第155話「過去への贖罪」
~ セントラル・最北エリア ~
明くる日、セルは単独でユグドラシルの境界線まで来ていた。
この地を歩くのは他の地より知っている。
それは蓬華を探るべく侵入や、他国を治めているギルドの情報収集により、何度も侵入しているからだ。とりわけ、北欧神話を集結させたエリアに指定されているため、各所にクエストが存在しているクエストの管理は主にシステムが行っており、また自分が選択した職に関連するクエストが半自動的にポップアップされる仕組みになっている。
辺境の地出身の忍者くノ一は、北の大地に関しては慣れっこではあるが、時折乾いた風のようなものが吹くとどうしても、自分自身のスタート地点を思い出してしまう。
―――あの頃、
セルは単独でガルヴァレオンに何度か挑んだが、ことごとく返り討ちに合っていた。だが、ある日、ファウストのススメでエウロパに加入した。
それはガルヴァレオンからの直々の会談であった。当時は一匹狼であったセルは、エウロパ勢に取り囲まれてリスタ狩り(リスポーン位置にプレイヤーを置き、ログアウトするまでやるというPKKの巧妙なやり方)をやられ、ログアウトすればいいものの、観念してそのままガルヴァレオンのところまで突き出されたのである。
その時、ガルヴァレオンに我がギルドにこいと言われた。“その力はギルドに所属してこそ生かす力だ”と。
そういうと、副マスの待遇での採用という条件を受け、セルに副マスの序列に加わるように促された。
その後、戦場でめきめきと頭角を現すと伏兵と尖兵役を買って出る。
情報を駆使した立ち回り、そして圧倒的な速さで戦場を駆け巡る。セルは戦場でこそ輝く力を手に入れたのだ。
それから月日を経て、アーモロト城主のギルドになった。
なった矢先の出来事で、彼は引退を表明する。
周りの幹部や幕僚を含めて何度もやめないでくれと懇願したが、どうしてもやらなければならないことがあるといい、このゲームを去っていった。
セルはその後、一個小隊ごとギルドを離れて自分のギルドを立ち上げ拠点を暴れまわっていたが、人数差による敗北が多くなり、当たり散らす相手がいないまま、引退まで考えた。
その頃、ベルスもギルドを立ち上げかつてのギルメンが頑張っているのをみて、ついベルスに話しかけると、同盟の話を持ち掛けてきた。セルの性格を知っていたベルスは同列に組み込み、彼を慰めていた。
そして、ようやくロームレスの陥落を叶えて、連立政権を樹立させた。
その後はこの物語の結末である。
そして、DMが届くことをシステムが教えてくれた。それをちらっと眺めるとすぐ閉じた。
「フン、だろうな。アンタならそういうだろうよ」
そういうとくるっと振り向きアーモロトへ足を運ぶ。
セルは走りながらセイメイの伝言を噛みしめながら、たしかに受け止めていたのだった。
―――――――――――――――――――
~ ライジング・水都 ~
ユーグと合流したセイメイは帝都スメラへ向かう。
その前に、この街で食事でバフをかけておこうと説明し、いつもの味がない料理を口に運ぶ。
この土地ならではの海鮮物で、寿司が出てきた。回避力と命中率、そして、体力が上がる料理だ。
だが、そこでさっそくユーグは愚痴をこぼす。
「これ食うなら、現物がいいでしょ!?さすがにこれを仮想世界で食わなきゃいけないのかと思うと憂鬱になるよぉ~」
「まぁそうだな、日本人なら特にこれを食すにはそれなりの触感が求められてくるよな?」
「そうか?私にはおいしいがな?」
『え?』
二人は驚いていた。それはルカの言葉を発した言葉に二人は驚きを隠せなかった。
「ルカ……それは“偽物”だぞ?なんでうまいと感じれるの?」
「失礼な。このチュートロという食べ物は弾力があり、その上、すぐ溶けて芳醇なうまみがするぞ?」
「あ、……ああ、そうだな。当たっているぞ?」
「マスター達は実際に食べ物を食べるときは視覚と舌で触感と旨味を味わうのだろ?それをこの空間では私の口に合うと言っているのだ。なにか間違っているか?」
「いや……、まぁそうだ。それでいい」
セイメイとユーグは流し込むように料理を食べ終えた。
「もう少し待ってくれませんか?」
「あ、ああ~大丈夫だよ!ルカちゃん僕らは早く出発がしたいだけなんだ。だからといって、せかすつもりはないよ…ねぇ……マスター?」
ユーグは動揺を隠せずセイメイに同意を求めていた。
「あ?ああ、そうだよ!?大丈夫だよ」
動揺する二人をしり目に最後の一つを口に頬張る。
「うむ。おいしかった。では参ろうか?」
「え?お、おおう!いこう!!スメラにな!?」
セイメイは戸惑いつつも、水都を後にした。
道中はいつもモンスター狩りだった。だんだんと帝都に近づくにつれ、モンスターが弱体化してきているのがわかる。なんせサムライをなるための東洋の剣士がスタートなのだ。このあたり一帯は旅のはじまりと同様なのだ。
ある程度、進んでいくと、海岸に沿った大きな崖に出くわす。
その崖を登ると海が見えてきた。その先には大きな城が見えセイメイにとっては懐かしの街であった。
「うわ~スメラだ。あそこがセイメイさんの生まれ故郷ってことなんですよね?」
「そうだ……あそこで俺はこの旅を始めたんだ……」
何か感慨深いものがあるようにセイメイは遠くどこか虚しい気持ちを取り戻さずにはいられなかった。
―――あの場所で師匠がまだプレイしていれば、あそこにいるはずだ。懲りずにずーっといるだろう。
セイメイは踵を返すとスメラまで通っている街道へ進んでいった。
「ま、マスター!!早いって!ちょ、ちょっと!!」
ユーグは景色に見とれていたせいかセイメイとだいぶ距離を開けてしまった。すると、どこからともなく勢いよく数名のプレイヤーが潜んでおり、ユーグはあっという間に囲まれてしまった。
「お、おまえら!!?」
だいぶ離れて歩いていたセイメイは、なにかの気配を感じたらしく、後ろを振り向くと人だかりが出来ているのをみつけた。周りを見渡すと後ろから健気についてきたルカを見たが、ユーグがいないことに気づく。
「お、おい?ユーグ?ユーグ!!!!」
セイメイは慌てて刀を抜き走り寄ろうとしていた。
囲まれているユーグはレーヴァテインに手をかけて、剣を抜く。
「あんたら、なにもんだ?」
そこにはセイメイは違ったサムライが5.6人囲んでいた。
『ぐははは……ヒヒヒ……!!』
そして、当目のようなプレイヤーが出てきた。
「おっと、君とは初めましてだね?まぁセイメイさんとは昔の知り合いでねぇ~。声をかけようとしたら、出るタイミングを間違えてしまったのさ。だから……、まずはお前から死んでもらおうかッッ!!」
勢い良く刀を抜くと、レーヴァテインの峰に当たる。
「ほう?暗黒騎士で、この攻撃を受けたのはアンタだけさ。さぁどこまで耐えられるかな?」
すると、そいつは刀を構えユーグの踏み込みを読んでいた。
―――ここに来た以上、昔の俺へリベンジ戦と呼んだ方がいいな……。セイメイさんがいなくてもとりあえず、三人は確実に落とせるッッ!!
「いかないなら、私からいくよぉ!!!」
瞬歩で近づかれ、剣を突き刺そうとするとユーグはレーヴァテインで、紙一重で受け流す。
「あら~これもダメか~じゃあしょうがないわね♪」
チンと刀をしまうと居合の構えをする。
―――そ、その構えは!!ま、マスターのッッ!!?
陰流・幡殺
刀は横一線に開き、ユーグの大剣をもろともせず、打ち込んできた。
ユーグのレーヴァテインで受けて体が少し浮いた。
―――うっそだろ!?
なんとか着地をして体勢を整えようとすると、息つく暇を与えさせないように、技を繰り出してきた。
陰流・飛燕ッッ!
その場で回転斬りをしたのちに、高く飛び刀撃を放ち斬撃は3つの衝撃波を放ちユーグを襲う!
果たして、ユーグはセイメイ到着まで時間を持たせることは出来るのであろうか?
それは白波の音だけが知っている。





