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☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第1章 ルルンデで生活するのら

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70ーディさんの弓

「ディさん、あれ育てられないか?」

「あれは無理だね。薬草と違ってキノコの一種だから湿度や土が違うと育たないんだ。そもそも、土から生えていないだろう?」


 へぇ〜。でも、キノコなら合う木を持って帰ったらいいのではないのかな?

 ふむふむと顎に手をやる。ちびっ子なのに、熟年感があるぞ。


「ロロ、何考えてんだ?」

「にこにい、マッシュが生えてるあの木を、しゅこし持ってかえっても無理なのかな?」

「なるほど、木か……」


 ディさんが、魔魚に小刀をブッ刺しながら考えている。手は休めないのだね。リア姉とレオ兄が、次々に釣っちゃうから。


「ちょっとペースが早いよ。こっちは僕1人なんだよー」


 なんて言いながら、お魚さんの頭をぶっ刺している。あぁ、無情なのだ。


「ロロ、木を持って帰ってどうすんだ?」

「え……わかんない」

「なんだよぉー、肝心のとこが分かんないのかよぉ」

「えへッ」


 だって俺は、椎茸を栽培している場面をテレビのニュースで見ただけなのだ。

 そんな詳しい知識は全然ない。


「ニコ、あの木を少し切って持って帰ってみよう。ダメ元だ。レオ、リア、もうお魚はいいだろう!?」

「そうですか?」

「でも、ギルドで高く売れるのよ! 新しい剣帯が欲しいの!」


 あらあら、リア姉はお小遣い稼ぎになっているのだ。まだ釣りたいらしい。

 リア姉が使っている剣は、父から贈られたものなんだ。リア姉が学園へ入学する時に貰ったそうだ。

 だから、リア姉はとっても大事にしている。どんなに疲れていても、毎日必ず剣の手入れをする。


「この剣が、私を守ってくれている気がするの」


 と、本人も言っている。大切な剣なのだ。剣帯も、父から貰った物の筈なのだ。リア姉の瞳の色と同じダークブルーで、綺麗なお花模様の刺繍がしてある。絶対に1点モノだろう。


「切れてしまいそうなのよ。だから、仕方ないわ」


 なるほど。それだけ、使っているという事なのだ。

 剣帯かぁ。俺にはまだ作れそうもないのだ。作れたらなぁ。皮に模様を彫って凝るのになぁ。

 刺繍じゃなくて、皮に模様を彫刻するのだ。もちろん付与もしたい。もっと手が大きくなったら挑戦してみたい。


「何? ロロ」

「でぃしゃん、ちゅくれないなぁって思って」

「剣帯を作りたいの?」

「うん、リア姉の。きれーなもようをほるのら」

「ロロは物作りが好きなの?」

「ん〜、わかんない」


 だって、俺の基準はリア姉やレオ兄、ニコ兄に必要かそうでないかなのだ。

 必要なら、それにお守りを込めて作りたい。ポーションだってそうなのだ。

 リア姉とレオ兄が、もしも怪我をした時の為なのだ。


 そろそろ、お腹が空いたのだ。マリーのお弁当を食べたいぞぅ。


 ――キュルルル……


 ほら、俺のお腹が鳴っちゃった。ペコペコなのだ。


「ロロ、お腹空いたな」

「うん、にこにい。しゅいたのら」

「そうだね、お弁当にしよう」


 ディさんが、まだ魔魚を釣っているリア姉とレオ兄に声を掛けた。


「ロロのお腹が鳴ってるよー!」

「アハハハ! お弁当にしよう。姉上」

「分かったわ」


 もう沢山釣ったのだ。ディさんが次から次へと、小刀で頭をブッ刺しピカが収納していく。

 良い臨時収入になるのだ。


「僕も新しい弓が欲しいんだ」


 おや、レオ兄もらしい。レオ兄は、普段は主に槍を使う。その槍も、父から貰ったものだ。レオ兄も、毎日丁寧に手入れをしている。

 弓はこの街に来て、冒険者をする様になってから買ったのだ。だからきっと、今使っている弓より良い物が欲しいのだろうね。レオ兄は弓も上手になったから。


「レオは弓を使うんだ」

「はい、ディさん。僕は、槍と弓です」

「僕は弓には煩いよ」


 何故なら、エルフだからだそうだ。

 エルフはみんな弓が得意なんだって。勿論、ディさんも弓を持っている。


「国の長老に作ってもらったんだ。宝物だよ」


 そう言って見せてくれたのだ。

 ほうほう、使っている木自体がきっと良い物なのだ。何も知らない俺でも、良い物だと分かるぞ。

 葉っぱの模様が彫ってあり、意匠を凝らした一級品だね。て、ディさん、今どこから出したのだ? 手品なのか? ディさんは手品までお得意なのか?


「ああ、マジックバッグだよ。エルフはみんな持ってるよ。そうか、レオ達は持っていないんだね」

「だってディさん、マジックバッグは高いですよ」

「そうだったね。エルフは作れる人が結構いるから」


 ほう、エルフって凄いのだ。ディさんが持っていたのは、腰のベルトに通してある小さなポーチだ。それがマジックバッグなのだという。いいなぁ。

 俺達の国では高価なマジックバッグが、エルフの国では普通にみんな持っている。

 弓と一緒に長老さんから貰うのだそうだ。


「エルフは長命種だけど、子供が少ないんだよ。だから、そんな事ができるんだね」


 しかも、話を聞いて驚いたのだ。エルフは弓に矢を使わないのだそうだ。


「エルフは魔法が得意だからね、魔法の矢を射るんだ」

「ひょぉー!」


 びっくりなのだ。魔法の矢って、一体何なのだ? 是非とも、見てみたいぞぅ。


「ロロ、あそこに魔獣が出て来たね」

「うん」


 俺達に気付いたのか、ププーの実を食べに来たのか。それほど大きさのない、猪と豚を足した様な魔獣が、のっそりと現れたんだ。魔獣の証拠に、額に小さな角が2つある。


お読みいただき有難うございます!

感想や誤字報告も有難うございます。

これからも読むぞー!と、応援して下さる方は、是非とも評価やブクマをして頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします!

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