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☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第2章 おともらちが増えたのら

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84ー朝からディさん

 領主様が聞いてきた。


「君はニコ君と言ったか?」

「おう」

「ニコ君は何歳なんだ?」

「俺は9歳だ。ほら、ロロ。両手で持たないと零すぞ」

「あい」


 ニコ兄に言われた通り、両手でコップを持ってゴクンゴクンと飲む。


「ぷは……」

「ほら、口の周り」

「にこにい、またちゅくのら」

「分かってるよ。でも1度拭いとこう。痒くなるぞ」

「ん……」


 と、俺は大人しくニコ兄に顔を拭かれる。


「レベッカも同じ9歳だ」

「そうですね。母上が甘やかし、私達が無関心だった。その所為です」

「それでも、駄目な事は駄目です。悪い事は悪いのです」


 お、リア姉が発言しているぞ。


「いくら甘やかされたからと言って、人を傷付ける事に罪悪感を持たないのは、その子自身にも問題があるのではないですか? 思いやりとか、想像力の欠如ですよ。痛いだろうなぁ、悲しいだろうなぁ、辛いだろうなぁ。それを考える事が出来ないのですから」


 お、リア姉がマトモな事を言ってるぞ。

 リア姉だけでなく、みんな俺には何も言わないけどずっと怒っていたのだろう。


「おや、朝からお客様なの?」


 呑気な声が聞こえた。毎度お馴染み、ディさんなのだ。

 チラッと、領主様とクラウス様を見ていた。


「でぃしゃん、おはよ~」

「ロロ、おはよう。おやおや、お口の周りに卵が付いているよ」

「うん、あとれふくのら」

「そう、後でなの?」

「うん、またちゅくのら」

「アハハハ、そうなんだ~」

「さっき拭いたとこなんだよ」


 そう言いながら、ニコ兄がまた拭いてくれる。でも、また付くよ。マジでさ。エンドレスなのだよ。


「コッコッコッ」

「わふ」

「あー、またコッコちゃん出て来てるぞ」

「ほんとら」


 本当にね、どうして自由に出入りできるのかな? どうやっていつも出てくるのだ?


「フォーゲル卿、分かりますか? こんな温かい家庭を壊そうとしていたんですよ。こんな小さな子に酷い事をしたんだ」

「サルトゥルスル殿、それはもう……」

「兄弟4人とマリーさん達が、協力し合って健気に暮らしているんだ。あなた達が壊して良いものじゃない。あなた達は、自分の家族の事なのに無責任過ぎたんだ」


 ディさんはもしかして、領主様が来ているのを知って朝から来てくれたのかな?

 そんな気がする。だって、偶然なんて都合が良すぎるのだ。


「わふ」

「コッコッコッ」

「キュルン」


 あれ、ピカとチロだけじゃなく、コッコちゃんまで俺の側にやって来たぞ。もしかして、みんな俺を守っているつもりなのか? コッコちゃんまでも、そうなのか?


「だいじょぶなのら」


 ピカに手を伸ばして頭を撫でる。


「わふん」

「でぃしゃん、りょうしゅしゃまやくらうしゅしゃまも、傷付いているのら。あやまってもらったのら」

「そう、ロロはもういいの?」

「うん。みんなにたしゅけてもらった。帰ってこられたから」

「ロロ……すまない。本当に申し訳ない事をした」


 クラウス様が涙を流しながら、頭を下げた。隣にいる領主様もそうだ。流石に泣きはしていないけど、辛そうな顔をしている。

 自分の娘と奥さんなのだ。こんな事になって辛くない訳がない。


「君達にこれ以上、迷惑は掛けない。私達に出来る事があるなら、なんでも言って欲しい」


 もう充分なのだよ。俺はね。みんなはどうなのだろう? 見ると、さっきまで怒りだけだったのが、辛そうな顔をしているのだ。


「では、フォーゲル卿。一つだけ力を貸してくれませんか?」


 ディさんが言った。何なのだろう?

 俺は分からないから、黙って食べておこう。


「この子達が、何故兄弟だけで暮らしているのかご存知かな?」

「それは……私は教会で会った時にマリーから聞いている」

「そう。なら話は早いや。この子達を追い出した叔父夫婦の事、爵位継承の事を調べるのに手を貸してもらえませんか?」


 領主様は知らないのだろう。意味が分からないといった顔をしていた。

 俺がマリーと一緒に、初めて教会に行った時だ。その時に、クラウス様と出会った。

 マリーが簡単にだけど、俺達の事情を話していたのだ。


「レオ、勝手に進めてすまないね」

「いえ、ディさん。そんな事ありません。僕達では、貴族簿を閲覧する事ができないんです」


 レオ兄とリア姉は、諦めていなかったのだ。俺は何も知らなかった。

 のほほんと平和でいいね。なんて、思っていたのだ。


 ニコ兄とユーリアは、朝食を食べ終えると畑に出掛けて行った。マリーの作った大きなお弁当を持って。

 俺はというと……話を聞こうではないか。ムムムと、一生懸命お顔に力を入れてデンと座っていた。

 腕組みなんかしちゃおうか。ちょびっとお偉いさんぽくしてみよう。ちびっ子なんだけど。


「ロロ坊ちゃま、マリーと一緒にお庭へ出ましょう」


 えぇー、俺も話が聞きたいのだ。だって、俺は当事者なのに。


「ロロ、コッコちゃんを柵に入れておいてくれるかな?」

「れおにい、わかったのら」


 仕方ないのだ。俺はまだちびっ子なのだ。ディさんがいるから、大丈夫なのは分かっているのだけど。

 信じているのだよ、ディさん。


「こっこちゃん、ぴか、行くのら」

「わふ」

「コケッ?」


 マリーと一緒に外へ出る。コッコちゃんはみんな柵のお外に出ていたのだ。「クックック」「コッコッコ」と鳴きながら、みんな俺を見ているのだ。


お読みいただき有難うございます!

誤字報告も助かってます。

ちょっぴり真剣ムードですが、また明日も読むよ!と、応援して下さる方は、是非とも評価やブクマをして頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします!

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>「うん、あとれふくのら」 >「そう、後でなの?」 >「うん、またちゅくのら」 >「アハハハ、そうなんだ~」 >「さっき拭いたとこなんだよ」 ほっこりした!!
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