48ーコケッコー
まだ寝起きで、ぼんやりとしてゴロゴロしていたのだ。
ニコ兄は、沢山採った薬草の根っこに一株ずつ葉っぱを巻いている。
シールドがあると、こんなに平気なのだな。
ぼーッと辺りを見ていると、どこからかテケテケと鳥さんが歩いて来た。おや? と思い体を起こす。
ん~、鳥さんだけど……森の中にいるから魔獣……いや、魔鳥なのかな? 1メートル位ある大きな鳥さんだ。
「あれ魔鳥なんだって」
「へ~」
その魔鳥だという鳥さんが良い声で鳴いた。
「コケッコー」
「え……」
「クックックック……コケッコー」
頭を前後に、ヒョコヒョコと動かしながら歩いている。
「にこにい、鳴いてるのら」
「おう、さっきからいるんだよ」
「しょう?」
前世では、とってもポピュラーだった鳥さんと同じ鳴き声の魔鳥さん。
体は真っ白だ。頭に冠のような赤い鶏冠がある。嘴の下にあるベロンとした肉ひげも真っ赤だ。まるでニワトリさんだ。
森の中に現れたニワトリによく似た鳥さん。
羽がとっても豊かで尾羽なんて一度上に向かって生えているが、そこからカーブして地面に届きそうなくらいに長い。フッサフサの尾羽の先と嘴が黄色だ。
そしてなにより魔鳥の証拠に、真っ赤な鶏冠の前に小さな豆粒ほどの角がある。
「にこにい、こっちみてるのら」
「うん、放っておくんだぞ。その内諦めてどっかに行くよ」
「しょう?」
「そうだ」
ふぅ~ん。と、思いながらもジッと見てしまう。
あの鳥さん……美味しいのだろうか?
見たところ、肉付きは良さそうだ。立派なモモ肉をしているのだ。あの大きさだと1人では食べ切れないなぁ。
「わふ」
「しょう?」
ピカが美味しい鳥さんだと言った。そうか、美味しいのか。お肉に見えてきたぞぅ。
「わふわふ」
「え、しょうなんら」
「わふん」
なんと、毎日卵を産むらしい。しかも複数個産むという。
肉も美味しいが、何と言っても卵がとっても濃厚な上にまろやかで絶品だと。しかも大きいらしい。
おぉー、それはなんとしても食べてみたいのだ。
プリンとか作ったら美味しそうだ。マリーに作ってもらおう。うん、そうしよう。
「こけっこー、くっくっくっくこっこー」
俺はシールドの中で、手を出しながら鳴き真似をしてみた。
「ク……」
あ、反応したのだ。こっちを見て、テケテケと歩いて来る。
近くに来ると、やっぱ大きいのだ。
「ロロ、やめろ。魔鳥だぞ」
「れも、にこにい。肉も卵もおいしいって」
「え、そうなのか?」
これは、飼いたいなぁ。そしたら毎日美味しい卵が食べられるのだ。卵サンドもいいね〜。
「わふぅ……」
「え、らってぴか。おいしいんらろ?」
「わふ」
「毎日たべたいのら」
「わふわふ」
そうそう、食べたいね~。と、ピカも言っている。
「ぴか、ちゅかまえる?」
「わふ?」
「ちゅかまえて、家でかうのら」
「わふ~」
そんな事できるかな~? だって。先ずは捕まえないとね。
「あれ? ぴか、あの鳥しゃんとぶ?」
「わふ」
そうか、飛べないのか。本当に大きなニワトリさんみたいなのだ。
しかし、どうやって捕まえようか?
「ロロ、魔鳥を飼うなんて無理だぞ」
「にこにい、けろ毎日卵をうむって」
「卵か……いいな」
「しょう。なんこも。おおきいんらって」
「そうなのか?」
「らから、かいたいのら」
「どうやって捕まえるんだよ。襲ってくるぞ」
「どうしよ?」
そうなのだ。魔鳥さん、普通に攻撃してくるだろうし。突かれたりしたら、痛そうなのだ。
「わふ」
「ぴかは、ちゅよいから」
「ピカは何て言ってるんだ?」
「よわいから、へいきらって」
「弱くねーよ、ピカが強いんだ」
「ね〜」
ん〜、どうしよう? 諦めきれないなぁ。
俺はシールドの中からジッと鳥さんを見つめた。ジーッと。鳥さんの小さな目と目が合った。
「クッ……?」
首を横にコテンと倒して見ている。これは絶対、俺を認識しているぞ。
「らめらよ。うごいたららめ」
「クック……」
「おとなしくして」
「クックック……」
鳥さんの目をジッと見つめて、片方の掌を鳥さんに向けながら話しかけた。
鳥さんも何故かジッとしている。言っている事が分かるのかなぁ?
「しょぉっとら、しょのままら」
「クックック……」
「おしゅわり」
「ククッ……」
ワンちゃんじゃないけど、試しに言ってみた。すると、鳥さんが大人しくヒョイと座ったのだ。
「あらら?」
「ロロ、座ったぞ」
「ね〜」
「どうすんだ?」
「わかんない、どーしよ?」
「あのまま捕まえるか?」
「わふ」
「ぴか、れきる?」
「わふん」
ピカが、魔法でバインドすると言っている。なんだ、そんな事が出来るのか。
「ぴか、おねがい」
「わふッ」
すると、鳥さんが座ったままの体勢でバインドされたのだ。座ったまま動けなくなっている。ピカさん、何でもできるのだね。
俺の渾身の一撃『おすわり』は必要だったのか?
「よし、捕まえよう!」
「にこにい、しーるどからでたららめ」
「そっか。じゃあ、レオ兄達が戻ってくるまで待とう」
「うん」
鳥さんはそのままだ。ちょっと、かわいそうな気もするけど。でも、魔鳥だから危ないし。
「おしゅわり、しょのままらよ」
「クック……」
うん、理解しているのか? 大人しいな。
お読みいただき有難うございます。
明日も鳥さんが続きます。(^^;;
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