第52話「創造と想像」
「でぇえええい!!!」
カルディアは勢い良く大斧を振りかぶって振り下ろす。
ピシーン!!
オオカブトガニの甲羅はびくともしない。
IMMUNE
攻撃判定はダメージが減っているかどうかすらわからないレベルだった。
「おい!!コイツ!!固くねーか??」
カルディアは少し下がり様子を見る。するとあることに気づいた。
「あ、こいつ脱皮しかかっている…!!」とカルディアは少し戸惑っていた。
「脱皮中ってことは、脱皮後はまだ柔らかい!いけるはずだ!ユーグ一斉にやるぞ!!」とカルディアは意気揚々と構えていた。
が、ファウストがカルディアの前に出ていう。
「待ってください!この文献を調べたのですが、オオカブトガニの素材で作る鎧兜はグレードが上がる。とある。素材集めとして、討伐するならわかるけど、この脱皮はすぐに剥ぎ取って塩水につけなければならない。」システム上にある図鑑を開き、みんなにも開いて読むように促す。
「で!?どれくらい使えるんだよ?」カルディアがファウストに当たる様にいう。
「君の大斧がダメージ通らないくらい硬いってことは、防御力が格段に上がるというだよ。」
「フン、で素材取るにしてもこいつを倒さなきゃ、目的の港にもつかないし、立ち往生するだけだぞ?」
「ああ、そうだな。だが、今読んでいる感じだと、オオカブトガニを倒したところで、ドロップはそこまでおいしくない。ということはなんでこんなにR枠指定なんだ?」
俺は脱皮しかかった部分を触ると途轍もない硬さを感じた。
「お、おい!ファウストさん!ここ!!ここ触ってみて!!めっちゃ硬い!」
ファウストは恐る恐る触った。
「こ、こいつは固い!もしかしたら、とても貴重な体験をしていて、レア素材というのはこの皮のことを指すんじゃないか?」
「まさかね…。でももしそうなら、すごくないですか?」
「ああ、ぼくもそう思う。このような場面に出くわすなんて想像つかなかった。」
「じゃあこれ一体でどれくらいつくれるんだ?」
「一人分じゃあないのか?余っても大金には間違いない。」
「しょうがないわね。相場見てあげるわ。」と唯華が取引所の情報を漁った。
「これを加工錬成したとき、どうなるのかな?」と俺は少しドキドキした。
「ふむ、素材を加工し鎧兜などの形にするには、どうやら鍛冶屋の力が必要だ。この素材をアイテム化するしかないなぁ。」
オオカブトガニは脱皮に少し遅れているようだ。
俺は近づき、脱皮を助けるようにオオカブトガニの皮を引いた。
「すいません。みなさん手伝ってもらえますか?」
「カー!もうめんどくせーなぁ!」といいつつ、カルディアも一緒に引いた。
カブトガニは頭の方から脱皮し、尾剣が最後にするんと抜けるのだが、どうも足の部分でひっかかっているようだ。
みんなで尾剣を持ち、引いてみた。
しばらく引いているとゆっくりと抜けていき、新しいカブトが見えてきて、やがて完全に抜けた。
「ふぅ!やっと抜けた。」オオカブトガニは俺らに礼をいうことなく海へ帰っていった。
辺りを見渡すと他のオオカブトガニはどうも小さいオオカブトガニを後ろにつけている。
「親子なのかね?甘えん坊さんなのね!」と唯華が微笑ましい表情をみせていた。
そこにファウストは現実をつきつける。
「あれは夫婦だよ。交尾しているんだよ。」
「ええ!!??そうなの!!??」と唯華は驚いていた。
ファウストは続けて言う。
「古来、漁で夫婦つがいが水揚げされると豊漁となる言い伝えが存在している。神棚に酒を供えて祝う風習があったとされている縁起物だ。」
「さ、さすがにこれは棚にあがらないわよね…。」
「まぁ…みれただけでも、旅を暗示しているという事にしましょうか。」と苦笑いしていた。
俺はこの抜け殻をどうするか相談した。
「これどうしますか?」とファウストに尋ねた。
「そうですね。これは一旦、グラース港にある鍛冶屋で加工し、素材しましょうか。そして、ユーグ君とカルディアの鎧の強度に加えてよろしいのでは?」
「そうですね。自分の鎧は少し脆弱ですので、強度というより、加工して鎧にしようかなって思っています。」
「ふむ。少し待っててね。」とファウストは調べを始めた。
そして、データを見せてくれた。
「悪くないね。モンスターの中でもレア枠で中々だ。シーサーペントもこいつは食べないらしい。うまくないからとか書いてあるけどw」
「なるほど。」
「最終的にはドラゴンの鱗だろうけど、そこまでにはまだ僕らは到達できていない。けど、それに近い硬度はある。採用してもいいんじゃないのかな?」
「そうですね、今の鎧とうまく掛け合わせて仕上げてみようと思います。」
「そうだね。騎士の鎧は[B+]だから[A+]にはあがるんじゃないかな?」
「まじで?すげー!!」
「うん。水耐性あるし悪くないね。」
「やったー!唯華さんも素材分けますよ!」
「あたしはいいや、なんだってカニの鎧をつけなきゃいけないのよ…。あたし、カニ嫌いなのよ…。」
といいながら、顔色が悪そうな感じがした。
―――この棘…使えるなぁ。
ピピンは手で撫でる様に見ていた。
「おい、ユーグ。この棘の部分もらっていいか?」
「ああ、そうですね。自分は甲羅?の大部分をもらう予定でしたのでいいですよ。」
「おう、じゃあ貰うわ。」
「なんだよ。俺らに任せていたのに、横取りか?」とカルディアはピピンに嫌味をいった。
「おまえに話してねーよ。黙れ。」と言い返した。
「この野郎!さっきから話聞いていれば!!」とつっかかる。
「ちょ、てめー!なにすんだよ!」と突き返した。
「まぁ!!まぁ!!落ち着いて!!!どうしたんすか!?二人とも!!」
「知るか!!こいつ!今日はハナにつくこと言い過ぎんだよ!」
「はぁ??いつものことだろうが!!」
といがみ合っている。
「落ち着いてよ。手伝ってもらう自分がいうのもなんですが、二人の力がないとランスロットだって倒せないんですよ!?」
「フン」といってお互いそれぞれの馬に跨り始めた。
「とにかく、今日はピピンさんもカルディアさんも虫の居所が悪いようなので、あまり話しない様に。こんなの俺から言わせないでくださいよ。」
「まあ、女の扱いがお上手なこと♪」と唯華は俺を揶揄った。
「ゆ・い・かさん!も!!」と諌めた。
「さぁいきましょう!アイテム化も済んだことですし、先を急ぎましょう!」
と俺はこの場を離れて気分を入れ替えてもらうためにも移動を急いだ。
河口近くの橋を渡り林道に入る。
ファウストからwisが入ってきた。
―どうも、今日はお互い何かあったようですね。
―先輩同士の揉め事に後輩ポジの自分が入って解決すると思えないんですよね。
―うむ。そうだな。どうも何かあったとしか言えない。
―まぁ、自分は静観するしかありませんからね…。
―そうだな…。あまりにもひどければ僕が入るから君はクエストの事だけ考えればいいから。
―はい。そうします。お手数おかけします。
―君が謝ることはない。あれは彼らの問題だ。
―はい、わかりました。
それから俺らはほどなくして、グラース港に到着した。
船の手配をして、北の魔女に会いにいく。
~グラース港~
元々この地域は海流による泥の堆積がひどかったため、きちんと埋め立て整備を行い、交易工業地帯を盛んにした街という背景があるようだ。街は碁盤目状になって風通しのよい直線的な街路にし、街が整備されているため交通渋滞があまり存在しない。街の中心街にはお役所が集中して建在しているため拠点としても人気の街でもある。また、主軸となる工業は造船・馬車の馬具・鍛冶屋といった産業革命の前夜といった風景で情緒あふれる風景がすごく懐かしく温かみがある。
カルディアと俺は港の船着き場にいき、手続きを終えると今回の本題。三人の王と北の魔女のシナリオだ。まずはMAPを見て、仕様を見てみる。
~アルビオン諸島~
アルビオン諸島、ケブネカイゼから西側に位置する諸島である。シナリオ上、四つの国家がいつも戦争していて統一が行われていない。アカウントによっては統一するクエスト完了があるので、人によってここの政治体型は変わる。北のアーソナ・南のユリゼン・東のルヴァ・西のサーマスという地名がある。
北にあるアーソナ。そこに北の魔女は住んでいのだが、陸路でいくことになるため、自分達はまず、南のユリゼン王国に向かい上陸することとなる。
ユリゼン王国は東のルヴァ公国から王女が嫁いでおり、同盟を結んでいる。
サーマス王国は離島に国を構えているので北と南が主に敵国に当たるが、なぜ現存ができているかというと、北のアーソナと南のユリゼン王国が激戦を繰り返しているため、離島までせめこまれていないという戦略的に地形による見えない壁で救われている。
では、北のアーソナはなぜユリゼン王国と戦っているのかというと、【この地(アルビオン諸島)の創造主は我々の神である。】という主張をしている。
それに異を唱えたのがユリゼン王国の民、今の王族の祖先が主張した。
ユリゼン王国の主張はこうだ。
【人類は男女の理に準じて我が子を授かる。アーソナの神はその元素をもっていない。いや、持っているのに錯乱している者が多い。理性を持たぬ者が創造主の子孫であるわけがない。】という主張である。これは、難しくてよくわかっていない。
おそらく、北は創造主を祀る宗教なのだろう。南は愛と出産の神であるといいたいのではないかと思われる。想像か創造か?第三者の自分はどっちも正しいし、どっちも同等であると思うのだが…。これをいってしまうと元も子もないので、考えさせるように仕向けてあるシナリオである。
ただ、ざっくりいうと、暗黒騎士と聖騎士という括りでこのシナリオは存在している側面を持つのは、武器でいうと非常にわかりやすい。北はグラムやレーバテインなどの魔剣を有する。南はエクスカリバー・アロンダイトといった聖剣を有する。
どっちが正しいとかどっちが間違っているとかではない。使い手に応じて魔剣が聖剣に、聖剣が魔剣に変わるだけの事だ。使い手に応じて光と闇は移り変わっていくのだ。
これらの背景を踏まえてシナリオを進めていく事となる。
自分は北のアーソナに住む北の魔女に会いにいくのだ。
魔剣レーバテインを持っているのにクラスチェンジをしていないのはランスロットを倒していないためだ。
グラース港での準備をしてアルビオン諸島へ向かう。それまでに装備の準備と鍛冶屋にいかなくてはならない。街を見渡して鍛冶屋を探すことにした。
太陽は西に陰りを見せていてヴァファール山脈の方へ沈んでいく。
山の向こうから落暉がこぼれやがて消えると、街は一気に夜の化粧へすり替わっていった。





