76ーオスカーさんとメアリーさん
「あぁ、ピカは神獣だからだろう。神獣は別格だからね、みんな恐れ多いんだよ」
「でぃしゃん、しょうなの?」
「うん、多分ね。獣や魔物ってそういうのが分かるんだよ。僕も分かるけどね」
と、人差し指を綺麗なお顔の横で立てながら、またまた長い睫毛の目でバチコーンとウインクをした。うッ……目がやられちまうぜ。
ディさんは『神獣』と言う。泣き虫女神は『神使』と言う。呼び方は違うけど、神の使いや眷属だという事に変わりはないらしい。俺は、よく知らないけど。
『うまいルルンデ』に到着すると奥さんがいた。目元の小さなホクロが、ちょっぴり色っぺーのだ。やっぱり今日も、胸のところに『うまいルルンデ』と店名の入ったエプロンをしている。
それ、かっちょよくないぞぅ。どうしてそのデザインにしたのだ?
「あら、いらっしゃい。無事で良かったわ、心配したのよ〜」
「こんちは~」
と、小さな手をフリフリする。
「メアリーさん、フォリコッコを連れて来たの。外から裏に回る方がいいわよね?」
「本当に捕まえてくれたの!?」
「ええ、4羽置いていくわ」
「まあ、4羽も!? 嬉しいわ! 沢山卵料理を出せるわね」
「奥さん、大きな卵を毎日産むから楽しみですね」
エルザだ。もうお仕事をしているのだ。
エルザはまだ18歳だから、朝から夕方までなのだ。暗くなるまでに帰ってくる。暗くなると、道中危ないからな。
夕方からは、また違う人がお仕事に来るらしい。ご主人のいる厨房にも、もう1人料理人がいる。
「ププーの実もあるのら。ぴか、だして」
「わふん」
ピカが、ププーの実をゴロンゴロンと幾つか出した。
「まあ! これがププーの実なのね! 甘い匂いがするわ」
「うまうまなのら」
「ロロ、有難う。元気そうで安心したわ」
奥さんに優しく抱きしめられ、背中をポンポンとされたのだ。なんだか、ふんわりと良い匂いがするのだ。
いつもお世話になっているし、心配も掛けてしまったのだ。それより、メインはコッコちゃんなのだ。
「本当、楽しみだわ。ねえ、あんた! 裏に回ってもらう!?」
「おう! レオか!? ロロはいんのか!?」
奥の厨房から、大きな声が聞こえてくる。
「一緒に来ているわよ!」
「おう!」
返事をしたかと思ったら、直ぐに厨房からご主人が出てきたのだ。
「ロロ! 心配したぞ!」
「あい、ありがと」
俺が攫われた時に、ご主人にはお世話になったらしい。ペコリと頭を下げておこう。有難うなのだ。
「アハハハ、元気そうで良かった!」
「あい、げんきなのら」
ワシワシと頭を撫でられる。ギルマスとは違うけど、大きな手だ。
「本当に、ロロが無事で良かった」
なんだか、ウルウル目で見られちゃったぞ。マッチョなのに。
「オスカーさん、フォリコッコはどうしましょうか?」
「裏に回ってくれるか?」
「分かったわ。ディさん、裏ですって!」
「ディさんも来ているのか?」
そうなのだよ。何故、ディさんが来ているのか説明したのだ。
建物の外に出て、直ぐ横に入り裏へ回る。『うまいルルンデ』の裏は、少し広くなっていて物置きや厩舎があった。馬さんが2頭いた。それでも、コッコちゃんを飼えそうな広さは充分にある。
その裏庭で、コッコちゃんのテイムを試すのだ。
「なるほど、テイムか。俺は出来ねーと思うぞ」
「魔力量が少ないからかな?」
「なんだ? ディさん、分かるのか?」
「うん、分かるよ。オスカーさんより、メアリーさんの方が魔力量は多いね。でも……オスカーさんは魔力操作で魔力量をカバーしているんだ」
そんな事も分かるのか。さすが、なんとか眼なのだ。
「ロロ、精霊眼だよ」
「しょうらった」
「ぷふふ」
レオ兄に笑われてしまったぞ。だって覚えてなかったのだ。
「オスカーさんで試してみよう」
なるほど、なるほど。あの魔法の言葉を試すのだね。
「何すればいいんだ?」
「掌をフォリコッコに向けて……」
「おう、向けて……」
「目を見て言うんだ」
「おう、目を見てか……」
「『お座り』てね」
「なんだ?」
「だから『お座り』だよ」
「マジかよ……」
大マジなのだ。ふむふむと、頷く。
さあ、張り切って言ってみよう。
「よし、目を見て……お座り」
「コケッ?」
「ありゃりゃ」
コッコちゃんが、何かしら? と、首をヒョコッと傾げている。お座りしないパターンもあるのだね。リア姉と一緒なのだ。
キョトンとしているコッコちゃん4羽。小首を傾げている。
何か言いましたか? て、顔をしているのだ。
「おや、駄目だったね。あれ? オスカーさん?」
オスカーさんが、何故かしゃがみ込み両手で顔を覆っている。プルプルと震えているぞ。どうした? そんなにショックだったのか?
「いや、マジで……超恥ずかしいぞ。真剣に言ったのによぉ」
あぁ、そっちなのか。
マッチョなオスカーさんが、超真剣に『お座り』と言うのはとても良かったよ。何が良かったのか分からないけど。
「ふふふふ」
あ、奥さんが笑いを堪えきれてないぞ。肩が揺れているのだ。
「じゃあ、メアリーさん。やってみようか」
「え? ディさん、あ、あたし?」
「そうだよ。オスカーさんが駄目だったんだから」
「えぇ〜……」
とっても微妙な顔をしている。
メアリーさんが、戸惑っているから俺が良い事を教えてあげよう。
「でぃしゃんも、やったのら」
「マジか?」
「もちろんだよ。捕まえる時に僕もやったんだ」
どうして、そこで目を伏せる? 分からないなぁ。俺の世紀の大発見なのだぞぅ。コッコちゃんが、お座りするなんて誰も知らないのだ。
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