94ー両親のお墓
「ディさんから1本も取れなかったよ」
「僕から1本取るなんて、10年早いよ〜」
でも10年なのか。もっと100年位とでも言うかと思った。レオ兄は、なかなか強いのではないか?
「レオもリアも、充分強いよ」
「まだまだだわ」
「本当、全然敵わない」
ほう。俺も、レオ兄みたいに槍でもやってみようかな? 子供用ってあるのかな?
「ズリーな! 俺も、手合わせして欲しい!」
「ニコは、何の武器を使うのかな?」
「俺は剣だ。リア姉に教えてもらってんだ」
「へえ〜」
そう言いながら、ディさんの瞳がキラランと光った。また、精霊眼で見ている。
「ニコ、魔力量はあるのに、魔力操作が全然出来てない」
「あ……やべ」
藪蛇なのだ。ニコ兄は、きっと魔力操作なんて忘れているのだ。チラッと見ると、リア姉がソッと目を逸らした。これは、リア姉も忘れていたな。
「勿体無いなぁ。ニコは良い物を持っているのに」
ディさんが、ニコ兄に話して聞かせる。
例えば、ニコ兄が持っているらしい水属性魔法。これを応用すると、水遣りが楽になる。水属性魔法で、シャワーの様に水を出せばいい。
「土属性魔法だってそうだよ。畑を耕したりするのに便利だ」
「そうなのか?」
「だから、そう言ってたじゃないか」
「えー、俺頑張るよ!」
本当かなぁ? ニコ兄は前もそう言っていたのだ。
「リアもだよ。火属性魔法は攻撃魔法として1番代表的なものだ。剣に付与したら、威力が倍増するんだ」
「そうなんですか?」
またまた、前もディさんに色々教わったのに。覚えてないんだなぁ。
「レオとロロは、魔力操作が上手だね。努力したんだ」
「母に教わったんです」
「ボクは、れおにい」
「そうなんだ。偉いね〜」
ディさんに頭を撫でられちゃった。てか、ディさん。その、片手に持っている大きな籠はお野菜だね? いつの間に?
「今日も、ディさん特製のサラダだよ!」
また、小躍りしているぞ。ディさんは、本当にお野菜が好きだ。
その日の夕食だ。
「ニコ、ロロ、近いうちにお墓参りに行こうと思うんだ」
「レオ兄、父様と母様のか?」
「そうだよ。1年行けなかったから」
お墓参りか。俺は葬儀の事もあんまり覚えてないのだ。お墓にも行った筈なのだけど、それも覚えてない。
「ロロは覚えてないだろう?」
「うん……」
その通り、全然覚えていないのだ。
「ご両親のお墓は何処にあるんだい?」
ディさんが、聞いてきた。
レオ兄が、説明をしたのだ。元々、両親が治めていた領地は、このルルンデの街がある一つお隣。王都側のお隣は、フィーネ達の家が治めている領地。
その反対側だ。王都から遠い方のお隣。そこが、両親が治めていた領地だ。
そこにある俺達の家。今はもう叔父夫婦の家だけど。その近くの墓地にあるらしい。
「ルルンデからだと馬車で丸1日かかります」
丸1日だ。朝早く出ても、夜遅くに着く。だから、皆一晩は野営をするか宿屋に泊まるらしい。暗くなってから、馬車を走らせるのは危険だからだ。
「ロロはまだ小さいのに大丈夫かな?」
「ギリギリ領地の外れまで行って、そこで早めに宿を取ろうかと思ってます。無理させたくないので、これからしっかり準備してゆっくり行って来ますよ」
「そう、ならいいけど」
初めての遠出なのだ。いや、そんな事はないのだけど。覚えてないから、初めてという事にしておこう。
両親のお墓参りの為に、準備が始まった。
隣領だと言っても、馬車での旅になる。俺は慣れていない。しかも、まだ3歳で体力もない。
その為、出来るだけいつもと同じ時間に起きて、途中で宿屋に一泊する。そして翌日、領地に入る事になった。
この世界、一泊とはいえ馬車で移動するのは大変だ。うちは兄弟4人、それにマリー達3人での旅になる。
乗り合い馬車もあるのだが、一台小さな馬車を借りる事になった。
普通なら、護衛のために冒険者を雇ったりするらしい。道中、何があるのか分からないからだ。
でも、うちはリア姉とレオ兄が冒険者だ。Cランク昇格確実だろうと言われている腕前だ。だから、大丈夫なのだ。
マリー達も一緒に行く理由。それは、マリーの息子夫婦も同じ墓地に埋葬されているからだ。エルザとユーリアの両親だ。
俺達の両親に同行していた2人も同じ時に亡くなったのだ。
「本当は、もっと早くに行きたかったんだけどね」
と、レオ兄が話していた。
このルルンデの街に住み始めた頃、まだリア姉とレオ兄は仕事を決め兼ねていた。
邸から持ち出した物を売って生活は出来ていたものの、それだけに頼っていては先が不安だ。エルザは早々に、『うまいルルンデ』での仕事を決めてきた。
ニコ兄とユーリアも、何か仕事を探そうとしていたのだがまだ子供だ。碌な仕事がない。
そのうち、ニコ兄が家の前に畑を作り出した。家の横には薬草を植えだした。
それを見ていた、近所のおじさんやおばさん達が、畑を手伝ってくれたら助かると言ってきた。
リア姉とレオ兄も、何を思ったのか冒険者として登録してクエストを受け出した。
そんな感じで、少しずつ安定してきたのだ。
俺はというと、初めの頃はピカやマリーの側から離れなかった。その上、夜は夜泣きした。
俺が1番みんなに迷惑をかけたのだ。
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