79ービオ爺とハンナとニルス
「とにかく2人共挑戦してみよう」
「ディ、何するんだ?」
ビオ爺が意味が理解できずに聞いている。これから、コッコちゃんをテイムしてもらうのだよ。コッコちゃんはお利口さんだから、きっと大丈夫なのだ。
ディさんが、テイムしてもらうんだと説明した。
「でないと、魔鳥だからさ」
「ああ、なるほど。ギルドに登録しないといけないのか?」
「そう。でも、ビオ爺はギルドに登録しているの?」
「俺もハンナもしているぞ」
「俺も! 俺もしてるぞ!」
驚いたのだ。ニルスが冒険者ギルドに登録していたのだ。
ニコ兄と同じ位だと思っていたのに。
「俺、10歳になったんだよ。だからつい最近登録したんだ」
ほう、10歳か。ニコ兄は9歳なのだ。1歳違うだけだったのだな。
孤児院の子が、しかも10歳で冒険者として登録をして何をするのだ? まさか魔獣を狩ったりはできないだろう?
「街の掃除をしたり、薬草を採取するクエストを受けるんだ。そしたら孤児院のおやつが増えるんだよ」
「ひょぉ~!」
おやつなのか!? おやつの為に冒険者登録なのか?
冒険者ギルドに登録しているからと言って、みんなが魔獣を討伐したりダンジョンに挑む訳ではないのだそうだ。
身分証明替わりに登録する人もいるらしい。役所で身分証明を発行してもらうと手数料を支払わないといけない。でも、ギルドなら無料だ。
時々、お掃除や薬草採取等の簡単なクエストを熟していると、登録を抹消される訳でもないしお小遣いにもなる。
だから結構、冒険者ギルドで登録をしている人はいるらしい。
俺はそんな事、全然知らなかったのだ。リア姉やレオ兄みたいに、戦えないと駄目だと思っていたのだ。
「なんでも選択肢の多い方が良いだろう? だから読み書きや簡単な計算も教えているんだ。いつかはこの孤児院を出ていかないといけない。自分で稼げる様にならないとな」
そうか。出て行かないといけないんだな。それは少し寂しいのだ。世の中、世知辛いね。
コッコちゃんのテイムに、先ずはビオ爺が挑戦だ。ディさんが、テイムの仕方を説明したのだ。
「え……前に聞いたけど、あれ本当に言うのか?」
「ビオ爺、本当なんだよ」
また『お座り』を疑っている。どうしてなのだ? 力尽くでテイムするよりはずっといいのだ。
コッコちゃんは弱いから、力尽くでもなんとかなりそうだけど。
「僕も言ったんだ」
「僕も」
ディさんとレオ兄だ。俺が発見者なのだぞぅ。ふむ、ちょっぴり胸を張ってみよう。
「アハハハ、そうだね。ロロが最初に発見したんだ」
「ロロか!?」
「しょうなのら。お手々をだしていうのら」
「そうか。よし、やるぞ」
おお、ビオ爺はやる気なのだ。コッコちゃんに掌を向けて、さあ張り切って言ってみよう。
「お座り!」
「ククッ」
「あ! 本当に座ったぞ!」
ふふん。な、言った通りだろう。あと2羽も挑戦したのだ。
「でも、ビオ爺。1羽しか座らないね」
「おう、どうすんだ?」
「ハンナ、やってみようか?」
「えぇー、私ですかー?」
どうして躊躇するのだ? だから本当に戦うよりマシだろう?
「分かりました! やってみます!」
そして、ハンナがチャレンジしたのだ。でも……
「コッコッコ」
「あ、あら?」
コッコちゃんは知らん顔をして歩いているのだ。ああ、残念。駄目だったね。
「俺! 俺もやるぞ!」
ここで登場、ニルスだ。
「ニルスは……おや、意外に魔力量があるね。ビオ爺とハンナより多いよ」
おう、そうなのか? ディさんが精霊眼で見ている。
なら、ニルスは勉強したら魔法も使えるようになるかも知れないね。
「俺、クリーンならできるぞ」
「ひょぉーッ!」
俺はまだできないのだ。と、言うか忘れていたぞぅ。
いつもマメに、レオ兄がしてくれるから不便はなかったのだ。家に帰ったら挑戦してみよう。
「手を出すんだな」
「しょうしょう、しょして『おしゅわり』ら」
「おう、お座り!」
「ククッ」
「あ! 座ったぞ!」
「アハハハ、ニルスよくやった!」
何故かビオ爺が爆笑している。そんなに可笑しいか? ビオ爺だって『お座り』と言ったのに。
「ハンナ、落ち込むんじゃないよ」
「だって、ビオ爺。私は出来なかったのにぃ」
ああ、そっちなのか。大人は恥ずかしいって方じゃなかったのだ。まだ10歳のニルスができたのに……て、方だった。
でも、無事にテイムできて良かったのだ。残りの2羽がニルスの言う事を聞いてお座りしたのだ。おやや? コッコちゃんがニルスに寄って行っているぞ。
「でぃしゃん。こっこちゃん、にるしゅがしゅき?」
「え? おや、本当だね。コッコちゃんは男の人が好きなのかな?」
そういえば、レオ兄にディさんも男の人なのだ。そんな好みがあるのか?
何はともあれ『うまいルルンデ』や、教会で無事にコッコちゃんをテイムできて良かった。
帰りにみんなで冒険者ギルドに寄ったのだ。うちのコッコちゃん達を登録する為なのだ。
「おう、ロロ! 無事で良かったな!」
ここでも言われた。ギルマスだ。ギルマスも衛兵に連絡したり、色々お世話になったらしい。
色んな人にお世話になって、心配も掛けてしまったのだ。
俺達は、家を追い出されて行くところがなかったんだ。マリーの故郷だったこの街にやって来た。この街に来たばかりの頃は、知り合いなんて一人もいなかった。
それが、たった1年でこんなに頼りになる人達がいてくれる。心配してくれる。とってもとっても有難い事なのだ。
お読みいただき有難うございます!
ご存知の方もおられると思いますが、現在リリとハルの書籍化作業をしております。
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