75ークールビューティー?
「いたらきましゅ」
「いただき!」
ニコ兄と2人で、フォークにお魚の唐揚げを刺して、あぁ~んとお口に入れる。
噛むと、サクッと音がする。そしてお口の中に、ほんのりと甘みを感じるお魚さん。
「ぴょぉ〜! うまうまッ!」
「な、超美味いな!」
「あら、本当。美味しいわ」
魔魚の唐揚げ、みんな大絶賛なのだ。
お魚なのに口に入れるとジュワッと旨味が溢れてくる。肉厚なのだ。皮もパリッパリで香ばしくて美味しい。
「さくさくふわふわら」
伝わるかな? 俺の辿々しい表現で。
お肉じゃなくて、お魚だからフワッフワなのだ。
そして、衣がサックサクだ。これは、マリーが上手なのだ。あんなに大雑把な作り方だったのに。
これはあれか? 沢山作ると、なんでも美味しいと言う法則なのか? 美味しいから良いのだけど。
「ぴか、うまうま?」
「わふッ」
「キュルン」
とっても美味しいらしい。今日はチロも唐揚げを食べている。いつもは胸肉を茹でたものなのだけど、唐揚げをブチッと噛み切りながら食べている。
みんな笑顔なのだ。こんな平和がいいね。ちょっと事件があった後だから余計にそう思う。
エルザが、お仕事から帰ってきて驚いていた。
「やだ、めっちゃ増えてる!」
アハハハ、そうなのだよ。コッコちゃんの事を言っているのだ。
その日、ディさんはお泊りして行った。
翌日、早速コッコちゃんを届けに行く。それにディさんが付き合ってくれるのだ。
うちだとコッコちゃんは大人しくしているけど、もしも、教会や『うまいルルンデ』で飼えそうもなかったら、うちに連れて帰ってくるんだって。
「誰か、テイムできそうな人がいれば良いんだけどね」
なるほど~、そうだったのだ。
うちではレオ兄と俺がテイムしているらしい。偶々、そうなったのだ。
まさか、掌を前に出す事がそうなるなんて思わなかった。だって全然知らなかったし、かっちょいいと思っただけなのだ。
「ロロ、レオ兄のそばを離れるんじゃないぞ」
「にこにい、らいじょぶなのら」
「ニコ、大丈夫だよ。ちゃんと見ているから」
「おう。じゃあ、いってくる!」
「おばあちゃん、いってきます!」
「あらあら、またお弁当を忘れているわよ」
「あ、ありがとう!」
ニコ兄が何度も振り返りながら、畑に出掛けて行った。
俺はニコ兄が、見えなくなるまで手をフリフリしていたのだ。
「ニコは本当に心配性になっちゃったね」
「うん、しかたないのら」
「そうだね。もう少ししたら落ち着くだろう」
「れおにい、しょお?」
「うん、多分ね」
多分かぁ~。それに、ニコ兄だけじゃないんだよなぁ。もっと手強いのがいるのだよ。
さっきから俺にピトッとくっついて、俺のお腹をぷにぷにと触っている奴をジトッと俺は見る。
「なによ、ロロ」
「りあねえ、くっちゅかないれ」
「そんな冷たい事言わないでよ」
そうなのだ。リア姉がやたらとくっついてくる。それも、お腹を触ったり、ほっぺにスリスリしながらなのだ。
これは心配性と言うのか? 今迄遠慮していたのが、しなくなっただけではないのか? タガが外れたのではないか?
「みんなロロが大好きなんだよ」
「でぃしゃん、ボクもみんながしゅきら」
「ロロー!」
ああ、ほら。ディさんと話しているのに、抱き着いてきたよ。しかもまた俺のお腹をプニプニしている。やめれ。
「れも、じゅっとくっちゅいてるのはらめ」
「ロロォ~」
「りあねえ、らめ」
「分かったわよぅ」
「アハハハ」
ほら、ディさんも笑ってるぞ。シャキッとしようぜ。
普通にしていたら、リア姉はどちらかというとクールビューティーなんだからさ。本当はちょっぴり脳筋気味なのを上手く隠せているのだ。
「じゃあ、マリー。僕達も行ってくるよ」
「はいはい、お気をつけて。ピカ、ロロ坊ちゃまをお願いね」
「わふん」
ああ、マリーも少し心配性になっている。マリーの目の前で、攫われたのだから仕方ないのだ。
リア姉とレオ兄に、手を繋いでもらって街まで歩く。トコトコと歩いて行く。
俺達の前には、ディさん。後ろにはピカだ。完璧な布陣だよ。
そして前を歩くディさんは、コッコちゃんが7羽繋がれた縄を持っている。7羽だよ。とっても賑やかなのだ。
ずっと『コッコッコ』『クックック』と何かを話している。キョロキョロしながらだ。「どこに行くんだろうね~」とでも話しているのかな?
でも、横に逸れたりせずちゃんと並んで付いてくる。お利口さんなのだ。
街中に入ると、知らない人達が声を掛けてくる。
「チビ、無事で良かったな!」
「助かって良かったわ!」
「なんだ!? でっかい鳥だな!」
と、声を掛けてくれるのだ。コッコちゃんにも驚いているよね。
「みんなしってるのら」
「そりゃそうだよ、街中で攫われたんだから沢山の人が見ていたんだ」
「しょっか」
「それに、ピカは目立つからね」
「ぴか?」
「そうだよ、こんなに大きなワンちゃんは見た事がないだろう?」
「ん~、ぴかしかしらない」
それどころか、他のワンちゃんをあまり見た覚えがないのだ。
「そうね、あんまり見ないわよね」
「ね~」
「わふ」
「え、しょうなの?」
「わふん」
え、それは知らなかったぞ。
「ねえ、ロロ。ピカは何て言ってるの?」
「ぴかがいるから、わんちゃんは出てこないんらって」
と、俺は通訳する。
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