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第65話「スポットライト」

ドゴォーーン!!!


轟音を響かせた邪神王ユリゼンの魔法は降り始めた雨などものともせず、むしろ蒸発させるかのような熱気を帯び起たせ、辺り一面を湯気で覆いつくす。


「おいおいおい!雨で火の継続CCは半減するのはわかるが、科学的な結果をもたらすシステムでも組み込まれたのか?」


パラついた雨程度であれば、熱によって蒸発し気体が蒸気に変わる。この蒸気が霧や靄となり、視界を遮るのだ。


「むう…見えない。これは参ったね。」


ファウストは無詠唱する。


エレメンタル魔法:出血ハーモラジック突風ガスト!!


漂っていた靄はファウストを中心に円形に吹き飛ばした。


「本来はこのような使い方をするものではないが、視界を奪われては不利だ。」

「ありがとうです、ファウストさん。味方の位置がわかるだけでも、全然違いますね。この魔法はなんなんです??」

「え?あぁ…“かまいたち”みたいなものだよ。範囲内の敵を風の力で斬る魔法だよ。そんなことより、ユーグ君。ラスボスだ。手立てはあるのかい?」

「そうですね…。あるっちゃぁあるし、ないっちゃぁないですw」

「なんだよ、それはw」


ヒューー……ィンン…----ドン!!


会話を遮る様に、火の玉が降ってきた。


「ったく、こちらに時間を与えないつもりか。」

「いえ、先ほどファウストさんの放った魔法で僕らの居場所が逆にわかったので、攻撃をしかけてくるんです。生憎、向こうはまだ視界が明瞭ではないので、命中しなかっただけかもしれません。」

「これだから、ボスキャラというのは厄介な存在だ。」


「男同士のおしゃべりは終わったのか?」


カルディアがイライラしながら、こちらに近づいてきた。


「すいません、カルディアさん。」

「ああ?謝っている暇があるなら、視界をどうにかしてほしいものだな。」

「では、僕が前に出ようか?」

「魔法職が前に出てどうするんだよ。」

「さっきのハーモラジックガストを放ちながら視界を開放しながら前にでれば、ユリゼンの足元に出ます。そうすれば、五分の戦いにはなると思うけど?」

「フン、たまにはいい事いうじゃねーか。やってみな。」

「では、いくよ。足元に出たら僕は下がるから、お二人で善戦してくださいな♪」

「これだから魔法職は…!」

「ファウストさん…。」

「大丈夫だよ。ユーグ君。魔法職は特大魔法ってのがあるんだよ。その詠唱時間を貰うだけだ。」

「わかりました。出来る限り、敵をひきつけます。」

「バカかお前は。暗黒騎士なんだから、ダメージとってこい。」

「あ、ハイ…」

「ダメ計算したんだけど、ユーグ君の数値がわからない為、計算できないけど参考数値を越えればいい。要は自動回復値を上回ればいい。」

「単純にいえばそうですね。」

「あとはパターン化させて、徐々に回していく。それだけだ。」

「ピピン、唯華さん。彼らの援護を頼んだよ。」

「ファウストに言われなくても、援護射撃は打っていくよ。」

「おこちゃまのお守りか…。まぁさっさと終わらせて報酬頂きましょうかね。」


アハハ…


俺は少し苦笑いをしたが、自然とファウストさんの指揮に乗っかる形になった。


―――そうか、やはりファウストさんへの信頼があるからカルディアさんも、ピピンさんも唯華さんも背中を預けて前に出れるんだ。


「じゃあいくよ。離れないようにね。」


ファウストは、無詠唱で走り抜ける様に魔法を乱発する。


出血ハーモラジック突風ガスト!!


出血ハーモラジック突風ガスト!!


出血ハーモラジック突風ガスト!!


出血ハーモラジック突風ガスト!!


靄を薙ぎ払って前に進む。


そして、ついに邪神王ユリゼンの足元にたどり着いたのだった。


「さぁあとはよろしく~♪」


素早く後方に下がる際、ユーグをちらっと見てウィンクをして下がっていった。

それをみたピピンはうぇと引いていた。


「うわっ…気持ちわりぃ…。あいつ、ホ〇なんじゃねーか?」

「そうね。ネトゲやっている人って案外多いのよね~。」

「やめてくださいよ!一応、彼女いるんですよっ!」

『は??死ね!!リア充!!』

二人はユーグの背中を蹴って捨て台詞を吐いた。


「ははは!ユーグ!彼女いたんか!?」

カルディアは高笑いしながら話しかけた。

「いちゃだめですか?」

「いやいていいんだけどさwどうせ振り回されているんだろ?」

「うっ…な、なんでわかるんですか!?」

俺は少し焦った。

「大体な、女に振り回されているようじゃ、いずれお前よりいい男が現れたらさっさと捨てられるのがオチだぞ?今のうち別れておけ。傷は浅い方がいいwww」

「カルディアさんよりは我儘じゃなくおしとやかですよ…。」

「はぁ?お前知らねーの?これだから田舎モンはと馬鹿にされるんだぞ?清楚ビッチっていうのが古今多いんだよ。女とはそういう生き物だ。理解しとけ。」

「くっ…。」

「まあ、お前のプライベートの話はこれくらいにしとこう。俺が先に出る。その際に闇魔法でも撃っておけ。いくぞ。」

「はい!!」

ムカムカした胸やけを振り払うようにダークマターを放つ。


汝、暗黒の母胎より生まれし力よ、我に預けよ。


喰らえ!!!暗黒ダーク物質マター!!!!!!


ユーグは剣を後ろに構え、片手で黒い魔法を出す。


野球の球ぐらいの大きさにすると、球を剣で打ち上げてユリゼンの方へ飛ばす。

「本来は一球入魂なんだけど、今回は千本ノックといくぞ!!!」


ウリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャァァァ!!!!!!!


「はぁ…はぁ…、俺もう限界…。」POTをガブ飲みしてMP回復していた。


ダークマターを乱打するとカルディアは同時に攻撃をしかける。


「さぁ偽神様にせがみさまよ。俺と遊ぼうぜ!!」


スラッシュアックスッッ!!!!


走る勢いを使って跳躍し、振り上げた斧を体全体を使って縦回転をかけてユリゼンに突撃する。


「とぉぉぉおおおりゃあああああああ!!!!!」


ユリゼンは結界バリアを張っておりダメージが入らない。


「なるほどなあ…。こりゃ魔法合戦になるわけだ!」

「な!だからいっただろ?僕は嘘ついてないぞ!」

と、少し遠くからファウストはカルディアに向けて叫んでいた。

「わかったよ!すまんな!」


―――こりゃやべーぞ。ユーグの魔法攻撃もMPとHP消費で回復したといっても、スタミナが持たない。ファウストの詠唱魔法待ちか…。


炎舞:千朱雀!


火の鳥が無数にユリゼンの身体に充てていくが、結界のせいで全てがほぼ無効化されている。


「おい、ピピン!オーラアタックいけるか?」

「そうくると思って、もう弓引いている!!!」


精霊より受け継ぎし、大樹の光よ!我が闇を払え!!!


ピピンの手と弓、そして矢が光り輝く!


ホーリーなる雷光ライトニング衝撃インパクト!!


雷光を纏った矢はユリゼンへ一直線に走り込み、幾多の結界を打ち抜いた。



「おっしゃあ!結界を壊したぞ!!」


「ユーグ!!今がチャンスだ!!」

「了解!」


ユーグはレーヴァテインを胸に掲げる。




宵闇の王よ、我が剣に力を与えよ!さすれば新たな闇を与えん…!!




喰らえ!! 破壊ダークオブデストラクション !!!


レーヴァティンの鍔にある目玉は大きく見開き、黒い光を放出し、刀身から黒いエネルギー体が大剣にひも状で絡みついている。絡みついたエネルギー体を振り払うような斬撃を放ち、エネルギー体はひも状から球体に変わり飲み込んだ。


―――あーあ、運営も規格外の大きなサイズで作ったから頭が少し出ちゃってるじゃん…



ユーグは肩に担いだ大剣を駆け込みながらその球体を真っ二つに裂いた。


!!!



「な、なんだ、と…!!!」



ユリゼンは真っ二つになっておらず、ただ叫び声を上げて硬直していた。

誰もが愕然としたとき、ある男が声を上げる。


キラーン


メガネを輝かせたファウストが不敵な笑みを浮かべる。


「…FAはもらっちゃうよ?ユーグ君。」


闇より出でて齎す暗黒の災厄よ!我が呪怨を受け取れ!!!


両手を前にだし、指で魔法陣を描きそこに指をクロスさせ、「ハッ!!」と声をかける。


究極奥義魔法:禁忌   燃盛ブレイジング厄災ディサスター世界デイオブ終焉ジャッジメント!!!!


「あのバカ!!あれ使うんだったら、もっと早くいえ!!!おい!!みんな!!!下がれ!!!」

カルディアはピピンを抱えて廃墟の壁の裏に隠れ、ユーグと唯華は街角の壁に隠れた。

「みんな!!目をつむれ!!エフェクトでやられるぞ!!!」


エフェクトと時間差で音が響き渡る。


好奇心が邪魔をして、片目を薄目で開けていると、光り輝いていて、ファウストは両手を前に出した状態で爆風をもろともせず、魔力を費やしていた。



…。………。




ポンポン


肩を叩かれた俺は、何が起きたのかわからない。


「…、終わったよ?ユーグ君、君のクエストなのにFAもらっちゃたよ?ごめんね☆彡」

「あの…ユリゼンは??」

「あ~、あの魔法で倒しちゃったよ?結界があったら、もう一回打ち込むしかなかったけど♪」

「うわ~、まじかよ…。」


辺りを見渡すと、何事もなかったように静けさだけが残っていた。それに、燃え移った炎は雨のおかげもあり鎮火しつつ、木材はプスプスと燻っていた。



だけど、雨が降っていない。


空を見上げると、雨雲に大きな円がぽっかり開いており、ここだけ雨が降っていなかったのだ。

天空にはいつもの綺麗な星の瞬きが俺の眼に降り注いでいた。


「あー、実はさ、この魔法使うと天候も消し飛んじゃうんだよね~。しかも、占領戦や拠点戦で使うと、敵味方関係なく、キル出来ちゃって引き分けになる要素が盛りだくさんだからさ、こういうときぐらいしか使えんのよね~。」


物陰に隠れていたカルディアはファウストに近づき、ぶち切れてた。

だが、結果はクエストはクリアしたわけだからあまりむげに言えず、文句だけいっていた。



月の輝きが俺らの勝利を祝福するかのように、空に開いた隙間からスポットライト浴びせてくれた。

俺らは次なるプログラム、カーテンコールを行うだけとなっていた。


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