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☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第1章 ルルンデで生活するのら

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67ー泣かないで

 俺が目を覚ますと、目に涙をいっぱい溜めたマリーの顔が最初に目に入ってきた。

 あっという間に、マリーの目から涙が溢れ出し頬を伝って落ちる。

 辛そうな顔をしている。まるで、マリーの方がずっと酷く傷付けられたみたいなのだ。

 俺は、マリーの涙を拭こうとゆっくりと手を出した。届く前に、俺の手はマリーの両手でそっと握り締められた。そのままマリーは涙を流す。


「まりー……」

「ロロ坊ちゃま! マリーが付いていながらすみません!」

「まりー……泣かないれ……まりーはわるくないのら」

「坊ちゃま……!」


 マリーの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。自分を責めないでほしい。マリーは全然悪くないのだ。マリーが無事で良かった。あの時、マリーまで怪我でもしていたらと思うと怖くなる。


「目が覚めて良かった。痛いところはないか?」

「れおにい……いたくないのら」


 てか、体が強張っているぞ。動き辛いのだ。俺はどれだけ眠っていたのだ?


「2日も目が覚めなかったんだよ」

「え……」


 マジなのか? そりゃ体も強張るぞ。

 怪我の痛みはない。女神が癒してくれたからだろう。ディさんも回復魔法を掛けてくれたらしいし。気怠さはあるけど、2日も眠っていたからだろう。


「ロロ……ロロ……」

「ロロー……」


 ああ、リア姉とニコ兄も泣いている。心配かけてしまったのだ。2人は号泣なのだ。涙の洪水で、お顔が大変な事になっている。こんなに心配かけてごめん。


「りあねえ、にこにい……」

「目が覚めて、良かったわ」

「うん……良かった!」


 離れたところにユーリアもいた。眉を下げて静かに涙を流している。


「ゆーりあ、らいじょぶら」

「はい……はい! 良かったです」


 エルザはお仕事かな? 俺は、みんなに心配を掛けてしまった。まさか、目覚めるとみんな揃っているなんて、思いもしなかったのだ。

 ずっと付いていてくれたのか? 疲れた顔をしているのだ。

 みんなが、良かったと涙を流している。無事に帰って来られて良かった。目が覚めて良かった。これで、一安心だと。

 そんな感動の場面なのに、俺はピンチだ。激ヤバなのだ。


「れおにい……おきる」

「ロロ、まだ駄目だよ」

「れおにい、ぴんちなのら」

「ん? どうした?」


 ヤバイ、とってもヤバイぞぅ。俺の3年の生涯で、1番のピンチと言っても過言ではないのだ。たった3年なんだけど。

 いかんいかん。思い切ってレオ兄に告白しよう。


「れおにい、おちっこ」

「アハハハ、分かった。連れて行ってあげるよ」


 俺はレオ兄に抱き上げられ、トイレに連れて行ってもらった。ヤバかった。ギリセーフなのだ。

 あと、数歩遅れていたら直前でアウトだったかも知れないのだ。


「ふゅぅ……ヤバかったのら」

「アハハハ、もう元気だね」

「うん、らいじょぶなのら。お腹しゅいたのら」

「マリーにミルク粥を作ってもらおう」

「うん」

「はいはい、直ぐに作りますね。コッコちゃんの卵も入れましょうね」


 コッコちゃんの卵入りのミルク粥、美味しそうなのだ。

 出来上がるのを待つ間、リビングのソファーに寝かされた。ハーフケットを掛けてくれる。

 体は痛くはないけど、少し気怠いなぁ。そりゃ、2日も眠っていたのだから、仕方ないか。部分的には、とってもスッキリしたのだけど。


「おばあちゃん、あたし『うまいルルンデ』に知らせてくるわ」

「そうね、お世話になっちゃったから。エルザも心配しているわ」

「うん」

「ユーリア、俺も行く」

「いいわよ、ロロ坊ちゃまに付いていて」

「いや、行くよ。お礼言わなきゃな」

「そうだね。ニコ、頼むよ」

「うん、任せて!」

「ニコ坊ちゃま、コッコちゃんの卵持って行ってくださいな。宜しく伝えて下さい」

「おう、分かった」


 そう言って、ニコ兄とユーリアは出掛けて行った。

 分からないのだ。どうしてここで『うまいルルンデ』が出てくるのだ?


「ロロが攫われた時に、お世話になったんだよ。『うまいルルンデ』のご主人が、衛兵とギルマスに知らせてくれたんだ」


 おお、なんだか大事になっているぞ。


「ロロ、大変な事なんだよ。領主夫人と令嬢が起こした事件なんだ」


 そうか……そうなんだな。あの人達はどうなったんだろう?

 俺を攫ってぶん投げた男達と、夫人と強烈な令嬢。ピカがバインドして地下に放ってきたのだ。

 俺が無事に帰って来れたということは、あの人達も回収されているだろう。


「ロロは気にしなくていいよ。もう、こんな事は起きない」


 そうなのか? それならいいや。


「わふ」

「キュルン」

「ぴか、ちろ」


 ピカが頭を擦り寄せてきた。チロはチョロチョロと俺の上に乗ってきた。

 片手でチロを、もう片方の手でピカをワシワシと撫でる。


「ありがと」

「わふん」

「キュル」


 なかなか起きないから心配した。

 痛いとこある? ボク、癒すよ?

 と、言ってくれている。もう、大丈夫なのだ。長く寝ていたから、ちょっぴりボーッとしているだけなのだ。


「さあさあ、出来ましたよ」


 マリーがミルク粥を持って来てくれた。湯気がたっている。アツアツなのだ。とっても美味しそうなのだ。

 2日ぶりに食べるのだ。涎がでちゃうぞぅ。


「ロロ、食べさせてあげるわ」

「りあねえ、じぶんれたべるのら」

「駄目よ、食べさせてあげるの」

「あい……」


 ああ、リア姉の気持ちも分かるんだけどぉ……俺もう大丈夫なんだって。

 リア姉の『食べさせてあげる』は、次の日も続いたのだ。


お読みいただき有難うございます!

昨日何故か急激にPV数が跳ね上がり146,541もありました。

驚きましたが、今日はもういつも通りに戻っています。^^;

一体何だったのでしょう?(-。-;

感想や誤字報告を有難うございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 夫人はどうして娘へ、優しい虐待をしたのだろうか もしやってた事が露見せず捕まらずに大人になってたら、令嬢の将来は縛り首の未来しか見えないよ…
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