58ーかっちょいいのら
正に、日の出と共にだよ。本当、これが難点なのだ。
日の出の時間なんてさ、俺はね、まだ夢の中なのだよ。俺だけじゃなくて、みんなだけど。
そしたら、コケッコー! だからね。夢に見てしまうのだ。コケッコー! と元気よく走り回っているコッコちゃんに乗ってる夢をさ。
やっぱ、是非とも乗ってみたいのだ。
でも、ピカが危ないからダメだというのだ。だから、今は我慢なのだ。
「ねえ、マリーさん。子供達でもお世話できそうかしら?」
「はいはい。飛ばないし、お利口さんだから大丈夫だと思いますよ。ただ、テイムしておく方が良いとディさんが言ってましたね。魔鳥ですから」
「テイムだとぉ! そんなの子供達はできねーぞ」
「なら、ハンナでもビオ爺でもいいんですよ。うちも、レオ坊ちゃまとロロ坊ちゃまのお二人がしているそうですから」
「ロロ、テイムできんのか?」
「しらない」
「あらあら、ロロ坊ちゃま。ほらコッコちゃんを捕まえる時ですよ」
「おしゅわり?」
「その時に掌を向けるんでしょう?」
「しょうなのら。しょの方がかっちょいいから」
「え? 坊ちゃま?」
「かっちょいいのら」
「アハハハ! こりゃぁ、テイムしているつもりはねーな」
「でもディさんが、テイムしている証を付けないとって話していましたよ」
「うん、ちょーかーらね。盗まれないようにら。ピカが付けてるみたいなの。かわいいのら」
「アハハハ! そうかそうか!」
本当に俺がテイムしているのかは分からないのだ。だって、ディさんが見た限りでは、レオ兄や俺にはテイムのスキルは無かったんだ。
「あと2〜3羽捕まえたら生えてくるかもね」
と、ディさんが言っていた。でも、そんなに捕まえる予定もない。捕まえられるのかも分からない。
だって、コッコちゃんはいつもは何処にいるのか分かってないんだ。ププーの実が生っている時は、それ目当てにやってくるけど。
「なあ、ロロ。そのププーの実って美味いのか?」
猫獣人の子供が聞いてきた。前に一緒に遊んだ子だ。俺が遊んだ事のある子の中では、1番年長さんでニルスと言うのだ。
いつも俺に話しかけてくれる。面倒見の良い、しっかりしたお兄ちゃんなのだ。
「うん、めっちゃうまうまら」
「おー! ハンナ、食べたい!」
「今日はプリンを食べたから明日ですよ。明日剥いてあげます」
「えー、残念」
「超うまうま」
「おおー!」
みんな期待で、目が輝いているのだ。
「ププーの実は、森の中を流れている川の近くにしか生えていないのだろう? しかも、熟れすぎると落ちてしまうそうじゃないか。獣も食べに来ると聞いたぞ。だから、なかなか手に入らないんだと」
「しょうなのら。コッコちゃんもププーの実を食べにくるのら。らから、しょこで『おしゅわり』なんら」
そうなんだよ。だから、捕まえるなら今だ。勝手に寄ってくるから、捕まえ易いのだ。
孤児院でも飼うなら、レオ兄に相談しなきゃ。また捕まえに行かなきゃならない。
ご近所さんも飼いたそうだったし。あと、何羽か捕まえたいのだ。
それに、ププーの実を剥いてもらって思ったのだ。あの真ん中にある大きな種だ。
あの種を植えたら育たないかなぁ? 庭に植えてみよう。
「え? 坊ちゃま、種ですか?」
「うん、大きな種らから植えたら芽が出ないかと思って。にこにいなら、できしょうなのら」
「まあまあ! そうですね」
だろう? ニコ兄なら、育てられそうなのだ。珍しい薬草もちゃんと育てているし。
「庭先に植えてみましょうか?」
「うん、マリー。しょれがいいのら」
と、俺の野望がどんどん増えていくのだ。
リア姉とレオ兄の服を作りたい。
レオ兄にもっと魔法を教わりたい。
魔石に付与できるようになりたい。
コッコちゃんに乗りたい。
ププーの木を育てたい。
刺繍も上手くなりたい。
野望が沢山あるのだ。
「マリーさん、真ん中に大きな種があるのですか?」
ハンナが聞いてきた。食べた事がないらしい。俺も、食べた事はなかったのだ。
「そうそう、そうなのよ。だから、皮を剥く時にね」
マリーがププーの実の皮の剥き方をハンナに教えていたのだ。
アボカド剥きだよ。クルッとナイフを入れて、実をグニッとやって、パカッとしたら皮を剥いて切るのだ。
「ロロ、それだと分からんな」
「え……しょぉ?」
「そうだな」
そうなのかなぁ?
ププーの実は大きいから、俺の小さな手では無理そうなのだ。でも、ハンナなら出来そうだ。
そう言えば、レオ兄が今日ププーの実をギルドに納品すると言って幾つか持って行った。お魚も売るのだ。珍しいから良い値段で売れるそうなのだ。
「むふふ」
「なんだ、ロロ。どうした?」
「お魚とププーの実で、りんじしゅうにゅうになるって」
「アハハハ、それでニヤけていたのか。チャッカリしてんなぁ」
「ロロ、外で遊ぼうぜ」
「うん!」
孤児院の子達とお外で遊ぶ。中身は大人な社会人なのに、楽しいのだ。
「ロロ、その石ころを思いっきり蹴るんだ!」
「うん!」
いくぞ! とぉッ! と、思いきり蹴っても全然とばない。コロンコロンと、直ぐそこに転がるだけだ。
「アハハハ! ショボ! ロロ、走れ!」
「キャハハハ!」
前と同じ様に、俺にはニルスが付いてくれる。手を繋いで一緒に走る。
この遊びは何てんだ? 俺は知らないぞ。自分がちびっ子の頃に、遊んでいた遊びなんて覚えてないけどな。
「ロロ! 走れー!」
「キャハハハ!」
「笑ってないで、走るんだよ! アハハハ!」
なんて、言いながら笑ってるじゃん。
沢山、走って遊んだ。最後まで、遠くまで石を飛ばす事はできなかったけど。でも、楽しかったのだ。
お読みいただき有難うございます。
今日はとっても寒いですね。皆様、風邪などひかれませんようお気をつけ下さい。
宜しければ、評価やブクマをして頂けると嬉しいです。
宜しくお願いします!




