第74話「激闘の末の返答」
肩を回し滅殫はユーグに話しかけてきた。その目は狩猟者の目をしていたという。絶対という言葉が適切な使い方をするとしたら今だろう。ユーグは己の背筋が凍ったというのを初めて知った瞬間だった。
2、3回軽くジャンプすると、瞬歩を使い距離を縮めてくる。
―――正拳突き!!
ユーグはガードの構えをしたときに、眼の前から滅殫が消えた。
―――!!?ヤツはどこだ!!??
「ここだよ…!」
ユーグは足元を見ると、回転足払いを放っていた。そのせいで足元が掬われガート体勢が一瞬崩れたそのときである。体勢を崩したユーグの胸のプレート部分を掴み、背負い投げをしてくる。宙に舞ったユーグは体勢を整えることなく甲板に叩きつけられた。大きな歓声が上がり、滅殫へのコールがかかる。
『滅っ殫!滅っ殫!!滅っ殫!!!滅っ殫!!!!』
滅殫はダウンアタックをしかけてくる。
投げ終わった体勢から甲板を突き抜けるような威力でユーグの腹を打ち抜いた。
ユーグはぐはっと嘔吐しそうな声で苦しい顔をする。
俺の頭を掴み、また大根を下ろすように容赦なく引きずり回し天高く投げ上げる。
「これで“しまい”だ!」
奥義:千手斬烈拳!!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!」
ユーグは空中でお手玉されるように空中で踊らされていた。
~母艦エスメラルダ・上甲板~
「あの技は…!!?」
ファウストは見覚えのある技を見て唇を噛んでいた。
「ほう!あの滅殫が奥義を出すとはな。本気でやるというのは嘘ではなかったようだなw」
プレミアは幹部と目を合わせながらにやりと笑う。
「親善試合だと?明らかなレベル差があるではないか!?」
「ファウスト殿、これはれっきとした親善試合だ。彼が承諾している以上、この試合は有効だ。」
「そこまでして、ギルドのメンツをアピールしたいか!!?」
詰め寄ろうとしたファウストに立ちはだかる衛兵がファウストの移動をとめる。
「どけ!!三下共がッッ!!」
ファウストは激しく激昂し、衛兵に至近距離で攻撃魔法を打ち込もうとしていた。
「まぁ熱くなる出ない。ほれ、まだ死んではおらん。運も良いのかアイツはw」
プレミアは不敵に微笑みながらサークルを眺めていた。
~母艦エスメラルダ・甲板~
空中からやっと降りてこれたユーグは身体を起こすように身体に指示を送っている。だが、反応が頗る弱まっているのを肌で感じていた。
ようやく動くかというときにトドメの一撃を打とうとしていた。
「さすがプレミアさんが狙った新人だ!こいつぁ!本当のバケモノになるかもな!!」
そういうと高く飛び跳ねて空中で回転すると一気に急降下し、カカト落としを狙ってきた。
「お前とやりあえたことに感謝するぜ!!」
ユーグは寝返りをし、間一髪でよけた。
フラフラになりながらも、レーヴァティンを前にだし、防御体勢を取る。
「フハハハハ!!!ここまでくると往生際が悪いぜ!?新人!!!」
頭をかきながら苛立った滅殫はドラゴンフレイムを打とうとしてきた。
―――まってたぜ!そのスキルを!
黒い霧を使い、ダメージ減少を伴い回避しつつ、背中を斬り上げる。
―――なん…だと?!!
暗黒物質!!!
剣を後ろに構え、片手で暗黒魔法を出す。ピンボール玉ぐらいの大きさで、球を剣で打ち上げて滅殫に目掛けて一直線に向かう。球は野球ボールほどの大きさになり、滅殫の背中を浮かし滞空時間を稼ぐ。即出しスキルのため、威力は落ちるが時間を稼ぐには十分だった。
「こんなところでやられるかよ…!」
空中で体勢を整えた滅殫は拳に雷を纏いユーグに向かってたたきつけようとしている。
雷神の怒りよ!!我が拳に雷鳴の力をッッ!!!
霹靂!雷鳴拳ッッッ!!!
ユーグはレーヴァテインを胸に掲げる。
―――宵闇の王よ、我が剣に力を与えよ!さすれば新たな闇を与えん…!!
喰らえ!!破壊の闇!!!
下段の構えから、渾身の力で斬り上げる!!
互いの攻撃の均衡が存在すれば、相殺され前回のようにお互い吹き飛ぶのだが、オーラアタックと必殺技スキルでは均衡は存在せず、オーラアタックに軍配が上がるようになっている。
しかし、激しいぶつかり合いが発生している。簡単にいえば、雷と暗黒魔法のぶつかりである。雷は刀剣に纏っている黒い雷と激しくぶつかっている。攻撃の威力はユーグに分があるにしろ、上位職のスキルであるため力技で押し切った。
「負けるかよぉォォォォォ!!!」
……ドゴォォォォォォーーーーーーン!!
激しい爆音とともに、爆風が発生し煙が消えかかるころに人影があった。
膝をついてレーヴァティンの杖のようにし、ボロボロになり、鎧の耐久度はほぼない状態で、小突けば死亡するような瀕死の状態で辛うじて生きていた。
かたわらには、滅殫がボーっとたっていた。
「ま、まじかよ…。俺の負け…か…。」
ユーグは滅殫の背中を見ていた。
「完敗だ…。マスター…この世界って広い…っすね…」
ズザザ…。ノイズが走り…死亡フラグが立つようになっている。
―――だめだ…。動かない、。火傷のCCで終わる…。そうだ…死んでいるときは周りの景色は白黒になってただ起こされるのを待つか、町に転送するか選ぶ画面が強制的に出るんだった。この画面、嫌いなんだよな…。でも俺にはまだお似合いだな…。
滅殫は立っている…いや、立っていられたのは、彼の矜持によるものだ。
しかし彼もユーグの攻撃を受けた際の出血のCCでHPが瀕死である。
―――こんなやつが新人だと?プレミアの人物眼はすげーや…。今の新人はこんなやつらばっかなのか?古参もうかうかしてられんな…。俺の指はもう動かない…足も動かんか。もっと強くならなきゃいけないのに…な。
滅殫はそのまま倒れてしまった。
プレミアが立ち上がり、叫ぶ。
「おい、審判!確認しろ!」
「……ユーグ戦闘不能!」
つづいて、滅殫をみる
「滅殫!」
一同が固唾を飲む
「戦闘不能!!」
甲板は動揺の声が上がる。
「よって、死亡ログの確認をとります!!」
システムを開き、どっちが先に戦闘不能になったか、記録に残っているため、時間を遡る。
これはその場にいれば誰でも確認ができるため、非常に公平な判断である。
・
・
・
ユーグ x月x日 0:35:08.296 戦闘不能
滅殫 x月x日 0:35:10.023 戦闘不能
『試合終了!!勝者!!!滅殫!!!』
甲板はわれんばかりの歓声と滅殫のコールがかかっている。
『救護班!聖水を両者に!!』
控えにいたマグナカルタのギルメン達が二人を起こしにかかる。
「どけ!」
ファウストは衛兵を突き放し、ユーグの元へ駆け寄る。
救護班に担がれて気がついたユーグはファウストの顔をみて、驚いたと同時に安堵の表情を浮かべた。
「あ、ファウストさん…なんでここに?…あー俺負けちまったんか…。悔しいなぁ…。」
「ああ、大丈夫だ。君が活躍していたを俺の脳裏に焼きついている。がんばったな!今全回復させてやる!!」
ポーションと併用し回復魔法を唱えた。HPは全回復をしたが、鎧などの耐久度までは回復しない。
ふと滅殫がこちらに近づいてきた。
滅殫も全回復しているが、お互いの鎧や武器はボロボロだ。すると手を出してきた。
「久しぶりにこんなに熱くなったぜ。新人!」
俺はボロボロになった滅殫の手をみて、素直に握手を喜んで交わした。
「戦闘中とはいえ、失礼なことをいいました。すいません。」
「気にすることはない。少なくともこんなアウェイの状態でよくここまで健闘したと思う。むしろ、それくらいの気迫と挑発をして、自分を追い込んでいく君のすごさに敬服するよ。また装備差もレベル差も考慮しても、君の立ち回りとプレイヤースキルは文句なしの第一線で活躍できるものだ。自信をもて。」
「自分は必死に使っていただけです。この魔剣だってまだ使いこなせていないです。」
「それでか??まじかよwまったく最近の新規勢はバケモノが多い。俺みたいな古参の肩身が狭くなる。困ったもんだぜ。」
「今回は負けは負けです。また強くなったらお願いできますか?」
「ああ、いいけど次も負ける気もないぞ?」
「はい!ありがとうございました。」
「さて、どうやってここから移動するかな?」
「え?」
―ギルドVCオンに戻せ!
―はい!
慌てて設定を戻す
「さっきまでVCできたのはなんでですか?」
「一般回線だったからだ。ここからはこっちの回線で話するぞ。」
「あ、ユーグてめー!!」
いつものようにユーグにお説教をしかけようとすると、
「ピピン!説教は後だ。マグナカルタのプレミアはユーグをヘッドハンティングをしている。」
「はぁ?なんでだよ?」
「知らん!とりあえず、ガレオン船に戻る!」
「その俺らの船とそっちはもうそろそろ離れてしまうぞ?」
「どうして…だ?」
回線が限界に来ていることをやっと理解した。
「そっちのほうが早いからだよ!」
ガレオン船に乗っているメンバーは皆、船首ぎりぎりに立っていた。
「ちょっとまって。ユーグ君はどうしたいの??」
唯華がユーグに尋ねた。
一瞬、VCがシーンとなったが、ユーグが迷うことなくいう。
「なにいっているんですか?こんな山あり谷ありで変化に富んだギルド、抜けるわけないじゃないですか!!俺の居場所は…みんなと共にあります!!」
それを聞いた一行は安堵した。
ファウストはにやっと笑い、さぁ戻ろう。と声をかけた。
ファウストとユーグは上甲板のプレミアの前までいくと話を始めた。
「すまんが、ユーグはそちらに渡すことはできない。」
「フフ…。ではここから抜け出せると??」
「さぁどうかな?」
ファウストは困り顔をした。
衛兵がファウストとユーグを取り囲む
「穏やかじゃないな?プレミア!?」
「そうね?お祭りはまだ終わらせたくないみたいね?」
副マスターが前に出てくる。
「抜剣!!捕らえよ!!逃すな!!」
いっせいに攻撃をしかける。
「ちょっとまったぁ!!」
その声と共に現れたのは滅殫が立ちはだかった。無数の剣が滅殫の手甲を刻む。しかし、ダメージは受けてないようだ。
「早くいけ!!ここは俺が治める!」
「ありがとう!!」ファウストはガレオン船が見れる位置まで船尾まで走る。ファウストは俺の肩を掴み移動魔法を唱えた。
~ガレオン船~
船首にギリギリ移動したが、移動魔法の距離限界なため、着地がうまくいかなかった。
ユーグはピピンの上に尻餅をつき、ファウストはくずれながら、唯華に抱きついた。
「てめーー!!このピピン様を下敷きにするとはどういうことだっ!!」
「すいません!すいません!ファウストさんがミスるなんて思ってなかったので!!」
二人はファウストを見ると、唯華の胸の中で目を回していた。
『あっ』唯華以外は声を合わせた。
「こんっっっの!!!むっつりメガネッッ!!!!」
ガレオン船に甲高い音が響き渡った。
ガレオン船からはグラース港が見えていた。
日は落ち、月明かりが航路を安全に指し示していた。





