72ーコッコちゃんマスター
「にこにい」
「あ、ロロ。起きたか?」
「こっこちゃん」
ニコ兄がすぐ隣にいてくれたのだ。手にはあの白いマッシュを持っている。ニコ兄は好きだね。きっと、どうやって育てようか考えているのだろう。
俺はお座りしているコッコちゃんを指差した。
「レオ兄がやったんだ。やっぱ座るんだよ! アハハハ」
「本当、意味が分かんないわ! ウフフフ」
「アハハハ! ダメ、笑いすぎてお腹が痛い! アハハハ!」
みんな爆笑なのだ。特にディさん、大爆笑なのだ。目に涙を溜めて笑っている。大爆笑していても、笑顔がとってもキラキラしているのだ。
「おしゅわりしゅるのら」
「な、不思議だな」
本当、不思議なのだ。きっとコッコちゃんは、俺達が話している言葉を理解しているのだろう。それだけお利口さんなのだ。
「あ、またこっこちゃんら」
「やっぱ、ププーの実を食べに来るんだな」
「しょうねー」
コッコッコッと鳴きながら、頭を前後に動かしてテケテケと歩いて来たコッコちゃん。
本当に、警戒心がないのだね。そんなに無防備に、人前に出てきたら捕まってしまうよ。捕まえちゃうけど。
「でぃしゃん、いうのら」
「え、僕?」
「しょうら。こっこちゃんに手をむけて『おしゅわり』ら」
「よし! 僕も捕まえるぞ」
ディさんが、ちゃんと構えてコッコちゃんを見つめるけど、コッコちゃんはププーの実に気を取られていてこっちを見てくれない。キュートなお尻を向けている。
よし、俺が直々に伝授して進ぜよう。
「でぃしゃん、マネしゅるのら。こっこっこって」
「え……そうなの?」
「しょうなのら」
「分かった。コッコッコッ」
すると、ヒョイとこっちを見たコッコちゃん。何事かとこちらに歩いてくる。頭をヒョコヒョコと前後に動かして『コッコッコッ』と鳴きながらだ。ディさんは、超真剣モードなのだ。
「でぃしゃん、目をみていうのら」
「よし、目を見るんだね。手を翳して……」
ディさんがやるとかっちょいいのだ。何故に? 不公平なのだ。
さあ、魔法の言葉を張り切って言ってみよう。
「お座り」
「ククッ」
「座った!」
「ねー、しぇいこうらねー」
コッコちゃんが大人しくお座りしたのだ。これで、ディさんもコッコちゃんマスターなのだ。
「あッ! また出て来たぞ!」
ニコ兄が指をさしながら大きな声で言った。でも……
「こっちからもだ!」
「ロロ、あっちにもいるわよ!」
「こっちもだ!」
ありゃりゃ、あっちもこっちも大変なのだ。全部で4羽も出てきた。コッコちゃんもププーの実を狙っているんだね~。もう残り少ないからだね。ふむふむ。
「ひょぉ~!」
「ロロ、どうしよう!?」
どうしようと言われても。3歳のちびっ子に指示を求めるのは止めよう。ディさんは1番年上なのだ。何百歳だっけ?
「ロロ、呑気にしてないで! どうすんだよ!」
「らからぁ~……」
俺にだって分からんぞ。俺はまだ寝起きなのだ。まだちょっぴりボ~ッとした頭で考える。考えても分からないものは分からない。
ええい、やけくそなのだ。
「ふゅ~……」
大きく息を吐いて、足を肩幅位に開いて立つ。うん、とっても幼児体形だ。お腹がポヨンポヨンしているぞ。今はお腹が一杯だからね。
それにしても、ディさんとえらい違いだ。いや、そんな場合じゃない。
俺は、両手をコッコちゃん達に向けて大きな声で言った。
「おしゅわりぃッ!!」
「ククッ」
「クッ」
そう鳴きながら、コッコちゃん達はみんな一斉にお座りをしたのだ。
合計4羽のコッコちゃん。あっちでも、こっちでもお座りをしながら、キョトンとして俺を見ている4羽のコッコちゃん。
豆鉄砲を食らったような顔とはこの事だろう。
コッコちゃんも、何が何だか分かっていないのだ。なのに、ちゃんとお利口さんにお座りをしている。条件反射なのか? 『お座り』が百発百中なのだ。
「ロロ!」
ディさんが、大きな声で呼びながらやって来て俺の両肩を掴む。
ドアップだ。イケメンのドアップは心臓に悪いのだ。やっぱディさんは良い匂いがするのだ。
「どうやったの!? 何をどうしてこうなった!?」
「おしゅわりなのら」
「いやいやいや……」
おや、いつもより『いや』が多いのだ。
「ロロ、これは凄い事なんだよ」
「え……しょう?」
「そうだよ。一度に何羽テイムしたんだよ」
テイムなのか? そうなのか? ただお座りしただけじゃないのか?
「いやいやいや、テイムしているよ。試しに呼んでごらん?」
「え……しょう?」
そうか? そんなに言うなら試しに呼んでみようではないか。
「こっこちゃん、おいれ~」
「ククッ」
そう鳴きながら、コッコちゃんが4羽、俺を目掛けてやって来たのだ。
俺の頭より、少しだけ高い所にコッコちゃんの頭が4つ。コケッと鳴いている。ちょっと、引いちゃうよ。俺、コッコちゃんに埋もれちゃうよ。うぷッ。
「わふッ」
ピカが一鳴きすると、コッコちゃんは俺の前に整列してまた座ったのだ。
「ぴか、ありがと」
ピカが、整列してお座りだよとコッコちゃんに言ってくれたのだ。
よし、ワシワシと撫でてあげよう。
「アハハハ! ロロは本当に奇想天外だね~!」
とにかく、捕まえられたのだから良しとしよう。
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