第94話「過去にルートを違えた現在」
迫りくる刀撃はセイメイの危険信号を余すところなく体中を駆け巡っていた。
飛び上がると同体を横にし、着地するまでに3回転斬りを行う。攻撃を喰らう方は縦回転なので、上段三段を喰らう事になる。
俺は思わず刀を抜き出し、峰でを当身をして初段を受け流すと、心眼の悟りを使用し後退する。二段、三段を交わし切ると、すかさず次の攻撃が襲い掛かる。
陰流・足曲りッ!!
打ち終った下段に残心を残している切っ先を下段から上段へ切り上げる。
思わず避けると傾斜のある崖へ追い込まれていった。
「さて、おまえさんの名を聞いてないな。」
「戦いの最中におしゃべりとはな!!甘いぞ!セイメイ!!」
旋風剣を放ってきたが、当身で避けれてはいるが、こんなのではガードゲージが持たない。
剣聖神道流: 蜈蚣
地面スレスレを走る俺に、刃を突き立ててくる!
「お見通しよ!セイメイ様ァァ♪」
振り上げていた刀を地面に突き刺すように振り下ろす!!
陰流・土蜘蛛ォォォッッ!!
「な、なにぃぃい!!?」
地面スレスレを走る俺の足元に、蜘蛛の巣のような網が張られて身動きが取れない!!
「飛んで火に入る夏の虫、ご存知?」
刀は女の胴近くまで追い込んでいる。しかし、身動きが取れない!!
「フフ♪あなたの癖は相変わらずね?」
「な、なんだと??」
ようやく、硬直は解かれ相手との距離を取れた。
「なぜ、カウンターが入ったのにトドメのコンボを打ってこない??」
「簡単に殺せたらつまらないじゃない?フフフ」
「なめられたものだな。どこの馬の骨かわからんクソアマに弄ばれるのはな。」
「あら~。私としてはいい男の領分だと思うわよ?」
「そうかい?知らない女とダンスするとうるさい女達がそこにいるんだがね?」
セイメイがクイっと親指で崖下を覗かせると、女を睨み付ける三人組がおり、ルカが二人をつれて崖上のセイメイのもとへワープをしてきた。
「あら~セイメイ様、ポニーテール女子がお好きなら、私もしてきたのにつれないですわね?もっとも、私より美しさが劣る女が湧いているのは頂けませんわね?」
「あなた、どこの所属ですか?我がマスターは、ムッツリスケベかも知れませんが、愛されるムッツリスケベなんです!あなたに下心ないとでも思っているんですか?あなたにあんなことやこんなことをされても、いいという覚悟があるんですか??」
「ちょ…」
「たしかに…、我がマスターの検索履歴に“巨乳”とか、“素人”とか引っ掛かるワードが検出されてましたが、“ポニーテール”はありませんでした。だけど、スク水浮き輪は万国共通です!」
―――いや、あのね、久しぶりのこのボケ倒しに俺どう突っ込めっていうんですか?拾いきれませんけど?ていうか、俺、ムッツリスケベでスク水浮き輪が好きな偏った趣味もってないんですけど!?
「あらー。そこのアウトラインの子供まで仕込むなんて、既にアウトじゃなくって?」
スカルドはどうやら同族嫌悪なのか対抗心を燃やしていた。
「あらー?あなた、ヒューマンが高貴なるハイエルフに勝てると思っているんだとしたら、大きな計算違いですわね?それに、剣ぐらい精霊の加護を纏わしたら?」
ブォン!
スカルドは精霊剣を出し、双剣の刀身を伸ばした。
「なにかしら、貴女方はセイメイ様への求愛を邪魔するんですの?」
「あらあら、あなたこそ、セイメイ様に近づけるご身分であると錯覚してらっしゃるのね。そもそも、その時点で勘違いしていらっしゃるんですのよ?帰って寝たら?お勉強が足らないですわね!!」
スカルドはそう言い終わると天高く舞い、精霊剣スキルを発動する。
旋風輪舞ッッ!!
手をクロスさせた精霊剣は衝撃波をX字にし、ポニテの女に迫る。
陰流・雨傘ッ!
刀を回し、衝撃を無効化する。
スカルドが着地と同時に、踏み込む。
銃雹!!
空気中の水分が集まり、大粒の雹が降り注ぐ
相手は心眼の悟りを使い、数多の雹を交わし続ける。
「もぉらったぁぁああ!!!」
走り込んだところに双剣のクロス斬りを放ったが、そこにはいなかった。
「ここよ。のろまさん♪」
「な、なに!?」
天高く跳躍したポニテの女は、落下する速度にさらに瞬歩を混ぜてきた。
「まずは一人。」
真陰流・火球!!
刀を抜き、スカルドの背中を射抜くように一直線に落下しその攻撃は、烈火の如く刃を突き立てた。
「クソが…。」
「あ~ら、お下品♪」
刀を抜くとスカルドは倒れてしまった。
「さてと♪お次はどちら?雌牛ちゃんおチビちゃん?」
「なにぃ!!??アンタ…、その口をふさいであげるわ!!」
「チビなのではないのですよ。成長中です。」
「あの~…」
『なに!!!???』
声を揃えてこちらに叫ぶ。恐る恐る俺は言葉を発した。
「俺、ここから帰ってもいいかな?」
『ダメに決まっているでしょ!!』
「ハイ…」
―――ん??おかしくない?おかしくない!!??俺、襲われていたのに今形成逆転しているよね?
みんなで倒してもいいわけだよね???おかしくない!!!???
「私の槍で成仏させてあげるわっ!」
「クリスさん、成仏なんて生ぬるいですよ…。ここはじわじわとですね…。」
と、相談している合間にポニテの女の背後に黒い影が映る。
ズバ!シャン!!
双剣の音が鳴ると、倒れたはずのスカルドがそこには立っていた。
「トドメをさしたおつもりでしょうが、精霊の加護で瀕死で生き残れるようにしてあるんでしたのよ?」
「なん…だと…!…?」
「あ~ら、ごめん遊ばせ♪ハイエルフはどんなダメージを受けても、HP1で生き残れる特殊なパッシブがあるのですよ?ご存知なくて?このおかげでCCが入らないスキルはこれでしのげてしまうのよ?オーホホホホホ!!!!」
「この戦いに終止符を打つのは、セイメイ様か私のどちらか。死ぬ前に懺悔の時間を与えてあげるわ。所属をいいなさい!!」
「いってもいわなくてもヤるんだろ?だったらいわねーよ!!」
さきほどの口調とは違い、ずいぶんとぶっきらぼうなしゃべり方に変化していった。
「まぁアレだ。大体、検討がつく。おまえ、スメラの占領ギルド、MIKADOだろ?」
「さすが、セイメイ。よく知っているな。」
「思い出したんだよ。俺が最初に所属したギルドMIKADOだ。そこのサブマスター、ナタネさんだろ?」
「やっと思い出したんだね?ウフフフ☆」
「なんですか、突然?あんなことしてきてまで…?あのような色仕掛けで、自分が落ちるとでも思ったのですか?」
「いやぁシステムでまさかアーモロトを陥落するまでに成長するなんてね。計算外だったよ。」
「仲間に救われたんです…。俺は何もしちゃいない。」
「あいっかわらず、謙遜しまくりだね。君は…。」
「あなたほどの人間がなぜあんなことしてまで自分にしかけてきたんですか?」
「簡単な話さ、セイメイ。うちと同盟を組まないかというお誘いだ。」
「ほう、MIKADOもなりふり構っていられないとでも??」
「そんなことをいわさんなって。こちとら本気なんだよ。」
「ならば、うちとしてはNOだ。あんたらが、新規加入の俺にしたことを忘れてはいないよな??」
「あーあのことか…。」
「俺はあんなことをするギルドとは仲良くできん。無論、あのときの当事者も俺は忘れたことがない。」
「なぁそんなことより…」
「そんなこと??そんなことで俺はここまでどれだけの苦労をして、どれだけ嫌な思いをしてきたかあんたらにはわからんだろうね!!!」
「…。」
「都合が悪くなれば、だんまりか。胸糞悪い再会だ。このまま、怒りに任せてお前を消せば、気が晴れるだろうよっ!!でもな、俺もその辺の一般じゃねーんだ。
切捨て御免をするならば、もう少しマシな理由がほしいね!これじゃ、恨みで倒すようなもんだ…。」
俺は、今までの恨み辛みやっかみをぶつけてもよかった。しかし、それでは復讐したかっただけのように思えた。俺は復讐のためにゲームやっているんじゃあない。気の合う仲間と時を共に過ごしたいだけなんだ!!
「セイメイ様が下さなければ、私が!!」
「もういい、スカルド。いくら相手が強くてもよってたかって殺したんじゃ名が廃れる。気絶のCCでもいれて、セーフティエリアに戻るぞ。」
「わかりました。」
スカルドは返事をすると、気絶スキルを打つ。
痺れ花の粉雪
ナタネは「うっ」といって、しばらく動けなくなった。そのスキに俺らはその場を後にした。
~モルパレ・海水浴場~
ソロモンの元に戻ると、未だにイッパツでスイカを割る人がいなかった。
会場化したスイカ割りは大盛り上がりをしていた。
「いやぁ、案外難しいのかもな!ガハハハ!!」
暢気に大笑いをしているソロモンであった。
俺の苦労も知らずに、ソロモンのところにいき、ギルメンも参加できるのかと質問すると、OKが出た。
俺は三人に話をつけて、割れたら戦うのじゃなくて、街を見て回るという話にした。
俄然やる気をあらわにする三人組であった。
―――意外とこういうのも、ストレス発散になっていいかwどうせネトゲーだし本気にせんじゃろww
と、ソロモンの口調を真似しながら、心の中で笑ってみた。
報酬が特別報酬に変わった三人は思わず、熱が入る。
「ショートソードでわるんですね。これなら、初心者の頃扱ったことがあるので、自信あります!」
「双剣ならおそらく当たるんですけどね~。」
「魔法で割っていいの??」
三人は熱の入り方が色々とおかしな方向にいきそうではあるが、真剣にこのイベントに参加していた。
かくしてスイカを割るのはどの女の子になるのか?それは時の女神だけが知っている。





