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☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第1章 ルルンデで生活するのら

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66ーロロの回復の秘密

 あれ……確かディさんが助けに来てくれて、俺は気を失ったんだよな? てか、体がどこも痛くないぞ。何でなのだ?

 俺は、不思議に思いながらゆっくりと瞼を持ち上げたのだ。


「え……」


 俺はびっくりしたのだ。何故なら、俺が寝かされていたのは水の上だったのだ。俺、半分浮いてね?

 耳の直ぐそばで、水の流れる音がする。なのに、濡れてないぞ?

 なんだ? どうしてこうなったのだ?

 ゆっくりと首を動かしてみる。大丈夫だ、どこも痛くないのだ。

 周りを見ると……抜ける様な青空に、ふわふわと白くて薄い雲が浮いている。周りには、色とりどりの花が咲き誇り微かに揺れながら、爽やかだけどどこか心安らぐ香りが辺りに漂っていた。

 俺が寝かされていた場所は、その中を流れている小川だったのだ。

 この場所は見覚えがある。あの泣き虫女神の世界なのだ。


「気がつきましたかぁー!?」


 ズンッと、女神が顔を出したのだ。なんだ、直ぐそばにいたのか。


「よ、よ、良かったでずぅぅー! 良がっだぁぁぁー! ゔぁぁーーん!」


 またギャン泣きしている。今日は特に酷い。キラキラとした綺麗な長い髪が、小川に浸かって濡れていてもお構いなしに、俺に抱きついて泣いている。

 止めてほしい。涙じゃない水分がついちゃうのだ。てか、まだ体が動かないのだ。


「……水の……上? なんれ……?」

「グジュッ! こ、ここは癒しの小川なのですぅ! こうして癒しの水の力で癒しているのですぅ! 精霊の力も借りてますぅー! 女神の加護発動なのです! ぶぶぶちーん!」


 鼻水をかむんじゃないよ。汚いのだ。

 いやそれよりも、なんだと? 精霊だと? そういえば、俺の周りに小さな光がワラワラと集まっていたのだ。よく見ると、その光の1つ1つが精霊だった。

 小鳥さんくらいの大きさなのだ。人型で、背中に蝶のような羽が付いている。その羽が、半透明でプラチナブロンドにキラキラと光っているのだ。


 ――おきたー?

 ――よかったー

 ――気がついたねー

 ――もう大丈夫だよー


 と、小さな精霊さん達が口々に言っている。可愛いのだ。ありがとうね。

 精霊にも驚いたけど、何より水の上に寝かされていた事なのだ。


「特別なのですー!」


 ……そうかよ。


「ギャン! こんな時でも塩対応なのですー! びぇぇー!」


 またまた、両手で顔を覆いながらのけ反っている。もう、慣れたよね。

 その女神が、しおらしく謝ってきた。


「ごめんなさいですぅ……」

「なんら……?」

「ロロが危険な目に遭っているのに、手を出せなかったのです」

「ぴかが……たしゅけてくれたのら」

「そのピカが狙われたのです」

「うん……れも……ぴかはわるくない」

「ロロー!!」


 ああもう、ちょっぴりウザイ。いや、かなりウザイのだ。


「……で?」

「こんな時でもクールなのですぅ!」

「どうして……ボクはここに……いるのら?」

「表面的な体の怪我はエルフが回復してくれたのです」

「ああ……でぃしゃんら」

「この世界で、ロロの中身と魂を癒していますぅ」


 なんだか、よく分からないのだ。


「怪我が酷かったのです。だから、緊急処置なのです。エルフの回復魔法だけだと、目覚めてからも痛みや後遺症が残るのです。心も傷付いているのです」


 ああ、そんなに酷い怪我だったのか。ブンッて、投げられちゃったもんなぁ。確かに、衝撃的な出来事だったのだ。


「しょう……ありがと」

「ギャンかわ!」


 はいはい、それはいいからさ。


「ぴかと……ちろは?」

「わふん」

「キュルン」


 直ぐそばにいたのだ。ピカも、チロも情けない顔をしているように見えたのだ。


「ぴか、ちろ……ありがと」

「わふぅ〜」

「キュルン〜」


 ピカがお顔をスリスリしてきた。チロもほっぺを舐めている。

 怪我をさせちゃった。

 回復できなかった。

 と、ピカとチロの思いが頭に流れてくる。


「しょんなことないのら……ありがと」


 いきなり女神が、カットしたフルーツを目の前に出してきた。なんだ、いきなりなのだ。


「食べるのです!」

「え……なんら?」

「この世界にある桃なのです。傷が癒えるのです! 美味しいですよ〜」


 そうなのか? なら、あぁ〜ん。

 もしかして、そこの木に生っている桃なのか? 俺が知っている桃より二回りほど大きい。

 そういえば……たしか、仙果なんて果物が天界にはあるという。そんなお話があったのだ。


「ひゃぁ〜! ロロに食べさせちゃったのですぅー! あ〜ん、したのですぅー!」


 はいはい、ありがとう。うん、甘くてジューシーで美味しい。俺の中では、ププーの実が1番美味しいフルーツだったのだけど、それよりもっと美味しい。

 確かに桃なのだろうが、表現できない位に美味しい。びっくりなのだ。


「美味しいでしょう〜? これも特別なのです」

「ん……うまうまら。あぁ〜ん」


 その桃を1個分食べさせてくれた。俺の口に入れる度に、女神が煩い。でも、体が動かないから仕方ないのだ。美味しいしね。


「はぁ~……良かったのです。これで、目が覚めたら元気なのです。お詫びなのです」

「ありがと」

「でも、ゆっくり動くのですよ。急に動いたら駄目なのです」

「うん」


 しかし、驚いたのだ。まさか、この小川に癒しの効果があるなんて。

 俺は、ディさんの顔を見て安心しちゃって、意識を失ったのだな。きっとその後、回復魔法を掛けてくれたのだろう。

 また女神の世界に、来るとは思わなかったのだ。女神なりに、心配してくれたのだな。


「わふぅ」

「キュル……」


 またそばにいてもいいかな? なんて、ピカとチロが聞いてきた。


「あたりまえら」


 ピカもチロも、大事な相棒だ。お友達だ。可愛いのだ。


「これで大きなピンチは乗り越えたのです」


 なんだと? だから前に『辛抱だ』とか言っていたのか? 分かっていたのか?


「具体的な事は分からないのです。未来は決まっていないのです。でも、神は手を出せないのです」


 ほう、そうなのか。でも教えてくれたら、気をつけたのだ。


「それも駄目なのです。あの母娘が捕まらないと駄目なのです」


 ああ、あの母娘な。強烈だったのだ。まさか、母親が関与しているとは思わなかった。優しそうな人だと思ったのにさ。


「ロロ、大変でしたね。ありがとうです」

「うん……」


 そして俺は、また眠りについたのだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 女神様はクーデレがヘキwww
[良い点] 女神様との距離は少し縮まったんですかね。(そうでもない?) ピカもチロもずっといっしょなのら〜。
[一言] セットでなきゃ駄目ってことは娘だけだと母親が暴走して惨事を起こし、母親だけだと娘が将来何かしでかして未来への禍根を生むのかな? 最善の未来のためとはいえロロが犠牲になりすぎな気がする。
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