485-フラグが立った
兵士さんが慌てて走って来たから、何かあったのかとやって来ていた。
「ておしゃんは、いかないの?」
「僕か? 僕は邸担当だ。ロロたちを守るよ」
「私もみんなを守るわ!」
ほら、ロッテ姉が張り切っている。
「リアに負けていられないもの!」
何に拘っているのかな? そんなに張り切らなくても良いのだよ。もう剣を腰に差して、準備万端だ。お邸の雰囲気も空気がピリピリするようなものに変わった。
みんな万が一、魔鳥がこっちに飛んでくることを警戒している。
「ロロ! ピカも行ったのか!?」
「にこにい、ぴこぴこはんまー」
「おう! ありがとうな! 俺のそばを離れたら駄目だぞ。エルもな!」
「わかったのら」
「ぼくもぴこぴこはんまー、とってくる!」
エルがトコトコとお邸の中に入って行く。その後をウォルターさんが続く。エルを一人にしないようにしてくれている。ウォルターさんは、よく気が付く。
「ロロ、大丈夫だぞ。まさかこっちまでこないだろうからな」
「そうね、でも念のため警戒しておかないと」
テオさんとお祖母様も、兵士たちがいる方へ行った。ロッテ姉は俺のそばを離れない。
「まあまあ、怖いですね」
「まりー、らいじょうぶなのら」
「そうよ、マリー。私が守るから大丈夫よ」
「でもロッテ嬢ちゃま、ロロ坊ちゃま、お邸の中に入っていましょう」
「大丈夫よ!」
ロッテ姉はやる気満々だ。こっちまでこないってテオさんが言ってたよ? でもなんだか嫌な予感がする。
こういう時って必ずやってくるんだ、こっちまでさ。これをフラグが立ったとか言うよね。
『た、た、大変なのですッ! ロロは魔法杖を使うのですよ~ぅ! よ~ぅ! よ~ぅ……』
えぇッ!? これって泣き虫女神の声じゃないか? 俺の頭の中に、女神の声が響いた。こんなふうに言ってきたことなんて今までないぞ。いや、あのルルンデのお祭りの時に、教会で同じことがあった。その夜に、ブラックウルフの襲撃があったのだ。これはますますヤバイ。確定だ。
「ろってねえ、ボクはなかにはいってるのら」
「そう? じゃあ一緒に行くわ。エルと一緒にいましょう」
「わかったのら。まりー、いこう」
「はいはい、そうですね」
「俺も一緒に行くぞ」
みんな一緒にお邸の中に向かう。トコトコと……これでも一生懸命走っているつもりなのだ。
「やだぁ、ロロちゃんったらトコトコ走って超可愛いぃ~!」
ロッテ姉が何か言ってるけど、俺はそれどころじゃない。
どうしよう、女神が言ってくるくらいだ。ヤバイヤバイ、とってもヤバイ! これって絶対に魔鳥が飛んでくるぞ。そうとしか考えられない。俺は魔法杖を使えと言っていた。えっとぉ、俺のお出かけ用のポシェットだ。
俺は自分の部屋に急ぐ。あのポシェットはお部屋に置いたままだ。早く取りに行かないと。
「ろろ! ろこいくんら!?」
ピコピコハンマーを手に持ったエルが前から走ってきた。ちゃんとウォルターさんも一緒だ。
「ボクのおへやにいくのら! ぽしぇっと!」
「なんら!?」
「ちゅえなのら!」
「あー、ちゅえか!」
エルも一緒に行こう。みんな一緒にいよう。
俺の部屋に入ってポシェットを手に取り中を探る。
「えっちょぉ、これはぽーしょんれ、こっちははんかちれ」
「ろろ、ないのか?」
ちょっと待ってね。小さくしてあるから一番底に入っている。
「あった! ボクのちゅえ!」
ジャジャジャーンと杖を持って掲げる。ふふふん、ディさん特製の魔法杖だ。まだえんぴつくらいの大きさのだけど。早速、魔法杖に魔力を流して、俺の持ちやすい大きさにする。
一緒に来たロッテ姉が、それを見て驚いている。
「ええーッ! 大きくなったわよ!」
「まりょくをながしゅと、おおきくなるのら」
「ロロったら凄いじゃないッ!」
ふふふん。ちょっと自慢だから胸を張っておこう。もちろん、手は腰だ。どこが腰だとか思ったら駄目だよ。
「やだ、ロロったら可愛いぃ!」
ロッテ姉がそう言いながら抱きついてくる。リア姉とまるで同じだ。だからね、こんな時なのに。
「やめれ」
「もう、ロロったら冷たいんだからぁ」
ロッテ姉まで、何かというと抱きついて俺のお腹をモミモミしてくる。それはもう本当にやめてほしい。俺のふわもちボディは魅惑だろうけど、エルもいるじゃないか。
「あらあら、少し落ち着きましょうね。お茶はいかがですか?」
出た、久しぶりに出たよ。マリーの「お茶どうですか~?」攻撃だ。これは誰にも抗えない。
「クッキーもありますよ」
おっと、上級まで出ちゃった。俺とエルはいそいそとマリーのそばに行く。
「まりー、じゅーしゅもあるのか?」
「ええ、ございますよ。りんごジュースでもよろしいですか?」
「おー、りんごじゅーしゅ、しゅきら」
「ボクもら」
エルと二人でわちゃわちゃしていると、ウォルターさんが微笑ましく見ている。
「お二人ともすわりましょう」
「あい」
「おー」
この瞬間はすっかり魔鳥さんのことは頭から抜けている。さっきも四阿でお茶していたのに、またクッキーをもらってジュースを飲む。
「ふゅ~、おいしいのら」
「な、おいしいな」
「エル、ロロ、さっきクッキーを食べてたんだろう?」
ニコ兄がクッキーを手に持っている俺とエルにそう言った。だってクッキーはいつ食べても美味しい。しかもここのクッキーはナッツのペーストを生地に練り込んであったり、荒く刻んだナッツを混ぜてあったり、蜂蜜を塗ったナッツをトッピングしてあったりでとっても風味が良くて美味しい。
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宜しくお願いします。
ディさん作のロロの魔法ですが、先端に小さな魔石がついてます。それが魔法を発動する媒体の役目もしてます。が、小さな魔石ではなく、いっそのこと星とかつけたら可愛かったかなぁ?なんて思ったり。月にお仕置きするみたいな(^◇^;)
お仕置きネタはハルちゃんで使ったので、やめておいたのですが。
ちょっと笑える杖を持たせた方が良かったかなぁ?なんてね(^◇^;)
暖かくなったり寒くなったりで、体調管理が大変ですね。皆様もお気をつけくださいませ(,,ᴗ ᴗ,,)ꕤ*.゜
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