を弾いていく。

 緑竜土の探索中断から一週間。ウルミと別れた渚たちはすでにクキシティへと戻っており、今はこうして狩猟者ハンターとしての依頼をこなしているところであった。


『だから、そろそろ連絡が来るかもしれないね』

『そうだといいけどな。おらよっと』


 渚がミケと会話をしながらライフル銃で仕留めているのはスケイルドッグだ。以前にダンたちがクキシティの周囲の巣を潰したことで一時的には沈静化していた都市部周辺の機械獣の活動が再び活発化しており、個体数の多い群れを今朝方発見されたことで、渚たちが緊急に駆り出されていたのである。


『おっと、逃げていくか。後は頼むぜ、リンダ』

『はい。任せてくださいナギサ』


 後ろに停めてあるビークルのセンサーヘッドを介して渚の言葉にリンダの返答が返ってくる。

 そして、その返答とほぼ同時にその場から逃げ去ろうとしたスケイルドッグの一体が切り裂かれ、空中にリンダの姿が出現した。それはつまり、渚が撃っているときにリンダが光学迷彩マントを纏ってスケイルドッグに近付いていた……ということであった。

 また、わずかに離れた場所から同じく光学迷彩を解いたクロが飛び出してリンダから距離をとったスケイルドッグを切り裂いていく。


『あいつ、前は機械獣との近接戦は最後の手段であって、普通は取るべき選択ではありませんわよ、うふふ……とか言ってたのになあ』

『うふふは言ってないよ。ま、彼女も一皮剥けたということじゃないかな。相棒が頼れるのは良いことじゃないか』


 ミケの言葉に渚が頷く。リンダの戦闘の成果は渚とルークに比べて見劣りこそしているが、以前に比べて戦闘能力は格段に上がっていることは事実だ。特にクロと共に戦うようになってからのリンダは見違えて強くなっている。


『まあな。で、ミケ。もう終わるみたいだけど、スケイルドッグの取りこぼしはないな』

『うん。こちらで観測した個体は全て排除されたよ』


 ミケの言葉に渚が『オッケイ』と言ってライフル銃の構えを解いて立ち上がる。


『じゃあ依頼完了だ。後は回収してさっさと戻ろうぜ』


 そして、依頼を達成した渚たちは倒したスケイルドッグからアイテールとパーツを回収するとクキシティへと戻り始めた。そこには特にドラマはなく、ただ着実に依頼をこなす狩猟者ハンターたちの日常があったのである。




  **********




「ナギサさん、リンダさん。ご苦労様でした」


 スケイルドッグの討伐を終えた渚たちがシティの狩猟者ハンター管理局に戻ると出迎えてきたのは受付嬢だ。以前のように狩猟者ハンターたちが大勢いるということはなく、その場は閑散としていた。

 渚たちが緊急で機械獣の討伐を依頼されたのはこの人手不足が原因でもあった。


「うっす。緊急の依頼終わったぜ。十四体、思ったより団体さんだったけど、まあ何とかなったよ」


 渚がそう返すと受付嬢が眉をひそめて深刻な顔をした。


「あなた方でなければ二人で何とかなる数ではないですよ。それにしても十四体……そうですか。やはり新しい巣ができているみたいですね。今後の犠牲を考えると頭が痛いです」

「アウターの方々がさらわれているとのことでしたわよね」


 リンダの問いに「ええ」と受付嬢が頷く。犠牲者はすでに出ており、それは都市周囲に住んでいるアウターたちが多いようだった。


「遺体がアイテール化されれば機械獣の数は増えますし、狩猟者ハンターの数も今この都市にはあまり多くはありません。大体は危険な中央部に出払っていますし、ルート確保や機械獣討伐で街に残っている人も多くありません」

「人手不足が結構深刻的なことになってるな。シャッフルの影響がまだ強く残ってるってことか」

「ああ、そうだが……今回は色々とひどいな」

「あれ、ライアン局長かよ」


 響いてきた声に、渚たちの視線が奥の通路へと向けられる。そこには局長のライアンが二階から降りてくる姿があった。


「よっ、お前ら助かってるぜ。今は色々と立て込んでいて何処もかしこも火の車でな。お前たちが持ち帰ってくれた情報のおかげで犠牲が抑えられてなきゃもっとひどい状況になってたかもな」


 ライアンの言う情報とは無論グリーンドラゴンの居場所である。渚たち経由で情報がここに届けられた時点で行方不明の狩猟者ハンターの一部がその場所を通る予定となっていたことを管理局は確認しており、圏境の危険地帯であることとシャッフルのせいであるためと考えられていた状況が見直されたのである。


「それでどうしたんだよ局長。部屋から出てきてなんか用か?」


 渚の問いにライアンが頷き、それからその場に渚とリンダだけがいることに気付いて「ああ、そうか」と口にした。


「ルークは……確か、今は街を出ているんだったな」

「ええ、奥さんとお子さんに会いにいっていますわ」


 リンダがそう答えて渚も頷く。緑竜土探索の後、ルークはクキシティを離れて一人で実家に帰っていた。


「たまには一家団欒させてやらねえと家庭崩壊の危機になるって苦笑いしてたぜ」

「なるほどな。まあ、お前らだけでも問題はない。騎士団からの連絡が来てるぜ」

「マジで?」


 ライアンの言葉に渚が目を輝かせる。それはつまり、待ちに待ったものができたということだろうと。それから渚の反応にライアンが笑いながら頷いた。


「ああ、緑竜土の加工が完了したから首都に来てくれとよ。招待状も預かってるぜ?」


【解説】

コシガヤシーキャピタル:

 コシガヤシーキャピタルは埼玉圏の地上を管理する組織であり、首都の名称でもある。そこはかつて宇宙船が落下した影響でクレーターができており、またクレーター内には埼玉海と呼ばれるクレーター湖が存在している。なお、埼玉圏内で主食となっている藻粥の藻はその湖で生産されている。

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