68ーディさんも一緒
そして、俺はまだベッドの中なのだ。もう大丈夫なのに。
翌日、ディさんが来てくれた。
ディさんも、夫人や令嬢がどうなったのかには触れなかった。
だから、未だに俺は知らない。でも、いいか。と、思うのだ。ちゃんと、みんなのいる家に帰って来る事ができたのだから。
それから暫くして、リア姉やレオ兄、ニコ兄と一緒にまた森へ向かっていた。今度は宣言通り、ディさんも一緒なのだ。
もちろん、コッコちゃんを捕まえる為だ。
「れもなぁ〜」
俺はニコ兄と、お手々を繋いでトコトコと歩いている。
今日もいいお天気なのだ。そよ風がとっても心地いい。
「ロロ、どうした? どっか痛いのか? 疲れたか?」
「にこにい、ちがうのら。まらププーの実が生っているか心配なのら」
「そうだな、コッコちゃんはププーの実を食べに出て来るんだもんな」
「しょうなのら」
「ロロ、大丈夫だよ。少し上流に行った場所ならまだ生ってるよ」
「でぃしゃん、しょうなの?」
「そうなんだよ。話を聞いたオスカーさんが、欲しいって言ってるんだ。ププーの実を食べた事がないんだって。コッコちゃんの卵も欲しいそうなんだ」
誰? オスカーさんって誰なのだ?
「ロロ、知らないのか?」
「うん、にこにいはしってるの?」
「『うまいルルンデ』のご主人だよ」
「あぁ〜」
あのマッチョの人なのだ。そんなお名前だったのだな。
「え? 『うまいルルンデ』でも、コッコちゃんかうのかな?」
「らしいよ。美味しい卵料理を出すんだって」
「へぇ〜」
俺が目覚めた時、ニコ兄がコッコちゃんの卵をお礼に持って行った。きっとその時に気に入ったのだ。だって、とっても美味しいのだから。
なんて、呑気な話をしているけど。もう、俺は元気なのだ。元通りだ。
女神のお陰で、目覚めたらどこも痛くなかったし、もちろん後遺症なんてなかった。
もしかしたら、怖い気持ちが残ってトラウマになってるかなぁ? なんて、思ったりしたんだけど、それもなかった。
起きられる様になってから、ピカに乗って表をウロウロしていたのだ。
心も癒すって、女神が言っていたのだ。そのお陰かもしれない。
「わふ」
「ぴか、らいじょぶら」
「キュルン」
「ちろも、らいじょぶらよ」
あれから、ピカとチロが少し心配性になった。無理もない。
ピカとチロは、俺がどんな状態なのか、最初から最後まで見ていたのだから。
レオ兄達が見る前に、ディさんが回復魔法を使ってくれて良かったよ。
森に入る前に、ピカに乗せてもらう。相変わらず、森に入ったら何処からか魔獣が出てくる。
でも、ピカの魔法で瞬殺だ。強いのだ。
「ピカは強いねー。僕の出番がないじゃない」
「でぃしゃんもちゅよい?」
「ロロ、当たり前じゃないか。だって、ディさんはこの街で1人だけのSSランクなんだぞ」
ディさんがSSランクだと言うのに、何故か説明してくれたニコ兄が自慢気なのだ。
「え……1人らけ?」
「そうだ。知らなかったのか?」
「しらなかったのら」
まさか、この街で1人だけだとは思わなかった。いつも、特盛サラダを食べているのに。
「ふふふ。ディさんはね、これでも強いんだよ~」
「でぃしゃん、しゅごいね~」
「アハハハ。ロロ、有難う」
もう直ぐ川だ。水の音が聞こえてきた。でも、その前には大きな岩がある。それを越えなきゃいけない。
「ロロ、ピカ、大丈夫?」
「れおにい、平気なのら」
「わふん」
『こんな岩なんか、へっちゃらだよ』と、ピカが言っている。
その通り、身軽にヒョイヒョイと登っていく。それより、驚いたのがディさんだ。
「ニコ、おんぶしてあげよう」
「えぇー」
「ほら、いいからいいから」
ニコ兄をおんぶしたディさんは、トンとジャンプした。すると、フワリと浮いて岩の上に着地したのだ。
まるで、ディさんの背中に翼があるみたいなのだ。天使の様な翼がさ。
「うぅぅわッ! スッゲーッ!」
「アハハハ。どうだい? ディさんは凄いだろう?」
「スゲー!」
ニコ兄の語彙力が、ちょっぴり悲しい。
いいなぁ、俺もおんぶして欲しい。
「わふ」
「え、ぴか」
「わふぅ」
アハハハ、ピカが『僕が乗せているのに、僕じゃ駄目なの?』と、言ってきた。
そんな事はないのだ。ちょっとだけ、いいなぁ~って思っただけなのだ。
「わふ」
ピカったら『安全第一』なんて言ってるよ。ちょっと過保護になっちゃってるよね。
「キュル」
あらら、チロもだ。『危ない事は駄目だよ』て、言われたのだ。
「あぶなくないのら」
「わふぅ」
「キュルン」
はいはい、分かったよ。大人しくしておくのだ。
岩を越えると、川は直ぐそこだ。前に来た時は沢山生っていたのに、ププーの実が全部落ちてしまっていた。
「ありゃりゃ」
「もう、時期が遅いんだよ」
「ね~」
「まだ、上流に行くよ」
「れおにい、らいじょぶ?」
「ん? ププーの実かな?」
「しょう。ププーの実がないとコッコちゃんこないのら」
「大丈夫だよ。ちゃんと確認してあるからね」
そうなのか。いつの間に?
川に沿って上流へと移動する。暫く歩いたのだ。
ププーの木もチラホラとあるけど、実が生っているのは少ないのだ。
どんどん、上流へ歩いて行く。上流へ行くと出て来る魔獣も大きくなってきた。それでも、ピカは瞬殺なのだ。
「ピカ、倒した魔獣も収納しておいてよ」
「わふん」
きっとギルドで売るのだ。お肉は美味しくないのかなぁ?
「美味しいお肉は、持って帰るから心配しなくていいよ」
やっぱレオ兄はよく分かっているのだ。お肉は大事。超大事なのだ。
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もうすっかりロロは元気で、ほのぼのムードに戻りました。
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