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第98話「トワイライト・シャドウ」

~モンジロ山・8合目~


下山しながら、セイメイは先ほど起きた内容を話をした。

そんな中、ソロモンが口を開く。


「マスター、こりゃやばいぞぃ?このゲームはNAノースアメリカのゲームだ。このままいくと、自立型AIが軍事転用されるのは当然ながら、最終的な懸念はすべてAIの制御下におかれたとき、想像できる恐怖の範囲はすべてじゃろ?向こうでそうなった場合、日本じゃあっちゅーまに国が滅ぶぞ?」


「前々から思っていたが、果たしてそうかな?というのは、このAIが必ずしも世界を滅ぼす日にあるとまでは考えにくい。自立型AIは身体を持たない媒体として、ネット上に存在するとして、全てがオンライン化するとは考えにくい。」


「ロボット工学が飛躍的に進んだ場合、あやつらは鼠算式に増えていくじゃろ。そうなったときどうするんじゃ?」

「生憎、ロボット工学が時代に追いつきそうで追いついてないのは複雑な構造が存在しているからなんだよね。だけど、その複雑な構造をAIが解き放ち人間にその知恵を預けたとき、どうなるか想像しただけで、怖くなる。」


「真のアンドロイドが誕生する…。」


クリスは思わず口走ってしまった。


「そうだ。そうなったとき、短期的に人類は文明を謳歌することになるだろう。しかし、中長期的な判断は?身体を手に入れて、人間社会に溶け込んだら?鍵と暗号・指紋認証をはじめ、虹彩こうさい認証、すべての生体認証に至るまで、該当者の復元・もしくはロックが電子解除が実現したとき、世界は…時代はバトンを渡すことになるだろう。」


「共存の道はあるんですか?」


「そうだなぁ。俺とルカの関係が通常だとする。AIはよりよい選択、つまり正論で突き進んでいく習性が備わっている。人間はある意味、愚かだから葛藤という言葉出てくるが、AIには存在しないだろうな。あっても演算処理に時間を食うだけで、50+αの数値で可決し、傾いた方をとるだろう。仮に時間がかかったとしても、たかが数分・数秒の時間ぐらいだろうけどな。AIの葛藤というのは計算中という言葉になるだろうし、欲望という雑念が存在せず、目的のために物事を遂行していくだろうね。」


ルカが少しうつむいていた。ソロモンはルカの肩をポンポンと叩きながら会話を続けた。


「うむ。そうじゃな。だからといってAIを悪くいっているじゃないんじゃよ。この次の時代が壮大な選択肢の答えを導き出されたとき、どうするか人類は問われているように思うんじゃ。」


「まぁ、それまでソロモンも俺もここにいる全員は、墓の中にいるだろうけどwだからといってしらんぷりもできんからな。」


「それもこれも人間の俺らのデータがグスタフに流れ込み、選択肢を決められつつある。つまり、ワシらは断頭台を軽快に上っている真っ最中ということの裏づけができてしまうわけじゃな。」


「皮肉なものだな、自分が可愛がっているペットに噛み付かれてしまうのだから。まぁ素人の俺らが考えたっておエライさんがたが決めることだ。だが、そうなったときに民間団体が反対運動したところで、なんの抵抗も生まないだろうなwww今はグスタフとの戦いに備えて、愚かであって愚かでない人類の情報を持たせてやらんとな。少なくとも()()()()()の俺らができることを今やるしかないわけだwww」


セイメイは苦笑いをし、シケリアの海を見渡しながら下山していった。


~農園地帯~


山の麓の森を抜け、高原地帯を越えたあたりには日は天高く昇っていた。


太陽の日差しをいっぱいに浴びる畑に咲く花々は綺麗に咲いていた。そして、この牧歌的な農園を越えようとすると俺らを待ち伏せするものがいた。



刀の鞘を握るナタネと他のギルメンがそこには立っていた。



「なんだ?俺らの旅をお出迎えしにきたのか?MIKADOさん。」

「セイメイ、我らと同盟を組め。悪いことはいわん。もしくはそこの小娘をよこせ。」

「なんなんだ??同盟組めやら、ルカをよこせとか、おまえらなんで上からなんだよ?」

「元は我がギルドのメンバー、分派したのだから本流はこちらだろ?」

「なに、その姉妹ギルドみたいな表現wきもちわりぃなwおい!!こっちはおまえらを本流としていねーぞ!!」


セイメイは刀に手をかける。


「先行プレイヤー様は、なんで最初に始めたから偉いっていう考えに至るんだよ?情報と知識をお前らと肩を並べたらお前らの理屈は覆るんだよ。悪いが、MIKADOとは組めん。というか、そういう交渉の仕方でうまくいくと思っているあたり、頭ん中がお花畑だってわかっちまうんだよ。引き篭もり予備軍。」

「ああ?仕事しているし!おまえに…」

「ああ、そうだったな。自宅警備員!」


セイメイは刀を抜く。


「貴様!!偉そうに!!」と他のギルメンたちがナタネの前に出てくる。


「偉そうに???フハハハハ!!おまえら、偉そうな口をきいているのは、お前らのリーダーだぞ?仮にも中央首都アーモロトの城主、オケアノスのセイメイは俺だ。どうした??格下共!かかってこい!!」

「マスター…。」


ソロモンが小声で話しかけてきたがセイメイは煙たそうに返事をする。


「んだよ!!こいつら自分の立場をわかっちゃいねー!!」

「マスター!!そうじゃない!!こいつらに関わっている暇ないぞといいたいんじゃ!!」

「こいつら…なんもわかっちゃいねーんだぞ??」

「こいつらは一生分からんよ。だから、相手しちゃダメじゃ。」


ソロモンがセイメイの前に出て、指輪をはめている手をかざす。


「おぬしらは、この指輪を知っているか?」


MIKADOのギルメンはひそひそと話し始めた。


「まぁ知らんようじゃな?教えてやろう。ソロモンの指輪じゃ。ここから出てくる魔神の相手をおぬしらはできるのかな?」


MIKADO側はざわつき始めた。


「さぁ、ワシを倒せたとしてもそこの脇を固める我らオケアノス、マスターをはじめ名だたる勇士がここにいる。貴様らの命、いくつあっても足りんぞ??がはははは!!!」


ソロモンは高らかに笑っていた。


「さぁナタネとやら、ワシはおぬしらの強さに興味はないんじゃ。ましてや、交渉が決裂した上でPK合戦をここでやることで生産性をワシは見出せん。それでも無益な戦いをするのか?」


「くっ…。セイメイ!!覚えておれ!!」

「さぁ?俺は物忘れが激しい。げんにあんたの名前を忘れてたぐらいだ。まぁおっさんに覚えさせるにはそれなりのインパクトが必要だぞ?」


そういうと、じりじりとソロモンは距離を詰めながら、進行方向の道を切り開いていった。


「セイメイさん…ここから走れば、街のセーフティゾーンに入ります。いまのうちに…。」

「セイメイ様…、霧を使えば、相手を巻くことも可能です。ご許可を。」


セイメイは、感情に飲まれつつあったが冷静に状況を見ざるをえなかった。


「クソ…!距離はどれくらいだ?」

「700前後です。」

「わかった。ソロモンを下がらせる。そしたら下がるぞ?」


ソロモンにセイメイは耳打ちする。


「ソロモン、俺が悪かった下がろう。この場は終息しそうだ。ありがとう。」

「大丈夫じゃ…。マスター下がるにしてもワシは脅しているに過ぎない。だから…」

「分かっている。スカルドに霧を打ってもらう選択肢もある。」

「なら、良いか。」


ソロモンは手を下ろして、モルパレの方へ走り抜けた。


「くっ…!!追え!!セイメイの首だけでいい!!捕まえろ!!」


セイメイはにやっと笑い、抜刀の構えをする。


スカルドに目配せをすると、スカルドは霧を発生させた。その間にセイメイ一行はモルパレの門をくぐり、セーフティゾーンへ入ったのだった。



~モルパレ~



街に戻ると、早速、定期船の時間を調べる。まもなく出航の時間だ。


「マスター、すぐに乗ろう。」

「ああ、そうだな!ここは当分用は無い。クリス!おまえスタミナないんだから先にのっておけ。」

「は、はい!のります!!」

「スカルド、お前もだ。いけ!」

「それはいいのですが、セイメイ様は??」

「俺は最後に乗る。じゃないと定期船に同乗されて、向こうでまたやりあわなきゃいけんだろうに。」

「なるほど…。わかりました。必ず、戻ってくださいな。」

「ああ、大丈夫だ。」

「マスター、ワシはどうする?」

「ソロモンもだ。俺はルカを連れていく。船に乗ってくれ。もし、あいつらに見つかって向こうで戦うことになっても、脅威を与えることはできるだろ?」

「そうじゃな。マスター、もどってくるんじゃぞ?」

「ああ、大丈夫だ。」


ソロモンはセイメイの肩を掴むと、セイメイもソロモンの肩を掴み交わした。


「そろそろ、霧の効果が切れる。ルカ、悪いが俺の方に来てもらうぞ。」

「ん?はい…。」


セイメイは町外れの崖の方に向かっていった。

案の定、MIKADOの一味はセイメイを発見し、セイメイを追いかけていた。


一方定期船は、出港準備をおえ、離岸を始めていた。



~定期船・甲板~


「セイメイ様は?」

「マスター、あのバカモンが…。」


スカルドの顔を見て、首を横に振るう。


「乗っておらん。」

「な、なんで?」

「わからん。」


航路をメディオラム地方に取る定期船が入ると、周りを見渡すスカルドはセイメイが襲われた崖を見てセイメイとルカがいることを確認した。


「ソロモンさん、あそこ!!」


スカルドが指差す方向を見る。


「なんで、セイメイさんはあんなところに逃げたんだろう…。」


クリスは不思議そうに見上げていた。



~名も無き崖の上~


崖に向かって走るセイメイはルカの手を引いていた。


―――マスターハ、ナゼソンナニ光ヲ放ツコトガデキルノデスカ?


 手を引かれるルカはそんなことを思っていた。ルカはセイメイの情報は知っている。エリート志向だった男が地に落ち、泥臭い仕事をしていても決して歪まず気丈に生き、この世界では輝いている。

何度でも立ち上がるような姿をみているルカは、セイメイをまるで、“不死鳥フェニックス”のように見えた。


 手を引かれ崖のギリギリまで逃げると、MIKADOの一同はセイメイを追い詰めていた。


「さぁ!!セイメイ!!逃げ切れたにも関わらず、またここにくるなんて、センチメタルなやつだな!」

「ほら、ナタネが負けたところだからさw俺は雪辱を晴らして上げるにはここがいいだろうと思ってお膳立てしてあげたんだよ!感謝しろよな?w」


セイメイはかなりの余裕をこいていた。


「仲間はどうした??」

「ああ、あいつらならログアウトしたぜ?」

「それで、その小娘をどうするつもりだ??」


「海に捨てるだけだ。」


「なっ!!??」

「簡単なことだ。こいつは死ねばここにはいられん。無論おまえらの手には渡らんだろうよ?」

「正気か!!??そいつは占領戦、拠点戦で圧倒的強さを誇るのだぞ!?惜しくないのか?」

「惜しい惜しくないは別だ。そもそも占領戦は数と質のぶつかりあいだ。それを使えると思えばすぐ取り入れて優位に立とうとする。別に悪いことじゃねーが、フェアじゃねーよな?まぁw戦争自体、フェアなことなんてなかったんだけどなwww」


「セイメイ、悪いことはいわん。我々と手を組め。貴様は十分に強くなった。我がマスターも認めている。戻って来い。」

「残念だ、ナタネ。俺はもう一人じゃないんだよ。()()()と同格の地位にいるんだ。もう、俺はアンタらの流れは一切関わっていない。サヨナラだ。」


―ルカ、お前を落とす。そのときに俺も一緒に落ちる。転送魔法の用意をしとけ。

―はい?私を殺す気ではなかったのですか??

―まぁいいから落ちろ。俺が追いかける。

―この高さでは私のデータは壊れます!それに…

―まぁ信用するかしないかはお前の判断に任せる。どっちが妥当か、その可能性に可決しろ。


「そんなわけだ。ぽいっとな。」


セイメイはルカを持ち上げて崖に落とした。


「まじか!!??」


ナタネは動揺して硬直していた。それを見計らってすかさず、セイメイも崖下へ転落する。


崖から落ちたセイメイはルカを抱き寄せてルカを信じている。

ルカはセイメイの胸の中で、目いっぱい魔力を使い転送魔法を唱えると、海面に触れる前に消えた。



「マスタァァーーー!!!」


 一部始終を見ていたソロモンの声は、無情にも波打つ白波はあざ笑うかのように、波飛沫を船に打ち寄せ上げていた。


夕暮れに染まる空はソロモンの背中を照らし、海に影を落としていた。




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