92ーレオ兄の訓練
(レオ視点です)
ロロは酷い目に遭った。怖かっただろうに。なのに、ロロは相変わらずだ。
毎日、ピカとチロと一緒に飄々としている。マイペースなのか? まだ、小さいから理解できていないのか?
ピカに乗っていて攫われたと聞いた。だから、もうピカには乗らないかと思っていたんだ。
なのに、ベッドから起きられる様になったら、何の躊躇も無くピカに乗って表をうろついていた。それどころか……
「コッコちゃん、ちゅかまえにいくのら」
なんて言っていた。
まだ3歳になったばかりなのに、ロロは賢い。お利口なんて言葉じゃ足りない。賢いんだ。
そして、強い。心が強くて、優しい。
ロロは、主神である女神の加護を受けているとディさんが話していた。それを聞いた時に僕は、驚くよりも納得したんだ。ああ、ロロだからと。
これからニコやロロが大きくなっていく。僕は2人を支えられるのか?
ニコは弟思いの優しい子に育っている。ニコの手が必要だと、近所のおじさん達に認められている。
ロロは魔法の才がありそうだ。テイムなんて、まだ3歳だというのに。その上、回復魔法だ。刺繍の付与だけでも、僕は驚いていたのに。
これが、女神に加護を受けている所以なのか? それとも、そんな才能をもったロロだから加護を受けたのか?
こんな時に両親がいてくれたらと思う事がよくある。
でも、いない。それでも僕は、両親ならこんな時にどうしただろう? と、思いながらニコやロロに接しているつもりだ。
両親がいなくて寂しい思いをしているだろう。まだ時々ロロが、夜泣きするのはその所為だろう。
両親はいないけど、でも守っていくんだ。ニコやロロだけでなく、姉上やマリー達を。
今回のロロの事件で、僕はより一層そう思った。
◇◇◇
(ロロ視点です)
俺がお昼寝から目が覚めて、下に降りて行くとマリーがいた。
「あらあら、起きましたか?」
「うん、まりー」
「果実水を飲みますか?」
「うん、ちょうらい」
「わふ」
「キュル」
「はいはい、ピカとチロもね」
マリーはよく分かっている。ディさんはもう帰ったのかなぁ? と、ソファーに座って果実水を飲みながら思っていると、表からレオ兄の声が聞こえて来たのだ。
「ああ! ぜんっぜん敵わない!」
ん? 何かやっているのか? また訓練とかやっていそうなのだ。
「午後からは、レオ坊ちゃまとディさんですよ」
「しょうなんら」
「コッコッコ」
「うん、おひるねら」
コッコちゃんが、何してたの? と、聞いてきた。もう、当たり前の様に家の中にいるよね。いいのか?
マリー、コッコちゃんがそこでお昼寝しているよ? コッコちゃんがテーブルの下で寄り添ってお昼寝をしている。真っ白でモフモフなのだ。
「ロロ坊ちゃまが、上でお昼寝している時はみんな入ってくるんですよ。階段は登れないみたいですね」
「え、しょうなの?」
「はい」
「こっこちゃん、鳥さんなのにとべないんらっけ?」
「クック」
「しょっか」
全く飛べないらしい。確か、ピカがそう言ってたな。2階にまで上がって来られるよりいいや。
こうして話していると、コッコちゃんに表情がある様に見えてくるから不思議だ。本当は全然変わっていないのに、嬉しそうだとかしょんぼりしているとか思ってしまう。
あれだね、ペットを飼っている人ってこんな感じなのだろうね。どんどん可愛くなってしまうのだ。
「こっこちゃん、おしょといこう」
「クック」
「コッコッコ」
「まりー、おしょとにいくのら」
「はいはい。お一人で家から離れたら駄目ですよ」
「らいじょぶら」
俺が外に出ると、コッコちゃんもゾロゾロと付いて来た。本当、俺ってカルガモの親鳥だよ。任せなさい、みんなちゃんと面倒をみるよ。
おや? チロさん、どこに乗っているのかな?
「キュルン」
「あ、しょう」
いいけど。チロはコッコちゃんに乗っていたのだ。もう、どんどん馴染んでいく。いいけど。
「あ、ロロ! 起きたの?」
ああ、しまった。レオ兄とディさんが対戦していると言う事は、リア姉が見学だ。
案の定、抱き着いてきたのだ。俺のぽよんぽよんしたお腹をムニムニしながら、ほっぺにスリスリしてくる。
「りあねえ、らからくっちゅくのはらめ」
「だって、ロロ!」
「らめ」
「分かったわよぅ」
俺が軒下に座り込むと、リア姉も隣に座った。そうそう、大人しく普通にしていようね。
黙ってじっとしていたら、クールビューティーなんだから。俺が一人で勝手に思っているだけだけど。
「りあねえ、れおにいちゅよい?」
「ダメよ、ディさんから1本も取れないわ」
「りあねえもらった」
「だって、ディさんって本当に強いのよ」
「えしゅえしゅらんくら」
「ふふふ、そうね。SSだもの、敵う訳ないわね」
そうだよ。ディさんはSSランクなのだ。それに大人だから、リア姉やレオ兄とリーチも何もかもが違う。
ちょっと、ディさんとレオ兄の対戦を見てみよう。
刃の付いていない、木製の練習用の木槍で対戦していた。本当、ディさんって何でも出来るのだね。
――カーン!
――カーン!
木がぶつかり合う音がする。レオ兄もディさんの隙を突こうと果敢に攻める。
でも、ディさんはお見通しだ。レオ兄の出した木槍を軽く往なしている。
「レオ、まだ力が足りないね。筋トレしなきゃ駄目だ」
なんて、冷静に見ていたりする。まだまだ訓練は続きそうなのだ。
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