第19話「弓手横(後編)」
~コロッセオ・水上場~
コロッセオの水上戦闘を古代ローマでは宴の一興としてやったらしいんだけど、これ面白かったんかな?と思っていた。
今回は、あの那須与一で有名な屋島の戦いを模した戦いである。
屋島の戦いは、源平合戦の戦場の名称である。源氏が平氏を攻めて一進一退、両軍被害がひどく、休戦状態になったとき、平氏軍から美女の乗った小舟が現れ、竿の先の扇の的を射よと挑発され、それを紆余曲折あって、那須与一が射ることになり見事撃ち落とした。
その後、この戦いに余談は諸説言われているが、それはどこかで語れたら語ろう。
さて今回は3本の弓を使い、多く撃ち落とした数が競われる。
雰囲気を出すため、砂浜と海上の雰囲気をだす。
俺が結華に近づきいう。
「次はレディーファーストでいこうか?」
「あら?それただ単に先攻後攻入れ替えただけのコートチェンジみたいなものじゃないですか?」
「うっ…。いいんだよ!いちいち突っ込んでくるなっ!」と言いながら下がった。
―――可愛い人だな……。
さて、後半戦
船に乗ったアイオリアとスカルドがいる。
スカルドはなぜか着物を着ている。
「私、これ着てやってみたかったのよね~~!!」
と船上で盛り上がってる。
「くっ…。」これもしかして、このためだけに弓を選択したんじゃないか???
さて、先ほどの流鏑馬と違い、先攻は結華だ。
扇は竹のようなものを船首に垂直に指してあり、そこに扇をおいた。
結華は馬に跨り、馬が溺れる手前まで進む。
周りは静けさが残り、波打つ音が静かにこだまする。
はっっ!!!
一本目の矢はするすると扇に近づき、波の上下により、外した。
「あーん!惜しい!!」
―――あーん惜しいってあんた。これほぼ運だからね!!と心の中でツッコミを入れていた。
―――さて、次は俺か。
こんなんあたるわけねーだろーと思いながら、半分やけくそで準備につく。
俺も同じように馬が溺れないように近づく
そして、真剣な俺はスカルドが何かいってる!
「セイメイ様~~!!私のハートを射るのではなくて、扇ですよ~~!」と叫んでいる。
場内はゲラゲラと笑いが起きている。
―――このクソエルフ!!そんなことどうでもいいわ!!!!
気持ちを入れ替えて弦を引く。
波の高さの高低差をある程度、タイミングも考えていろいろ無駄な計算をしたが、タイミングで打つしかない。
「はぁ!!!!!!!!!!」
矢を放った。一直線に矢は扇に向かう。
しかし、矢はスカルドの頭上をかすめた。
「な、危ないじゃないですか!!!」と焦って叫ぶ!
俺は少しニヤッとして、
「危うくエルフの女王に惚れさせようとしてしまった!!!俺はどうやら罪深き異邦人だわ!!大変申し訳ない!!」といい、俺は後ろに下がった。
スカルドは、少し動揺した。
―――私を惚れさせようとしたですって!?
二本目
俺も結華も両方とも外し最後の三本目になった。
場内からはため息が漏れている。
三本目に入る時に、結華が近づき話をした。
「これが当たれば、あなたの負けですね。青龍偃月刀は取引所行きですよ?」
「まぁそれも仕方ない。だが、勝負に負けるのだけは嫌だな」
「じゃあ勝ってくださいね」
「あーでも俺が当ててもひきわけだよな?一点計算だろ?これ?」というと、
結華が3点でいこうといってきた。
すぐさま、主催者側に伝達し、これを了承した。
場内にアナウンスが入り、俺が逆転するか先に結華が落とすかの戦いになり、逃げ切る結華と追うセイメイの戦いはこれが最後となった。
三本目
場内は再び、静けさを保ち、波音だけが聞こえてくる。
まさにゴルフの“お静かに”の状態。
結華はタイミングを計り、矢を放つ。
矢は海と水平に飛び、矢は扇を刺した竹に当たり、扇は落ちた。
「うへ!まじかよ!!!!うわーー!!」と俺は叫び、負けを確信した。
おいそれと待ったがかかり、審議を始めた。
あんなの当たったのと一緒じゃん!!かーっ負けたかーと肩を落とした。
スカルドがアナウンスを始めた。
「今のを有効打にするか審議を始めた結果、セイメイ殿の最後の矢が残っているのでそれが当たるか外れるかで勝負が決まるとしたいです!!以上!!」というと、ブーイングかと思いきや、拍手が起こり、なぜか、俺のコールがかかる。
セ・イ・メイ!セ・イ・メイ!セ・イ・メイ!
どこまであいつらは俺にプレッシャーをかけてくるんだ。
俺、プレッシャーにつぶされちまうぞ!!!!!
泣いても笑っても最後だ。
この矢で決まる!!
俺は矢を水に濡らし、お祈りをした。無駄な足掻きだ、少しは付き合え!主催者&ギャラリー共!!
俺は天を仰ぎ、そして馬を海に沈ませる。
矢をみて、気休めのお祈りをした。
―――どうか、俺に力を与えてくれ。海の守り神よ!海流よ!!那須与一様よ!!!俺に力を貸してくれ。
オケアノスは我と共にある!!
祈りを終えた俺は何かを吹っ切るかのように弓をおもいっきり引いた。
波は静けさを与えてくれた。
―好機!!―
上下運動が少ない今なら、射抜ける!!そう信じて俺は張り詰めた弦をぱっと放した。
矢は一直線に扇に吸い込まれるように当たり、一もみ二もみして海にさっと落ちた。
その瞬間だけ俺は那須与一が舞い降りたと思った瞬間だった。
「あた~~~り~~~~~!!!!」と結華が叫んだ。
ギャラリーはわーっと盛り上がり花火は飛び交い、紙吹雪が舞い踊る。
俺は、うぉーーーーーーーー!!!!!
と、雄たけびをあげて両腕の拳を天に掲げた!
そして、礼儀に基づき、勝鬨をあげた。
エイ・エイ・オー!エイ・エイ・オー!エイ・エイ・オー!
と三回ほど言い、場内は割れんばかりの勝鬨が上がった。
結華が近づき俺を労った。
「いや~~~持ってますね!!天運はやはり持ってる人は持ってるんですよ!!」
「そんなことはない。たまたまだ。波の上下運動が収まってたから当たりやすくなっただけだよ。同じ条件だったら俺は完全に負けていた」
「そこまで言われると皮肉になっちゃいますよ。今は自分を褒めてください。負けました。そして、ありがとうございました。またどこかのタイミングで競いましょう!!」
「ははは。ありがとう!でも次やったら、こうはいかない。俺の負けは見えている。だから勝負しないよ!」
「あ、勝ち逃げだ!!ずるいぞ!!!!」
「ははは!勝ちに拘って何が悪い?!指揮官は勝ち戦してこその戦果だぞ?ははは!!」
授与式が盛大に執り行われて、俺は見事、青龍偃月刀を手にすることができた。
そこで、スカルドは頬にキスするモーションをとり、俺はあせった。
女神のキスというの表現するのとかずりーな!おい!!
「あーー!!」とクリスは俺とスカルドを離した。
俺は戦利品をもってコロッセオ出た。
もう一度、PROUDのギルドハウスに立ち寄り、スカルドと話をする。
むろん、クリスも同伴だ。すごい膨れている。
「いやぁ~。お見事でしたね」
「そんなことはない。運がたまたまよかっただけだよ」
「それも実力ですよ」
「まぁよく言う話だね。あ、そういえば、例の先陣の件、前向きお願いしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん。うちのギルドで先陣を切らせていただけるのであれば、伏兵探しも両面でいけますよ?」
「それはありがたい」
「ご存じないと思いますが、うちは女性が多い上に山岳兵に特化しているのはご存じ?」
「いやお恥ずかしながら存じませんでした」
「そう。うちは弓兵が多いので、突撃は不向きでも伏兵探しは得意なの。斥候向きっていうところかしら?」
「あーそうだったんですか!頭に入れておきます。」
「いいえ。それより今日はお疲れ様でした。今日はいい夢が見れそうです」
「あははは。ぜひ、見てください」
そこにクリスが割って入ってくる。
「くれぐれもセイメイさんの夢は見ないように!」
くぎを刺したが聞こえているのかいないのかわからない状態でスカルドはログアウトした。
俺は指令室で落ちようと思い、クリスを連れて戻った。
部屋に戻ると、クリスが話しかけてきた。
「ゲームとはいえ、ちゅーされて鼻の下伸ばすなんてセイメイさんはヘンタイです」
「おいおいおい!俺がしたんじゃない!スカルドにいえよ!」
「だめです!セイメイさんの貞操は私の範囲です!!!」
「……おまえが一番ヘンタイじゃねーか!!」
「え?は!!私は何も言ってません!!!」
「今言ったじゃねーか!!」
「言ってません!!」
「今日は眠いので落ちます!おやすみなさい!」
逆ギレしたクリスはログアウトしていった。
一人、椅子に座りぼーっとしていた。すると、アイオリアが入ってきた。
「おい、アイオリア!今日は疲れたからお前のことをいうつもりはもうねーけど、明日覚えておけよ!」
「私は忘れやすいので覚えていれば、伺いますよ」
「けっ!このひねくれものが」
「それはそうと、ずっとソロモンをみてないが、あいつどこいたの?」
「あーマスター。それはですね。ソロモンさんはPROUD陣営の席で女の子たちと楽しく話してましたよ!!」
「あの野郎!!!!!!!」
「まぁいいんじゃないですか?たまには」
「俺も女の子と話したかったよぉ~!」
「今日はいっぱい話したじゃないですか?うちの妹や結華さん、スカルドさんも。スカルドさんはあなたにキスまでしてたじゃないですか私の見立てでは扇を落としただけじゃすまなくなったんじゃないですかね?」
「なにいってんだ?今日は色々疲れた。いろいろありすぎたわ。明日からの仕事に影響でないようにもう寝るよ。おやすみ」
「おやすみなさい」
アイオリアは俺がいなくなってから、夕暮れの光がさしかかる部屋でたたずんでいた。
アイオリアはオリハルコン製の手甲を夕日に当てて光を愉しんでいた。
そして、眉間に皺をよせていった。
「……明日から忙しくなる。何としてでも勝たなくては……!!」
アイオリアはエウロパとの戦いに再度誓ったのであった。
沈みゆく夕日の光は彼を、茜色に染め上げたのだった。





