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第93話「ポニテの男と女」

 シケリアは、エイブラハム地方への道とは違うルートの場所にある。

 ロームレスの南には大きく弧を描くように湾口が広がり、国境の川までとは違うルートなる。エイブラハム地方はシケリアを迂回するように海岸に沿って行き、そのまま進んでいくと国境の川にあたり、南下するとエイブラハム地方が入ることが出来る場所に存在しているのだ。

 ロームレスから見れば、若干南西、正確には南南西の位置にある。


 ここからは定期船が出ているため、それに乗り込む。


 ~定期船~


「マスター、ベルスさんから船を借りればよかったじゃないですか?」


 クリスは少し不思議そうに聞いてきた。


「それだとベルスの陣営から船乗り役を借りることになるだろ?それじゃあソイツの時間を奪ってしまうからやめたのさ。」

「なるほど!」

「まぁ、アーモロトでギルド船を取れたところで、遠洋したときに海賊に襲われるかも知れんし、ここまで無難にこれるとは限らんしな。」

「結局のところ、ワシらの船は来年かのぅ?」

「そうだな。おれらも船にのってレイドとかやりたいよな?」

「大砲ドッパンドッパン撃つんですよね?」

「そうだよ?」

「最大5隻保有できるらしいからの。今から楽しみじゃわい」

「ああ、そうだな。」


 ふと海を眺める事にした。


 ―――これまでお金がなくて必死になって、揉め事から逃げて、いつの間にやら城主になって…。

 それでも、俺の心は満たされていない…。


 ゲームで充実できないのはなぜなのだろう。


 レアアイテムも持っているし仲間もいる。俺はいったい何を欲しているのだ?現実リアルへの不満がココに影響しているのか?


 いやいや、そんなことはない。気の合う仲間に恵まれて、俺を頼ってくれる仲間がいて…。


「マスター……」

「はぃはい?」


 セイメイは我に返って周りを見渡した。


「ここです。身長が小さい規格なので、ご不便おかけします。」

「いやぁそうじゃないんだwすまんすまんw」


 ルカが俺を見上げてこちらを見つめている。


「…まだ私のしたことに不満があるのですか…?」


 ルカは少しさびしそうな顔をしていた。


「いや、そうじゃないんだ…。色々考えていたんだ。これからのこと、この先のことをね。」

「マスター、私はここのギルドの全てを把握したわけではありませんが、とてもコミュニケーションがとれているギルドだと判断しています。特に、ソロモンさんとは……」

「ああ、あいつは…あの人は俺の心をすぐ見抜くんだよ。だからしれっと俺の見えないところで、補佐をしてくれて結構助かっているんだ」

「なるほど。面倒見がよいのですね」

「まぁ最年長というのもあるが、本来、俺より彼の方がマスター業があっているんじゃないかって思うときがあるのさ」

「そうなんですか?」

「ああ、あれでも社長業だからな…リアルは」

「ふむふむ」

「おっと!調べるなよ?それとプライベートの時間に仕事の話はご法度なんだぞ?」

「ご法度…」

「マナー違反ってやつさ」


「さぁ、みんなの談笑の輪に入ろう。もう少し時間がかかるようだしな」

「はい、わかりました」


 そういうと二人はソロモンたちのところにいき、夜になりつつあるこの世界で夜通しシケリアの攻略を意見交換をし、その時間は大いに盛り上がった。


 ~シケリア島・モルパレ~


 モルパレの港には漁船が止まっており、釣りのメッカである。

 ここの魚は珍しい魚がほぼ入れ食いであり、生活コンテンツとしてそれなりに有名である。

 また、オリーブとワインの産地でも有名であり、島の半数を占める高原地帯にはブドウ畑がある。

 釣り・ワイン・オリーブと、農業と釣りという生活コンテンツがあり、生活コンテンツを生業にしているプレイヤーはここの島をあしげく通っている。

 また、リゾート地でもあるため、課金アイテムで水着を購入することにより、海水浴もできるというエリアでもある。


 戦い続きであったため、気分転換も含めてリゾート地であるココで、休むことにした。

 着替え小屋があるので早速、セイメイたちも水着に着替えていた。

 小屋を出ようとすると、ソロモンが俺の肩を掴み話しかけてきた。


「ちょいまち!!」

「ん?」

「マスター、マスターの髪の結に今まで気にして来なかったのじゃが、ポニーテールなんじゃな」

「ああ、そうだな。それがどうかしたの??」

「ポニテをみるとな、あれじゃ女の人に見えるんじゃがのぅ。」

「おいおいw俺はそっちの気はねーぞwww」

「わかっておるじゃがな、ついのw」

「勘弁してくれよw」


 俺は呆れてしまい、頭を抱えていた。しかし、ソロモンはお構いなしに話を続けた。


「それよりもじゃ、VRでもおっぱい揺れるし揉めるんじゃろうな?」

「まぁ、まぁ~揺れるだろw」

「触ってみたいのう~wグフフフwww」

「俺だからいいけど、女の子の前で言うとガチでセクハラで訴えられるぞ?」

「マスター殿、お主も揺れるのみて『ええのぅ~』とかいうじゃろ?」


「!!!」


「ゆ、ゆうかも…いや!思うかもしれない!だが!!口にはしないよ!!」

「本能と理性がまだ戦っておるんじゃな?わかるぞぉわかるぞぉ!!」

「振り切ったおっさんほどみそぼらしいものはないんだぞ?ソロモン?」


 俺はソロモンの手をはずそうとしたとき、ソロモンは自ら俺の肩から手を離し、数歩ほど歩きながら語った。


「若いな…、男は…水着のギャルをみて鼻の下を伸ばしても、ええんやで!!」



 ソロモンはキメ顔で親指を立ててこちらを振り向いた。


 ―――あーあ、こりゃやらかすぞ~絶対w


 無難にやり過ごしてほしいと思いは後程砕かれてしまう。


 ~モルパレ・海水浴場~


 ここの海水浴場で釣りをしたり、水の世界を味わうことができる場所だ。


 さっそく、パラソルを借りて場所を陣取る。

 オイルが売っていたので塗ってみた。


「これなんか意味あるのか?」

「おおう、あるぞぃ?幸運が一段階つくそうじゃ。」

「幸運?ドロップやクリティカルがでやすくなるのか?」

「まぁそんなところじゃろうて。っておい、見ろ!!」

 ソロモンが指差す。


 ご紹介しよう、オケアノスのヒロイン争奪戦の選手の入場だ。

 オケアノスの美女達がこちらを向いて歩いてくる。


 まずは、暫定王者からだ。


 クリスは相変わらずの爆乳で、ロリ巨乳ならぬ、“ロリ爆乳”である。

 職はヴァルキリー。イーリアスの世界観では天女の生まれ変わりだとされている。


 お次は、スカルド。スカルドは元PRUODのギルマスだ。お上品な言葉とは裏腹に機転の利くハイエルフだ。ハイエルフに昇格させるのも結構手間だと聞くが、それをこなしての精霊使い。どこのヌードビーチから引っ張ってきたのか、色白でナイスバディなねーちゃんにしか見えない。


 最後は、新進気鋭AI、女性型アンドロイド…になるのかな?童女の体型だ。ルカは、どこでその情報を拾ってきたのだろうか、なぜかお約束のスクール水着、そして浮き輪だ。


「うむ。完璧じゃな!!」


 また、ソロモンはキメ顔で親指を立てていた。


「おおう…」


 浜辺の男達とソロモンがいやらしい目線で見ているとは知らず、クリスは俺の手を引っ張ってくる。


「セイメイさん!せっかくですから泳ぎましょう!?」

「いや、いいよ!めんどくさいw」

「ええ!?年頃の女の子が誘っているんですよ??断るのって失礼じゃないですか!?」

「あーら、クリスさん。セイメイ様は私に日焼け止めを塗ってくださるんですのよ?」

「マスター、泳ぎ教えて。」


 珍しくルカがこのわけわからんバトルに加わっていた。

 乱れる乳を眺めていたが、あまりよろしくないと思い、止めに入り俺はとりあえずルカに泳ぎを教えるという名目で海に入ることにした。


 ちなみに、ソロモンはというと…


「ワシが塗ってやろうか?」

「いえ、大丈夫です。セイメイ様にお願いしたのですから。」


 と、あっさりと断られていた。


 ―――ソロモン、すまん。俺の代役は務まらんかったか…。



 ルカに泳ぎを教えると、コツを掴んだのか、すぐに泳げるようになっていた。クリスと二人で遊ぶようになったので、スキをみてソロモンのところにいく。すると、なにやら人だかりができていた。


 近づいてソロモンに話しかける。


「ど、どうした?ソロm…。」


 ソロモンはスイカ割りをするように近くのプレイヤー達に話しかけており、イベントを開いていた。



「さぁさぁスイカ割りじゃあ!!砂浜っていったら、ビーチバレーにビーチフラッグ、そして、疲れた身体をスイカで水分補給!!これって日本じゃ当たり前じゃろ?さぁよってらっしゃい!!」


 ―――スイカなんてどこで…。


 近くを見渡すとスイカ割り用のアイテムが売っていおり、ついでにバットも売っていたのだ。

 ―――値段が安い。すごく安い。けど、水分補給なんて必要ないのになんでだ??項目を読んでみると…、どうやら、スイカを食うとハッピーになれるらしい…。つまり、幸運が一時的に上がるのかw

 ていうか、イーリアスの開発は各国のリサーチを済ませていると聞いたが、スイカ割りいれちゃうの???


 戸惑っていると、歓声が聞こえてきた。


 ふと、ソロモンの方へ目をやると既に輪が出来ており、なぜか盛り上がっていた。

 理由は、ソロモンが看板を出していた。



 “一撃で割れば、5M相当をプレゼント!副賞として、セイメイとの勝負が出来る参加券付き”



 ―――おぃぃぃい!!!俺戦うのか???なんで勝手にやってんだよ!あのオッサン!!!


「おいおい、セイメイってアーモロト城主のマスターだよな?」

「こんなとこにきて、くだらねぇ事やるなんて、やっぱやることちげーなww」

「どしたの?」

「スイカを一撃で割るとオケアノスのマスターとの勝負が出来るんだとよ?」

「まじかよ!?」

「おもしろそうっ♡」


 ギャラリーの言葉が俺の耳に入ると、今更訂正も出来ずにソロリソロリと後ろを抜けていく。


 人だかりから離れたところで、これからどうするか思案を練っていると俺に声をかけてくる巨乳のポニーテールの女がいた。


「お兄さん☆いいことしない?」


 胸を当ててすり寄ってくる。


「結構です。」


 俺は腕を振りほどいた。ビッチな女は昔から苦手なのだ。


「え~ん。つれないわねぇ~!いいじゃない?少しくらい…ね?♡」


 というと、ふと腰から剣が表示され、刃を抜いてきた。



 陰流かげりゅう幡殺ばんさつ



 横一線に刀を抜き、最短距離での抜刀術


 思わず、避けたが、出血がひどい。

 精神統一のパッシブで多少回復しているものの、それでもダメージは入っている。

 道具袋を呼び出し、ポーションを漁り出して飲む。


「なんだてめー!!」

「あーら♪天下のセイメイ様も、防具を外したら案外やられるのね。」

「あ゛あ゛???」

「だって、本来、現実で鎧なんて普段は着てないでしょ?だから、これが本当の真剣勝負よ…♡」


 ―――先ほどの技は、上泉伊勢守・陰流の型だ。


「さて、セイメイ様。お覚悟を♡」


 瞬歩で近づいてくると一気に抜刀術を繰り出してくる。



 陰流かげりゅう朧車おぼろぐるまッッ!!!



 セイメイは致し方なく刀を呼び出し、相手のスキルを刀で相殺していくことになる。


 ポニテ女との野試合に巻き込まれるのであった。



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