表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第1章 ルルンデで生活するのら

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/485

63ー許さないよ

(ディさん視点です)



「ロロ!」

「ロロ坊ちゃま!」


 ほら、みんな心配して顔色が悪い。レオがロロを抱き寄せる。


「大丈夫だよ、気を失っているだけだ。回復魔法で治したけど、意識が戻るまで時間が掛かると思う。意識が戻ったら念のためポーションを飲ませてあげて」

「ディさん、何とお礼を言ったらいいのか……」


 マリーさんが、僕の手を両手で握って頭を下げてきた。ポロポロと涙を流している。

 きっと自分を責めていたんだろう。


「マリーさん、君の所為じゃないからね。こんな事をした奴が悪いんだ」

「……有難うございます」

「ロロ! ロロ!」


 リアが名前を呼びながら、ロロにしがみ付いている。


「リア、静かにロロを寝かせてあげて」

「ディさん、だって……ロロが!」

「大丈夫だよ」


 少し離れた場所で、静かにニコが涙を流していた。唇を噛み締め、両手が白くなる程ギュッと握り締めて。そんなに強く握ったら爪で傷めてしまうよ。

 ニコのイメージだと、一番に飛びついて来そうなものを。


「ニコ、おいで」


 それでも動かないニコに近寄り、そっと抱きしめる。


「ディさん……ありがとう……うぅ」


 ニコの髪を撫でる。ああ、ずっと我慢していたんだろう。


「大丈夫だ。もう助かったんだよ」

「うん……助かった。良かった……ロロまでいなくなったらと思うと……ヒック」


 そうだった。この子達は1年前に両親を亡くしているんだ。

 その時の事を思い出したのだな。また大切な人を、亡くすかも知れないと恐怖だったのだろう。

 

「大丈夫だよ。目が覚めるまで時間は掛かるかも知れないけど、回復魔法で癒したからもう大丈夫だ」


 僕は何度でも言おう。大丈夫だと。もう心配いらないと。

 こんな良い子達が、どうしてこんなに辛い思いをするんだ。

 

「ピカ、教えてくれるかな?」

「わふ」


 ピカに額をくっ付ける。エルフが使える念話というスキルだ。

 本当はテイムしている魔獣や、エルフ同士で使うものなんだけど、ピカは神獣だからテイムしていなくても念話が使えるだろう。

 思った通りだった。そうか、奴等なのか。僕は久しぶりに強い怒りを覚えた。

 ピカは的確に奴等の居場所を教えてくれた。僕の頭に、一部始終をイメージで送ってきた。そして、奴等が今もバインドでそこに転がっているとも。


「ピカ、有難う。後は僕に任せてよ」

「わふッ」


 お願い。と、ピカが言った。

 よくロロを追いかけてくれた。よく逃げ出してくれたよ。

 ワシワシとピカを撫でる。素晴らしい毛並みだ。まあ、奴等の狙いはピカだったんだけどね。

 しつこい奴等だ。性懲りも無く、強硬手段に出たのか。


「わふぅ」

「ピカの所為じゃないよ。こんな事をする奴等が悪いんだ」

「わふ」

「ロロを守ってくれて有難う」

「クゥ~ン」


 ちゃんと守れなかった。酷い怪我をさせてしまった。

 ピカも悔やんでいる。尻尾まで元気がない。そんな事ないよ。ロロを盾にされたら手を出せないじゃないか。


「じゃあ、ピカ。後は頼んだよ」

「わふッ」


 さて、僕は奴等を懲らしめに行こう。


「ディさん」

「レオ、どうした?」

「僕も一緒に連れてってください」

「レオ……」


 目に憎しみを滲ませながらレオが言ってきた。

 レオにこんな顔をさせるなんて。レオだってまだ子供なのに。

 

「ロロをあんな目に遭わせた奴等を許せない」

「レオ、後は僕に任せてほしい」

「ディさん、でも……」

「後は大人の仕事だよ。ロロを危険な目に遭わせてすまなかった」

「そんな、ディさんが謝ることじゃないです」

「いや、以前ピカを狙ってきた時に、もっと懲らしめておくべきだったんだ」

「ディさん、ピカを狙ったって事は……そんな! こんな酷い事をするなんて!」

「僕にも挽回するチャンスをくれないかな? 今度こそ、許さないよ」

「……ディさん、お願いします」

「ああ、任せて」


 僕は微笑んで、レオの肩をポンポンと叩く。

 そして、僕はもう1度転移した。ピカが教えてくれた邸宅を目指して。

 木立に囲まれた、湖の畔に小さな邸宅が建っている。この一帯を治める領主の別邸だ。そこに、奴等はいる。


「さて、どうしてやろうかな」


 僕は考えながら邸宅に向かった。

 舐めるんじゃないよ。貴族だか領主だか知らないけど。今度は許さない。

 邸宅の中へと入って行く。正面玄関には鍵が掛かっていなかった。

 誰もいないのか? 奥から1人の侍女が出て来た。


「どちら様でしょうか? お約束はされていますか?」

「君は侍女かな?」

「はい、あなたはどちら様ですか?」

「ボクはディディエ・サルトゥルスルというんだ。悪いけど君、邪魔だから眠っていてくれるかな」

「え……?」


 僕は侍女にスリープの魔法を掛けた。全く何も知らないで、この場所にいる訳じゃないだろうに。

 こんな事をして、何も思わないのかな? そんなに貴族は偉いのか? これは歴とした犯罪だ。

 エルフの国には貴族制度がない。人間の国の様な階級制度がないんだ。あるのは、ハイエルフかそうじゃないかだけだ。それも差別なんかじゃない。能力自体が違うんだ。

 それに、エルフはロロの様なちびっ子をとても大切にする。種族全体で育てるんだ。

 そんな国で育った僕には、到底理解できない。


「本当に、何て事をしてくれたんだ」


 僕は邸宅の中を裏口に向かって進んだ。


お読みいただき有難うございます。

感想を有難うございます!とっても嬉しいです!

今日のポイントは、ニコです。いつも賑やかなニコが…と思って頂ければ。

応援して下さる方は、是非とも評価やブクマをお願いします!

毎日投稿する励みになります。

宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
もう何度か読み返してるのに、この数話は辛すぎます。 怪我をしたロロも、我慢して周りにすがり付けないニコも、責任感の強すぎるリアやレオも… そして、平気で我を通せてしまう令嬢も、精神的な虐待の惨さに恐…
[良い点] ニコはまだ子供だけど、お兄ちゃんだからしっかりしなきゃって気張ってたんですね。 ほんとはまだまだ甘えたい盛りなのかな。 ディさん後はよろしくお願いします!
[一言] 女神に力があったら神罰降してそうだけど、ないから謝ってばかりなんだよな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ