87ー償うチャンス
「レオ、君はよくやっているよ。ちゃんとニコやロロを守っているんだ」
「ディさん、でも……実際にロロは攫われたんだ」
「レオ、それは妹が……」
「違います。予想できた事なんだ。レベッカ様の評判を知らなかった訳じゃない。ピカを狙っている事だって知っていた。なのに……」
「だから、レオ。普通ならそんな事はないんだ。君達は平和に暮らせていたんだ」
「そうだ、レオ。母上やレベッカが異常だったんだ」
「君達をそんなに追い詰めて、本当にすまない。どうか、私達にも償うチャンスをくれないか?」
「償うチャンスですか?」
「そうだ。私達は後悔している。そして、君達に辛い思いをさせたと悔やんでいる。償いたいんだ。本当に、申し訳ないと思っているんだ」
そうか……ロロが言っていたように、この人達も傷付いているんだ。
僕達に償う事で、無かった事になる訳じゃない。でも、何かしたいのだろう。
ディさんが調べて来てくれた事。貴族の連名が必要なら、力を借りよう。
そう思って、姉上を見る。
「レオ、私は良いわよ。それしか方法がないのでしょう。願ってもない事だわ」
「姉上……」
「でも、だからと言ってロロにした事が帳消しになる訳じゃないわ」
「もちろんだ」
「私の妻と娘が仕出かした事だ。この先、ずっと私が背負っていく事だと思っているよ。勿論、領地の事も今以上に努力するつもりだ」
「そう、ならいいわ」
少し姉上が、ツンデレみたいになっていた。何故だ?
他に迷惑を掛けた人達にも謝罪に行くそうだ。先ずはうちに来てくれたらしい。
そうして僕達は、フィーネに連絡を取る事になった。
◇◇◇
(ロロ視点です)
俺はピカやコッコちゃんと一緒に、お庭でボォ~ッと日向ぼっこをしていた。
だってもう、コッコちゃんに餌やお水もあげたし。大人しく柵に入っていてくれないし。する事がないのだ。
今日も良いお天気で、ピカに凭れて座っているとポカポカしてくる。と、気が付くと俺はコッコちゃんに埋もれていたのだ。
俺の周りにくっついてコッコちゃん達が座っている。モフモフだらけなのだ。コッコちゃんの、胸の部分がフワフワで高級羽毛の様なのだ。
「こっこちゃん、おりこうらね」
「あらあら、ロロ坊ちゃま。コッコちゃんに埋もれてますよ」
庭先で、お洗濯を干していたマリーが俺を見て言った。
「うん、モフモフなのら。気持ちいいのら」
「ふふふふ」
俺は、デデンと体ごとピカに凭れている。ちょっとウトウトとしかけたところに、ディさんやクラウスさん達が家から出て来たのだ。お話は終わったらしい。
「ロロ、凄い事になってるよ?」
「でぃしゃん、ポカポカなのら」
「アハハハ、ロロは好かれているね~」
「しょお?」
「そうだよ」
コッコちゃんの中から、ディさんがヒョイと俺を抱き上げてくれた。そのまま抱っこだ。
「良い子だね。君達は本当に良い子達だ。マリーさん、これからも頼むよ」
「はい、もちろんです」
何なのだろう? なんだか、しんみりしていないか? 来た時とは雰囲気が違っている。
「この鳥がフォリコッコなのか?」
領主様が聞いている。コッコちゃんを知らないのかな? そうだ、確かコッコちゃんは用心深い鳥さんで、滅多に人前には出ないとレオ兄が話していた気がするのだ。
「そうですよ。森で捕まえて来たんです。全部で7羽います」
「毎朝卵を産んでくれるから、助かってますよ」
と、マリーが言った。そうだね、毎朝美味しい卵料理が食べられる様になったのだ。
「毎朝産むのか?」
「はい、そうです。複数個産みます」
「それは、凄いな」
領主様も驚いている。7羽いて毎朝卵を複数個産む。お陰で卵には全然困らなくなった。これでも、ご近所の数軒と分けているのだ。もちろん、コッコちゃんのお世話も当番制だ。
でも結局、一番時間のある俺がよく側にいる。面倒をみているかというと、ただ一緒にボ~ッとしているだけなのだけど。
お庭でコッコちゃんに囲まれて日向ぼっこ。最近の俺のお気に入りなのだ。
「レオ、卵を孵してみたりはしないのか?」
ん? クラウス様が言い出したのだ。何か思いついたのか?
「え? 孵化させるのですか?」
「そうだよ。そうしたら態々森まで捕獲に行かなくても増える」
「これ以上、増やすつもりはないですね」
「7羽もいるのだからそうだよな」
そうなのだよ、もう充分なのだ。これ以上、コッコちゃんを増やしても卵を消費できなくなってしまう。売るのだったら別だけど。
「そうか、コッコちゃんを育てて卵を売ろう」
またまた、突然ディさんが言い出したのだ。
「え? ディさん?」
レオ兄が驚いているのだ。だって、俺達はそんな商売をするつもりなんてないのだ。
「ああ、ごめん。突然だったね。ほら、教会にもコッコちゃんを連れて行っただろう。それで、教会で試してみてもらおうかと思ってさ」
なるほど。それなら、子供達だってお世話ができるから良い考えだ。
孤児院の収益になったら良いのではないか? ナイスアイデアなのだ。
「ディさん、教会って事は孤児院にですか?」
「そうなんだよ。物は試しだ。やってみよう」
でも、そう簡単に孵化させられるのか? 難しいと俺は思うぞ。
でも、チャレンジしてみる事は良い事だよね。それが出来たら、孤児院のみんなもオヤツが増えると喜ぶのだ。
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