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第68話「善良な悪」

JOKERは大剣を俺の額をめがけて寸分の狂いもなく最短距離で振り下ろしてくる。

―――クソッ!POTの供給が間に合うか!!??左手が道具袋に…手が伸びろ!!!


無音で俺の心臓を突き刺す恐怖が一瞬突き抜けた。


! !?



体勢を崩している俺に救いの射手が現れた。


ライジングアロー!!!!!!!!!!


「ピピンさん…」

「やはり現れたなッ!!JOKERァァーー!!!」


矢はJOKERの肩を射抜き、硬直のCCを入れていた。


「今回は逃げるなよ!!!キサマッッ!!!!」

「逃げるも何も一騎打ちに水を差すなど、言語道断、キサマが入る余地などないだろうに。」

「あるね!大アリだ、こっちは当時の商売あがったりだ。」

「姑息な野党風情がッ!人間の言葉をしゃべるな!!」


JOKERは構えを攻防一体の構えに戻す。


「くくく…、仕様に文句いうやつが、完全にブーメランだぜ?」


ピピンの弓はキリキリと音を立てて第二射の準備は出来ていた。


「おいユーグ、このピピン様が支援するッ!!コイツを倒すぞッ!!!逃げだされないようにCCスキルを回して止める!その間にヤれ!!」

「まってくれ…ピピンさん。」

ユーグはピピンに支援攻撃を拒否した。


「これは俺の…俺らの戦いだ。手出しはしないでくれ。」

「バッ…!!な、なに言ってやがる!!コイツは全プレイヤーの敵だぞ?飼い馬殺し・狩場荒らしその他もろもろあるんだぞ!!」

「わかっている!わかっているんですよ!!そんなことは!!」

「なら、コイツに慈悲なんぞいらん!!」


改めてピピンは弦を引く


しかし、ユーグはピピンの射線上に入り、攻撃を遮断する。


「フフフ、哀れな仲間を持ったな亜人の射手よ。」

「どけ!!ユーグ!!こいつぁカルディアと俺の戦いなんだよッ!!」

「だめです!!今は俺が!!!相手だ!!!」


二人で揉めている最中、JOKERは一気に距離を詰めてきた。


「フハハハハ!!!!」


ピピンは利き腕にダメージを負った。


「こんのッヤローーーッッ!!」


反対側の腕で仕込み矢をさらに打ち込んだ。


片腕で痺れ矢を打つとJOKERの首を翳めたが下地の鎖帷子に阻まれてダメージを負ってない。

大剣をピピンに打ち込もうとするとユーグがピピンを庇う。


「下がれ!!ピピン!!こいつわぁ…!!この人はぁ!!!俺の相手だ!!!」


ピピンは黙って下がる。


「ユーグ…いいか、ソイツわぁな!!俺らプレイヤーの敵なんだよ!!わからねーわけねーよな!!??」


「わかってますよ!」


―――こいつは、が正義だと認知している。奴にはヤツの正義がある。

俺には俺の正義はあるのか?ただ漠然としたやっすい正義感プライドで剣を交えているのか…?

それに比べたら俺はヤツの信念に勝てる剣を…俺は有していない!!


「さて…オ前ト話ス事ハ無イ。我ガ剣ノ錆トナレ!!!」


JOKERの口調が変わり攻撃を繰り出す。


堕天使ルーシファル神殺ゴッド・ブレイクし!!


剣を上段に構え、振り下ろす。


ガードゲージは一桁にまで落ちる。


―――こんなんで、次の攻撃を受けるわけにはいかない。耐久度もかなり落ちた。クソッ!!…マスター!俺に知恵をくれ…!!


なんとか距離を取る


「逃ゲテモ無駄ダ…!!」


JOKERの剣筋は左切上を入力している。


―――ここしかない!!


魔法剣を出し、ソードジャンパーを使う


「馬鹿メ!!貴様ノ攻撃パターンハ読メテイル!!」


コレデオワリダ…!


暗黒物質ダークマター!!!


剣を後ろに構え、片手で黒い魔法を出す。


野球の球ぐらいの大きさにすると、球を剣で打ち上げてユーグ目掛けて一直線に向かう

球はバランスボールほどの大きさになり、ユーグに当たる。


「あんのばか…」

ピピンは目線を思わず反らした



しかし、ユーグの身体は球体をすり抜ける。



「!!」


「喰らえ!!」


ダーク暗黒ブリンガーァァァ!!!


ユーグは十字にしていた片腕を両手に持ち替えて、一気に振り下ろす!!!

レーヴァティンは開眼し威力を上げる

ピュィィィーーーーン!!!


振り下ろした剣は兜を割り、鎧を引き裂いた。


「はぁはぁはぁ…」


ユーグは持久力を使い切っている。

―――これで相手に体力があって反撃があれば俺は勝てない!


よろよろになりながら、レーヴァティンを構える


JOKERは膝をつく



「ユーグ!!!トドメさせ!!!」


俺は首を横に振った。


「こいつは…JOKERはダークブリンガーの出血CCで死ぬ。」


全体チャットのシステムにJOKERの討伐アナウンスが流れる


【 ユーグ が JOKER を 返討!! 】


全体チャットが揺れた

――――――――――――――――――――――――――――――――――

yamashita73:みんなおやすみ~!

ゆるゆるぬこ:そういえば、今みんなこんな遅くまで起きて明日大丈夫??

       ニートはかんけーねーかwwww

【 ユーグ が JOKER を 返討!! 】

こもちゃ:まじで?

黒猫R :JOKERが地面を舐める日がきたか!

ガンジン:やっはーwwざまぁwwwwww

KOKUN02 :イーリアスに平和が訪れたのだった…!

アルミニウム三世:だから言っただろ!大富豪の逆転はスペードの3は取っ

         ておけって!!

五右エ門chan:対抗策としてのJOKER殺しだなww

      ・

      ・

      ・

――――――――――――――――――――――――――――――――――


JOKERへの誹謗中傷の羅列や感動のコメントが全体チャットに並ぶ

それと同時にユーグへの賛美が連なるが、ユーグにとってどうでもよかった。


「ユーグ…やったな!またお前、強くなっちまったんだな!!!」

「……。」


JOKERの死体を起こし、“大いなる聖水”を与えた。


※効果は第2話「白夜行」を参照


「お、おい!!ユーグ!!血迷ったのか!?」


息を吹き返したJOKERは俺から離れて大剣を構えた。

俺はすくっと立上り一応、剣を構えた。

「俺はあんたと五分の戦いをした。それで満足いかないのか?」

「フン、今ノオマエガ俺ニ勝テタノハ、計算違イダ!」

「いや、俺は横やり…いや、“横矢”が入らなければ、とっくにあんたに負けてた。」

「…ナゼダ…ナラバ、モウ一戦、ヤレバ決着ガ着クダロ…」


俺はレーヴァティンを降ろした。


「俺はアンタと戦う事はしたくないし、今度は勝てる気がしない。それに、あんたが大好きで始めたイーリアスがこれ以上つまらないものにしたくないからだよ。」

「…ナメラレタモノダナ…」


JOKERは目を細めて言う


「ああ、それと安心してほしい。暗黒騎士の強さは魅力的だ。俺も調整が入るまでこの事は伏せておこうw占領戦も近い。アドバンテージは多い方が有利だからね。どっちにしろ、“JOKER殺し”のレッテルは剥がれそうにないしなw」


苦笑いをしながら、JOKERを見つめる。


JOKERも剣を降ろした。


「それでお前は俺をどうするつもりだ?」

「えーどうもしないよ。また好きにすればいいさ。ただ、これ以上は俺は白旗あげているんだ。このまま見逃してくれ。そこにいる亜人のアーチャーもね。」

「フン、お前が俺を見逃すとはな、甘いヤツだ。」

「甘くても渋くても辛くてもいいよ。次しかけてくれば、それを跳ね返すか、黙ってやられて街に戻るだけだよw」

「まぁ…いい。次回は負けん。」

「いや俺が負けるからwwアンタは紛れもなく最強の暗黒騎士JOKERだよ。」

「フン…。」


俺は帰り道を見つけて踵を返した。ピピンは後ろをみてJOKERを見ていた。それにユーグは気づくと

ピピンに無用だと手を振った。


「後ろから襲うような人じゃないのは俺はわかっている。礼儀を知らない人じゃないって、少なくとも俺は知っている。」


静かに俺とピピンはポートウィル軍港のセーフティゾーンまで歩いてこれた。


~ポートウィル軍港~


JOKERはきっとあの場で今日はログアウトしたのだろう。

気配も何も感じない。それを裏付けるのは剣を交えた人間にしかわからないと思う。


「ところで、ユーグ。なぜ空中へ逃げたんだ?」

「マスターに助けを求めたんだよw心の中でw」

「うわw気持ち悪wBLかよwww」

「ち、ちがいますよ!!困ったときはあの人に頼ってましたから何かヒントくれるかなってw」

「ほーんwそれで、マスターを思い出したのか。」

「そしたら、ランスロット戦で使ったソードジャンパーを思い出したんですw」

「じゃあ、あの“だーくまたー”っていうスキルはどうやって防いだんだ?」

「あれは“黒い霧”です。魔法攻撃扱いの攻撃なので、暗黒騎士じゃないと理解できなったと思いますよ?」

「ああーそうか、情報元ソースがなかったからなぁ。」

「そうです。JOKERも同職対決は昔あったでしょうけど、今は俺しかいませんからねw」

「それで五分の勝負が出来たわけか。」

「んー正直、賭けでした。勝てる気なんてJOKERの返討判定が出るまで思ってませんでしたよ。」

「なるほど、いつもの無我夢中でやってたら、知らない間に勝利してたってことか。」

「ええ、そういうことになりますねw」


ポートウィル軍港を歩いていると、見知らぬ冒険者に出会った。

「君がユーグ君かい?」

「ええ、そうですけど?」

「すごいね!!JOKERに勝つなんて!!聖騎士なんだろ??」

「ああ、違いますよw暗黒騎士ですw」

「え?あのランスロットを倒したのかい??」

「ええまぁw」

「こ、攻略を教えてくださいよ!!!」

「それはw秘密ですよw」

「ええー!!?」

「大丈夫ですよ。最弱の僕でもできたんです。あなたに出来ない事はない。応援してます。」

「おおうwじゃあ、頑張って攻略するよ!」

「はい!!頑張って下さい!!!!」


ユーグは手を振り街角を曲がるまで手を振り続けていた。


「それにしてもあいつを倒すなんてな。お前の急成長ぶりには頭が下がるぜ??」

ため息交じりにピピンは嘆いていた。

「そ、そんないい方しないでくださいよぉw」

「やめろ!触るな!!気持ち悪い!!」

しゅん…

「ま、まぁ??おまえにしてはよくやったと思うぞ??ほめて遣わす!!」

「でしょ?やっぱあれだよな~。カルディアさんとピピンさんのおかげですよ~!」

ゴマをすった。それを見抜いたピピンは悪そうな顔をする。

「そうじゃろ!?そうじゃろ!?感謝せぃ!!」

背中を叩いて笑っていた。


「じゃあ、俺も落ちる。これ以上出歩くなよ。めんどくさくなりそうだから。」

「はい。俺もつかれたんで落ちますよ。」

「そうか、JOKER殺し…か、やっぱ“スペ3”は大事だよな?ははは!おやすみ~!」


スペードの3か…


通常は最弱のカードだけど、JOKER殺しにのみ有効カードだ。

林間学校で始めてやったけど面白かったな~。今でもゼミの合宿でもやったしな。

スノボー行くときに友達とやるかな?


ユーグはログアウトしながら来る冬の到来を待ち望んでいた。


部屋に戻ると窓を叩く音が聞こえてくる。ふと外を見ると木の葉が踊り、冬の到来を伝えにきていた。

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