99ー食べられちゃう?
なんとコッコちゃんは、卵に魔力を与えながら温めていたのだ。それも、ごく微量の魔力らしい。
コッコちゃんは、魔鳥さんだから魔力は持っている。でも、本当に少ししかない。だから、魔法も使えずとっても弱っちい。
それでも、持っているのだ。魔力を。その魔力を与えながら温めているのだそうだ。
さすが、弱くても魔鳥さんなのだ。
コッコちゃんの、真っ赤な鶏冠の前に小さな豆粒ほどの角がある。これは魔鳥さんだからだ。
この角が大きい程、力が強く魔力も多いらしい。コッコちゃんの角は豆粒程だ。それだけ弱いという事なのだ。
「ぴょぉーッ!?」
「まあまあ! 驚きですね!」
「本当、びっくりしたよ。コッコちゃんの生態って分かっていないからね」
マリーも驚いているけど、実際に精霊眼で見たディさんも驚いている。
コッコちゃんの生態を研究しようにも、逃げ足が早くてなかなか捕まえられなかった。だから、詳しい事は殆ど解明されていないらしいのだ。
「コッコ?」
「クックックッ」
「え? しょうなの?」
「ククッ」
「ロロ、コッコちゃんは何て言っているんだい?」
「こっこちゃんも知らなかったって」
「そうなの?」
「しょうらしいのら」
きっと無意識だったのだろう。ただ無心にコッコちゃんは卵を温めていたのだ。親心なのだ。
「ロロ、どうした?」
「こっこちゃんも、けなげなのら」
「ん? そうかい?」
「しょうなのら」
だって、大変だよ? ずっと温めるのは。
「ロロ、魔鳥だからね。普通の鳥さんとは少し違うんだ」
なんだと? どう違うのか?
普通の鳥さんは卵の上に座り込みお腹に抱えて温める。何日も掛かるだろう。何日掛かるのか知らないけど。
でも、コッコちゃんの場合は違う。直ぐに抱卵しなくても大丈夫なのは同じらしいが、コッコちゃんの場合はずっと温めている訳ではないのだ。
朝昼晩と、定期的に温めるだけで孵化するらしい。それも、1週間でだ。
「だから今まで回収し忘れていても、次の人が回収すれば雛にはならなかったんだろうね。今回は偶々だろう」
じゃあ、俺達は人工的に孵化させる時にも、魔力を少し流さないといけないのか?
「実験してみようね」
ディさんが人差し指を立てて、バチコーンとウインクをした。だから、超イケメンのディさんのウインクは目に悪いのだ。チカチカするぞぅ。
「孤児院では、ニルスとハンナに温めてみてもらうよ。二人の魔力量が違うし、魔力操作の熟練度も違う。良い実験になるんじゃないかな。でね、ロロも実験してみてよ」
「ボク?」
「そう、1日に3度。朝昼晩に少しだけ魔力を流しながら温めてみて」
「ろうやってあたためるの?」
「そうだなぁ、孤児院と同じ様にしようか?」
孤児院では、いらなくなった布で包んでいたらしい。じゃあ、俺も同じ様にするのだ。実験するなら、同じやり方が良いだろう。
「興味深いよね。ロロが温めた卵の孵るのが楽しみだ」
どういう意味なのだ? 俺、特別な事はしないぞぅ。
と、思っていた時期もあったよね……。
俺はまだ自分が、分かっていなかったのだ。俺が卵を温め初めてから丁度1週間後。無事に雛が孵ったのだ。
「ピヨ!」
「ピヨヨ!」
「ピピッ!」
そうなのだ。俺が魔力を流しながら温めていた卵が3個孵ったのだ。で、それを聞きつけたディさんがやって来た。満面の笑顔だ。嬉しそうなのだ。
「ギルドでリアとレオに聞いたよ! やっぱロロなら、やってくれると思ったよー!」
なんて言っている。何故なら、俺が温めていた卵から孵った雛が他の雛より一回り大きいのだ。
しかも、色が淡い黄色ではなく、鮮やかな濃いオレンジだ。それに、とっても元気なのだ。
歩き方が違う。ヨタヨタではないのだ。テケテケテケと走って来る。と言うか、走り回っているのだ。
俺を見つけると、我先にとダッシュでやって来る。
どうしてなのだ? どうしてこうなった?
「アハハハ。予想していたんだよ!」
「えぇ~、でぃしゃん」
「だって、ロロは魔力量が多いだろう。だからだよ」
ディさんは確信犯だったのだ。先に言って欲しい。
ディさんが、雛の様子を見る為とか言いながら、片手には野菜が沢山入った大きな籠を持っている。どっちがメインなのか?
雛じゃなくて、ニコ兄のお野菜目当てなのじゃないか? 露骨なのだ。
最近ディさんは毎日来ている。もう、うちに住んじゃえばいいのに。て、位なのだ。ディさんなら大歓迎なのになぁ。
「増えたね〜」
「しょうなのら。お野菜もたくしゃん食べるのら」
「そうなんだ。ねえ、ロロ」
なんだ?
「ロロは忘れているかも知れないけど、コッコちゃんてお肉も美味しいんだよ」
ディさんがそう言った途端に、コッコちゃん達は一斉にぴゃーッとピカの後ろに避難した。
コッコちゃん達は言葉が理解できるのだ。だから身の危険を感じたのだろう。
のべっと寝そべっているピカに、隠れているけど目から上と尾羽が出ている。しかも、冠のような赤い鶏冠と尾羽がプルプルと震えている。明らかにディさんを警戒しているのだ。
「アハハハ! 隠れちゃった」
ディさんも笑っているから、食べるつもりなんてないのだろう。
「でぃしゃん、むり。かわいしょうなのら」
「だよね〜」
そうだよ。これだけ懐いてくれると、情も移るってものなのだ。日向ぼっこ友達なのだし。
お読みいただき有難うございます!
雛がまた増えました。^^;
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