第115話「有能な年上部下には顱(こうべ)を垂れろ」
~アーモロト城~
セイメイの足取りは重い。感情で動いてしまった結果、失敗に終わるという無残な結果にどうしても拭えない気持ちでいっぱいになっていた。かといって、このまま立ち尽くしていても時間を無駄にするだけなのを知っている。
後続のメンバーも続々と到着し、城の中へ入っていく。
中央の塔へ登る階段を踏み込みながら登るとそこには、後続のメンバー達とソロモンとクリスがいた。
~中央広場~
「よ、よう。元気か?」
「元気じゃないじゃろ。聞いたぞい。失敗したそうじゃな?」
「ああ、すまない…。」
下を向いてしまったセイメイはソロモンの顔を見る事が出来なかった。
すると、肩を叩いてきたソロモンはニコっと笑っていた。
「まぁ、そうじゃろうと思っていたさ。大体、こういう時に冷静になれんのはわかっていたが、一度はこういう失敗をしても経験なんじゃないのかと思っておる。」
「だがな…!」
「ああ~それ以上今回の件を言うな。みっともないだけじゃぞ?ワシがもういいといっているじゃ。それでよしとしようじゃないか。お主がワシのマスターである以上、それを咎めきれんかったワシにも責任はあるんじゃからのぅ。」
「……。」
「セイメイさん…。」
セイメイに歩み寄ろうとするクリスをソロモンが手で止めていた。
「まぁ、今回の件は終わるとして占領戦の準備にかかろう。やり残していた準備をしようじゃないか。」
「ああ、そうだな。」
「まぁたまには二人で話をしながら、買い物でもしようかのっ?」
「ん?ああ…。」
セイメイの肩を抱え、後ろに手を払いながら中央広場を後にした。
~メインストリート商店街~
商店街を歩くと行き交う様々なギルドの冒険者らがセイメイ達に挨拶してくる。
「おはこんばんちわ~!」
「やあ!楽しんでる??」
「はい~!占領戦頑張ってください!」
「ありがとよ!」
「よう!今度はロームレス防衛だって??同盟組んでいるのも、大変だね!?」
「なぁにお主らも参加して防衛成功したら貰える報奨金目当て参加する気じゃろ?」
「ははは!ばれたか!!今回防衛できりゃホンモノの占領ギルドだよな?応援するぜ!」
「おう!応援待っとるぞぃ!!」
ソロモンは笑顔で手を振る。浮かないセイメイは無言を貫いていた。
「のぅマスター。なんでワシらが今ここにいて、行き交う冒険者がワシらを応援してくれるか知っておるか?」
「いや、わからん…。」
「“何か”新しい事をやってくれるんじゃないかという期待があるんじゃよ。」
「何かってなんだ?」
「お主は自分がやった事をすぐ忘れる節があるようじゃな。お主がやった功績は意外にもデカイんじゃよ?」
「ああ、もしかして古参に牙を剥いたことか?」
「わかっておるじゃないか。いけずなヤツじゃの。」
「ありゃ成り行きじゃないか!俺がやりたくてやったわけじゃない。それにたまたまうまくいっただけだ。」
「本当にそう思っているのか?」
「え?」
セイメイはふと聞きなれていた声色が変わった事にすぐに気づいた。すぐに目線をソロモンに向けるとこちらを睨みつけている。セイメイはなぜ睨みつけられているのかわかっていなかった。
「な、なんだよ。なんか間違った答え方をしたのか?」
「違う、そうじゃない。お主の自覚の問題じゃ。」
「結果的にアーモロトを陥落させた事がこのゲームでの凄さはお主でもわかっておろうよ、誰でも出来る事じゃない!!その偉業を達成しちまった以上、これからはのほほんとそんな無自覚では下のモンがついてこないんじゃ。」
「なんでだよ。俺は俺なりのやりたいことをやっているじゃないか。」
「前まではそうじゃ…、それでよかった。しかし、今はその数十人、数百人の事を考えなくてはならんポジションについちまったって事を再度、認識するんじゃよ!」
「わ、…わかっているさ。」
「そうか?わかっているようには思えんがな?」
「いきなりなんだよ。俺にどうしろっていうんだよ!!」
「アイオリアの意見に賛同するわけじゃないんじゃがの、お主はもう立派なグランドマスターなんじゃよ。その第一の試練がすぐ目の前にきておる!それを自覚しているとは到底思えんのじゃ。」
「だって…。」
「だってじゃない。いい加減ハラを決めろ。お主は…ワシらのギルドマスター“セイメイ”なんじゃぞ!!」
「な…。」
セイメイは返す言葉が見つからなかった。セイメイは知らず知らずのうちにマスター職というのを軽んじていた。一つの感情や出来事で右往左往するようではダメな事くらいわかっている。しかし、ソロモンに言われてしまうと思っていなかった。
ふと、あいつの言葉を思い出す。
“マスターは最後まで熱くなってはいけないと思います”
「じゃあ俺にどうしろと?」
「簡単なことじゃよ。お主はもうグラマスであるのだから物事を大局的に扱い、火の粉を払うのはギルメンに任せる事にするんじゃよ。」
「今回の事はギルメンに任せるべきだといいたいのか?」
「まぁそうじゃな。結果は同じじゃよ。」
「なんだと!?」
「それじゃ、その熱さの使い方をもっと学べ。お主は正直、めんどくさいやつなんじゃよ。」
「ソロモン!お前!!」
「まぁ聞け!お主は仲間に熱く、偏屈に逃げ腰な部分がある。肉食系男子なら昭和アニメの主人公みたいな感じで熱血漢で扱うのが簡単だし、また、草食系男子ならクリスとかスカルドのチャンネーを割り当てて応援させればいいんじゃがの。」
「なんだよ。言いたいこというじゃねーか…。」
「まぁそうじゃな。」
「チッ…説教かよ…。」
「“怒られているうちが花”という言葉がある。それにワシはこれでもお主を支持しているわけだ。破滅の道を歩んでいる仲間を指摘して、正しい道へ誘導するのも仲間の務めじゃろ??」
「モノは言い様だな。」
「まぁ今回はワシの言う通りにしておけ。悪いようにはせんぞ?グフフフ…。」
「なんか、丸め込まれているような気がするんだが…??」
「“長い物には巻かれろ”というじゃろ?今回は年齢の長さじゃ。難しくはないじゃろ??」
「ずりーなぁ。そういう時だけ年齢出すの…。」
「大人はずる賢い方が出世するんじゃよ。お主のようなピュアな心じゃ出世は出来んぞ?それでも、そのピュアな感情や考え方がワシは好きなんじゃ。今回は言う事を聞いておくんじゃww」
「わーった!!わかったよ!ソロモンの言う通りにするよ。」
「それでこそ!我がマスターじゃ!!今日はいい日じゃの!!」
セイメイの肩をバンバンと叩きながら、商店街を抜ける事なった。
行き交う冒険者が振り向くのをこの二人は知らない。それは熱くもなく冷めた感じでもなく、仲間同士の掛け合いを堂々とやるグラマスが意外だったのかもしれない。
~裏通り・闇市~
裏通りに入ると、入り組んだ路地を抜けそこには闇市が広がっていた。
「おいおい、統治者というのはこういうのを是正措置するんじゃないんか?」
「こればっかりはシステム上仕方ないじゃろ。これがなければ、アーモロトの旨味がないからの。」
―――闇市。それは掘り出し物からぼったくりの商品まで取り扱う場所だ。無論、PKオンが可能なエリアであり、どこでも戦いを仕掛ける事が出来るエリアでもある。ここに足を踏み込んでいたのはホルス達であったが、セイメイはここに立ち寄るぐらいなら旅に出て攻略して手に入れた方が早いし、安上がりだということで立ち寄る事は今までなかった。しかし、今回はそんな旅に出る時間もないため、ソロモンはここで用を足そうという算段でここに足を踏み入れる事になった。
「相変わらず、値段とモノのバランスがわりぃな。」
「まぁ欲しければ、その値段でも買うという心理を逆手にとった感じじゃからの。」
すると、セイメイにぶつかる冒険者がいた。
「って!この野郎!どこに目をつけていやがる!!」
「マスター、テンプレみたいな言葉を発するんじゃのぅ。」
「バッカ!だってそんな感じじゃねーか!」
するっと逃げようとする冒険者に、スパッと刀を抜くと首元に当てる。
―――バックアタックを回避するスキルを使わない・使えないという事はアサシン系ではないようだな…。
「おい、ぶつかっておいて黙って逃げるのは、俺に喧嘩売っているんだよな?場所と相手を見ろよ?今の俺は少し機嫌が悪いんだ。今、謝ればなかった事にしてやる。すまんの一言ぐらい言えよな?」
というと、まだ黙っていた。
ソロモンが廻り込んで顔を覗くと、ソロモンは見覚えのある顔だった。
「おや、こやつ…。どこかで見たことあるぞ。」
「ローブで身を包み、亜人の耳…?こやつ!!例のバフォメットの!!」
「なんだと??」
「よう、お二人さん。記憶力悪くなったという事は、老いが進んだようだな。」
二人が驚いていると、後ろから聞きなれた声が聞こえきたが、振り向くと黒い集団に囲まれている事にきづくのに瞬きする時間はいらなかった。





