第122話 ルークさんと戯れフィッシュ
『ルーク、私は強化装甲機を使う』
『ああ、分かった。それまでは保たせるがレーザー狙撃銃も頼む』
ウルミがルークの頼みに頷きながら、下がったビークルの元へと駆けていく。レーザー狙撃銃は強化装甲機と共にビークルの上に乗せてある。渚がリミットを解除したために今のルークでも高出力モードを扱うことが可能となったソレは、目の前の敵への切り札ともなり得る武器だ。
『ルーク、戦いますの?』
『ああ。あれは砂の中を泳ぐフィッシュタイプだ。追跡されると逃げ切れない。ここで叩くしかないんだが』
そう言ってルークが狙撃銃を撃つが、サンドサンフィッシュの装甲に接触した途端に放電しながら弾丸が弾かれた。
『弾きましたわ!?』
『電磁流体装甲だ。テクノゲーターより強力なものでな。ヤツらはあれを使って砂の中を移動してるってわけだ』
そう言いながらルークが次弾を発射する。電磁流体装甲の表面を削るために一発目と同じ場所を狙うがやはり弾かれる。それに舌打ちしつつもルークがリンダに声をかける。
『リンダ、クロと一緒にこれから出てくるやつを倒せ』
『これから出てくる?』
『ああ、厄介なのを飼ってやがるんだよ。あいつはな』
『POEEEEEEEE!』
首を傾げるリンダの前でサンドサンフィッシュの口が開くと、その中から二の腕ほどの大きさの機械獣が何体も飛び出してくるのが見えた。
『あれ、魚ですの?』
『そうだ。サンドラテオラブラックス、別名スズキだ。魚型でそいつも電磁流体装甲を使って砂を泳いで攻撃してくる。小さい上に弾丸がほとんど当たらない。面倒なヤツなんだよ』
『承知しましたクロ、ルークを護りますわよ』
『分かりました』
アイテールブレードを両足から出したリンダと、両腕にアイテールブレードを持つクロがルークの前へと駆けていく。同時にルークはバイクを後退させて距離を取りながら狙撃銃を撃ち続けた。
『この人数で挑むような相手じゃないんだがな。しかし、あの重い感じは本当にこいつか?』
ルークの中で浮かんだ疑問は、しかし砂から飛び出した小型機械獣に遮られる。
『チッ 』
『ルーク!?』
真下からのスズキの突貫。しかし次の瞬間にルークはセンスブーストを発動させた。ルークのセンスブーストは渚のものとは違い、一秒間という決まった時間を十倍の感覚で認識するよう設定条件を固定されたものだ。
(間に合え)
その一秒というわずかな時間の中でルークは腰に下げた拳銃を抜きながら、迫るスズキの装甲を撃ち抜いた。電磁流体装甲も至近距離での対装甲弾の直撃であれば、さすがに弾くことはできない。そして砂の上に落ちたスズキはビチビチと体をくねらせた後に動きを停止させた。
『ルーク、申し訳ありません』
『気にするな。砂の中を移動してるんだ。漏れるのは当然と思うしかないさ。お前たちはできる相手を仕留めてくれ。あのデカブツは俺と』
『私が対処しよう』
ドスッとルークの前にレーザー狙撃銃が突き刺さると、同時にルークの横を二刀流の強化装甲機が駆けていく。搭乗者はもちろんウルミだ。渚たちに与えられた双剣の実戦使用は結局、ウルミが最初となったのであった。
『頼むぞウルミさん。できるだけ押さえてくれ』
『承知した』
ウルミが剣から緑光の帯を流し、サンドサンフィッシュへと向かっていく。
とはいえ3メートルの強化装甲機に対してサンドサンフィッシュの全長はその倍。さらに上部に伸びたエラと地中に沈んでいるエラを合わせれば10メートル近い大きさとなる。
『ウルミさん、そいつ潰す気ですわ』
『問題ない』
サンドサンフィッシュはその巨体を倒して強化装甲機を圧し潰そうとしたが、ウルミはソードマンズパックのブースターを噴かしてギリギリで避けた。以前のガンナーズパックに比べて機動力が上昇したが故に可能な芸当だった。
また倒れたサンドサンフィッシュをウルミが無限軌道で走りながらアイテールソードで斬り裂くが、装甲は厚すぎて電磁流体装甲の表面をこそぐ程度にしか効果がない。
『やはり硬いが、まあ地道にやるしかないわね』
ウルミはそう言いながら斬撃を繰り返していく。そして表面が剥がれた装甲をルークが狙い撃ち、装甲板を貫いて内部にも届き始めたが、それでも敵の動きは鈍りもしない。
『ウルミさん。ブースター来るぞ』
遠目からサンドサンフィッシュの動きを見ていたルークが叫んだ。
次の瞬間、横に倒れていたサンドサンフィッシュが回転を始めたのだ。尾ビレのブースターの炎が回転により太陽のコロナのようになり、まるでコマのように回りながら移動を開始する。
『チッ、狙いはあっちかよ。リンダ、クロ、逃げろ!』
そして動き出したサンドサンフィッシュはウルミでもルークでもなく、リンダとクロの方へと突き進んでいく。
『なんですのよ?』
『組み易しと見られましたかね』
ルークの声に反応したリンダたちがそれを飛んで避けるも、サンドサンフィッシュは弧を描きながらUターンして再び追い始めた。
『不味いな』
ブレードであるエラを含むと直径10メートルの円盤が砂漠を駆けているのだ。それを避け続けるのは至難の技。だが、ルークはハッとした顔をして通路に通じる出入り口を見た。
『リンダ、出入り口だ。急げ!』
その言葉にリンダとクロが頷いて指示の通りに走り出す。
エラのブレードはアイテールライトを帯びていない。であれば、砂漠から突き出たあの分厚い扉と接触させれば止められるのでは……という期待があったのだ。しかし、相手もそう簡単には策に乗ってはくれなかった。
『クソッタレ。あいつ、浮かせやがった』
ルークの焦りの混じった声が響く。リンダたちが入り口を飛び越えた後ろで回転しているサンドサンフィッシュはその場でバウンドし、入り口を乗り越えようとしていた。そして……
『ああ、ちょうどいいな。その角度』
『うん。多分こうなると思っていたよ』
その場で声が響き、入り口の扉の前に光学迷彩マントを解除したドクロメットの少女が立っているのがルークにも分かった。それはちょうどサンドサンフィッシュの横腹を前にしていて、
『じゃ、こいつで終わりだ!』
次の瞬間に巨大な緑光のチョップがサンドサンフィッシュを貫いたのである。それは『扉の前で待機していた』渚が放ったタンクバスターモードの形態のひとつ『スーパーチョップ』であった。
【解説】
サンドサンフィッシュ:
分厚い電磁流体装甲を持ち、砂の中を走行する大型機械獣。
その重量で相手を押しつぶす戦法を取り、ブースターと合わせての回転タックルも行う。
なお、大型機械獣は中型、小型の機械獣を搭載している要塞型と呼ばれるタイプが多く、サンドサンフィッシュもサンドラテオラブラックスと呼ばれる魚型の小型機械獣を搭載している。




