86ー頼って欲しい
(レオ視点です)
「あ、ちょっと待って。もしかして、マリーさんがオスカーさんに頼んでいた人探しの事かな?」
「え? ディさん、マリーがですか?」
「そうだよ。『うまいルルンデ』でその話をしている時に会ったんだ。オスカーさんに、探して欲しいと頼んでいたよ」
「じゃあ、マリーも行方を知らないんだ」
「執事が、当主の指示以外で側を離れることはない。ご両親が亡くなった後は、レオ君達の側にいないといけない筈だ。若しくは、今はその叔父に仕えているかだ」
領主様がそう言った。確かに、父の補佐をずっとしていた。確か、祖父の代から仕えてくれていると聞いた覚えがある。
なのに、僕達が家を出る時には顔を見せなかった。だから、変だと思ったんだ。
「宰相に聞いたんだけどね、何人かの貴族が連名で申立てをすると、調査をしてもらえるそうなんだ。僕はこの国の国民じゃないから駄目なんだよ。だから、その申立てにフォーゲル卿も協力してもらえたらと思うんだ」
「それは、もちろん。しかし、その前にもっと詳しく教えてもらえるか?」
「はい、もちろんです」
僕は領主様に、俺達が追い出された時の事を詳しくお話しした。
申立てをするとしても『何人かの貴族が連名』でないとできない。今は領主様だけだ。ディさんはできない。人数を集めないといけない。他に誰かいなかったか?
「姉上、フィーネ達はどうだろう?」
「そうね、頼んでみましょう」
そうだ、フィーネ達がいた。兄君に相談してみると言ってくれていた。早速、手紙を書こう。
「レオ、フィーネって僕より1年上のセラフィーネ嬢の事か?」
「はい、そうです」
「フィーネの弟も一緒に、パーティーを組んでいたんです」
「パーティーを? ああ、あそこは武官家系だからか」
「そうです。一緒にダンジョンに挑んで、フィーネ達のランク上げをしていたんです」
領主様が誰の事だ? という顔をしているので、クラウス様が説明をしている。
同じ学園に通っている、隣領のアウグスト家の長女だと。
「騎士団におられるアウグスト卿か」
「父上、そうです」
「それは良い考えだ。卿は正義感が強い。放ってはおけないだろう」
少し希望が見えてきた様な気がする。今まで、何の手立てもなかったんだ。それが、申立てをする方法があると分かった。国に調べてもらえるんだ。
ディさんのお陰だ。きっとディさんは、領主様がうちに来ていると知って来てくれたのだろう。
僕達だけだったら、怒りに任せて追い返していたかも知れない。実際に僕は『僕達に近寄らないで欲しい』と拒絶の言葉を口にした。
あれだけ調べたくて、なんとかしたかった事なのに。ロロの事で頭が一杯で、そんな事にも気が回らなかった。
「貴族簿の閲覧は直ぐに申請をしておこう。申立ての方は、私も心当たりの貴族に声を掛けてみよう」
「もちろん、僕も探しておくよ」
「でも……」
僕達がこの街で暮らすようになって丸1年だ。何も進展がなかったのに。
ロロの事件は不幸な事だった。今思い返しても、体が冷たくなり冷や汗が出る。
だが、そこから縁ができた。複雑な気持ちだ。
ディさんが気にかけてくれている。それだけでも、きっと進展しただろうけど。
隣にいる姉上の顔を見る。姉上も微妙な表情をしている。本当は、領主様には世話になりたくないのだろう。その気持ちも分かるんだ。
「リア、レオ、借りを作るなんて思わなくていいよ。当然の権利だと思っていればいい」
「ディさん」
「君達は、年の割になんでもできる。こうして立派に自分達だけで生活している。それは凄い事だ。でも、もっと周りの大人を頼っていいんだ。少なくとも、僕は君達が大好きだ。力になりたいと思っているよ」
「ディさん……有難うございます」
そんな……ディさんにはとってもお世話になっている。ロロを助けてもらった。
その後の事だって、ディさんだったから迅速に対処してもらえたんだと僕にだって分かる。
こんなに良くしてもらって、甘えても良いのだろうかと思ってしまう。もちろん、ディさんの事は信頼している。
僕や姉上が、周りの大人を頼らなくなったのは貴族達に原因があるんだ。
僕達が追い出されて学園を退学した時だ。それまで友達だと思っていた人達から、冷たい仕打ちを受けた。
姉上の元婚約者もそうだ。それだけじゃない。クラスメイトや教師達もそうだった。
蔑み、軽蔑する様な目つきで僕達を見てきた。
使用人になるなら雇ってやってもいいと、言ってきた奴もいた。
邸の使用人達の方が親身になってくれたんだ。みんな、学園の友達よりも付き合いが長いから当然といえばそうなのかも知れない。
叔父夫婦がやって来て、使用人の半数が解雇されたんだ。なのに、僕達の事を心配してくれた。
普通は、次の働き場所への紹介状を持たせるものなのだそうだ。知り合いの貴族等、伝手を紹介するんだ。そんな事もなく、自分達だって次の職場に困っているのに。
もしも役に立てる事があるなら、いつでも言って欲しいとまで言ってくれた。
この街に住む事を決めたのもそうだ。
マリーの知り合いがいたから、この家に住めた。僕達みたいな子供に、家を提供してくれるところなんてなかったんだ。
やっとこの地で、冒険者としてやってきて暮らしも安定した。みんなと力を合わせて、今日まで暮らしてきたんだ。
僕は弟達を守っていると思っていた。そんな時に起きたロロの事件だった。
お読みいただき有難うございます!
ディさんが登場するお話は『いいね』が伸びるのは気のせいでしょうか?^^;
この先、ガンガン出てきます。ロロの『おともらち』も増えます。
楽しみに読むよー!と、応援して下さる方は、是非とも評価やブクマをして頂けると嬉しいです。
宜しくお願いします!




