67ー泣かないで
俺が目を覚ますと、目に涙をいっぱい溜めたマリーの顔が最初に目に入ってきた。
あっという間に、マリーの目から涙が溢れ出し頬を伝って落ちる。
辛そうな顔をしている。まるで、マリーの方がずっと酷く傷付けられたみたいなのだ。
俺は、マリーの涙を拭こうとゆっくりと手を出した。届く前に、俺の手はマリーの両手でそっと握り締められた。そのままマリーは涙を流す。
「まりー……」
「ロロ坊ちゃま! マリーが付いていながらすみません!」
「まりー……泣かないれ……まりーはわるくないのら」
「坊ちゃま……!」
マリーの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。自分を責めないでほしい。マリーは全然悪くないのだ。マリーが無事で良かった。あの時、マリーまで怪我でもしていたらと思うと怖くなる。
「目が覚めて良かった。痛いところはないか?」
「れおにい……いたくないのら」
てか、体が強張っているぞ。動き辛いのだ。俺はどれだけ眠っていたのだ?
「2日も目が覚めなかったんだよ」
「え……」
マジなのか? そりゃ体も強張るぞ。
怪我の痛みはない。女神が癒してくれたからだろう。ディさんも回復魔法を掛けてくれたらしいし。気怠さはあるけど、2日も眠っていたからだろう。
「ロロ……ロロ……」
「ロロー……」
ああ、リア姉とニコ兄も泣いている。心配かけてしまったのだ。2人は号泣なのだ。涙の洪水で、お顔が大変な事になっている。こんなに心配かけてごめん。
「りあねえ、にこにい……」
「目が覚めて、良かったわ」
「うん……良かった!」
離れたところにユーリアもいた。眉を下げて静かに涙を流している。
「ゆーりあ、らいじょぶら」
「はい……はい! 良かったです」
エルザはお仕事かな? 俺は、みんなに心配を掛けてしまった。まさか、目覚めるとみんな揃っているなんて、思いもしなかったのだ。
ずっと付いていてくれたのか? 疲れた顔をしているのだ。
みんなが、良かったと涙を流している。無事に帰って来られて良かった。目が覚めて良かった。これで、一安心だと。
そんな感動の場面なのに、俺はピンチだ。激ヤバなのだ。
「れおにい……おきる」
「ロロ、まだ駄目だよ」
「れおにい、ぴんちなのら」
「ん? どうした?」
ヤバイ、とってもヤバイぞぅ。俺の3年の生涯で、1番のピンチと言っても過言ではないのだ。たった3年なんだけど。
いかんいかん。思い切ってレオ兄に告白しよう。
「れおにい、おちっこ」
「アハハハ、分かった。連れて行ってあげるよ」
俺はレオ兄に抱き上げられ、トイレに連れて行ってもらった。ヤバかった。ギリセーフなのだ。
あと、数歩遅れていたら直前でアウトだったかも知れないのだ。
「ふゅぅ……ヤバかったのら」
「アハハハ、もう元気だね」
「うん、らいじょぶなのら。お腹しゅいたのら」
「マリーにミルク粥を作ってもらおう」
「うん」
「はいはい、直ぐに作りますね。コッコちゃんの卵も入れましょうね」
コッコちゃんの卵入りのミルク粥、美味しそうなのだ。
出来上がるのを待つ間、リビングのソファーに寝かされた。ハーフケットを掛けてくれる。
体は痛くはないけど、少し気怠いなぁ。そりゃ、2日も眠っていたのだから、仕方ないか。部分的には、とってもスッキリしたのだけど。
「おばあちゃん、あたし『うまいルルンデ』に知らせてくるわ」
「そうね、お世話になっちゃったから。エルザも心配しているわ」
「うん」
「ユーリア、俺も行く」
「いいわよ、ロロ坊ちゃまに付いていて」
「いや、行くよ。お礼言わなきゃな」
「そうだね。ニコ、頼むよ」
「うん、任せて!」
「ニコ坊ちゃま、コッコちゃんの卵持って行ってくださいな。宜しく伝えて下さい」
「おう、分かった」
そう言って、ニコ兄とユーリアは出掛けて行った。
分からないのだ。どうしてここで『うまいルルンデ』が出てくるのだ?
「ロロが攫われた時に、お世話になったんだよ。『うまいルルンデ』のご主人が、衛兵とギルマスに知らせてくれたんだ」
おお、なんだか大事になっているぞ。
「ロロ、大変な事なんだよ。領主夫人と令嬢が起こした事件なんだ」
そうか……そうなんだな。あの人達はどうなったんだろう?
俺を攫ってぶん投げた男達と、夫人と強烈な令嬢。ピカがバインドして地下に放ってきたのだ。
俺が無事に帰って来れたということは、あの人達も回収されているだろう。
「ロロは気にしなくていいよ。もう、こんな事は起きない」
そうなのか? それならいいや。
「わふ」
「キュルン」
「ぴか、ちろ」
ピカが頭を擦り寄せてきた。チロはチョロチョロと俺の上に乗ってきた。
片手でチロを、もう片方の手でピカをワシワシと撫でる。
「ありがと」
「わふん」
「キュル」
なかなか起きないから心配した。
痛いとこある? ボク、癒すよ?
と、言ってくれている。もう、大丈夫なのだ。長く寝ていたから、ちょっぴりボーッとしているだけなのだ。
「さあさあ、出来ましたよ」
マリーがミルク粥を持って来てくれた。湯気がたっている。アツアツなのだ。とっても美味しそうなのだ。
2日ぶりに食べるのだ。涎がでちゃうぞぅ。
「ロロ、食べさせてあげるわ」
「りあねえ、じぶんれたべるのら」
「駄目よ、食べさせてあげるの」
「あい……」
ああ、リア姉の気持ちも分かるんだけどぉ……俺もう大丈夫なんだって。
リア姉の『食べさせてあげる』は、次の日も続いたのだ。
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昨日何故か急激にPV数が跳ね上がり146,541もありました。
驚きましたが、今日はもういつも通りに戻っています。^^;
一体何だったのでしょう?(-。-;
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