478ーもう少しだけ
俺の前にもこんがりと美味しそうに焼かれた魔鳥さんのお肉が出てきた。ウォルターさんが持ってきてくれた。もうお邸に馴染んで給仕をしていたりする。
「ロロ坊ちゃん、まだ熱いですから気をつけてください」
「うぉるたーしゃん、ありがと」
「あらあら、マリーがフーフーしましょうか?」
「らいじょぶなのら」
ちゃんとウォルターさんが、俺が食べやすいように一口大に切ってくれている。だからそれをフォークにぶっ刺して、ふーふー。
「いたらきましゅ! ふゅーふゅー」
「アハハハ! ロロ、タコさんのお口になってるよ」
「らってれおにい、しかたないのら」
だって、フーフーしなきゃいけないからね。どうしてもお口はそうなってしまう。俺は大きなお口を開けてあーんと食べる。あれれ? いつも俺のお世話をしてくれるニコ兄がいないぞ。どこ行った? 俺のほっぺを誰が拭いてくれるのだ?
「れおにい、にこにいは?」
「ああ、伯母様と一緒だよ。薬草の話が弾んでいるみたいだね」
「しょっか」
聞きながら、モグモグモグ。直火で焼いてあるからとっても香ばしい。思ったより脂があっさりとしていてジューシーだ。
「うまうま」
「ね、美味しいね」
「これは、まりーのべりーしょーすがあうのら」
「本当だね。僕はハニーマスタードがいいな」
「れおにいは、ちょっぴりおとななのら」
「ええ? どうして?」
「らって、ボクはべりーがいい」
「甘酸っぱいのがいいの?」
「しょうなのら」
そんな話をしながらも、モグモグモグ。当然、ほっぺに脂が付いてしまう。いつもならニコ兄が拭いてくれるのになぁ。なら自分で拭けばいいのに、なんて考えながらもモグモグモグ。
「ほら、ロロ。ほっぺがテカテカだ。エルもだ」
ニコ兄の代わりにレオ兄が拭いてくれた。エルのほっぺも拭いている。二人の世話をさせちゃってごめんね。
「れおにい、ありがと」
「ありがと」
エルと二人で地面に着かない足をプランプランさせながら、モグモグモグ。
「おいしいな」
「うまうまら」
ウォルターさんが自分とマリーの分も持ってきた。俺とエルを見て微笑んでいる。
「こうして見ているとエル坊ちゃんとロロ坊ちゃんは、よく似ておられますね」
「ええ、本当に。私もそう思いますよ」
え、そうかな? とエルとお顔を見合わせる。
「エルは、いとこおいになるのかな?」
「レオ坊ちゃま、そうですね。奥様のお兄様のお孫さんですから」
ほうほう、よく分からないけど。とにかく食べるよ、モグモグモグと。
「ロロ、エル、頬張り過ぎだよ。ほっぺがパンパンになってるよ」
「おくちいっぱいのほうが、おいしいのら」
「な、しょうらよな」
「アハハハ、本当に似ているね」
えー、そうかな? エルなら似ていてもいいかな。一緒にいて楽しいし。
「しんゆうらからな」
「しょうらった」
「ろろ、わしゅれたら、だめらじょ」
「うん、おぼえとくのら」
そうそう、初めて会った頃はそう言ってたね。親友だって。この世界で初めての親友だ。といっても、同年代のお友達がいないのだけど。俺の周りは大人ばかりだから、エルが初めてのお友達だ。おっと、ララちゃんがいたからエルは二番目だ。
「本当に大きくなられて」
ウォルターさんは俺を見てよくそう言う。そしてウルウルお目々になっちゃう。ウォルターさんと別れて、たった1年しか経っていないのだからそんなに変わらないと思うぞ。
「あの頃よりずっとしっかりなさって」
「あらあら、そうですね。ロロ坊ちゃんは随分成長されましたね」
「まりー、しょう?」
「ええ、そうですよ」
そんなものなのかな? でももういい加減に慣れてほしい。俺はこれからもっと成長するのだよ。
「いっぱいたべるのら」
「おー、おいしいからな」
俺の足元ではまた大きなお肉の塊をもらって、ピカがわふわふと言いながら食べている。その側ではチロもブチッと引きちぎりながら食べている。リア姉とロッテ姉も、少し解放されたらしくてお祖母様とにこやかに食べていた。こうして大人数で食べるなんて、ルルンデではなかった。
今回の旅では、辺境伯家でもそうだったけど大家族の一員になったみたいでとっても新鮮だ。こんな家族もあるのだと思った。
前世でも大家族なんて縁がなかったから、余計にそう思う。両親がいて祖父母がいて、従兄弟やはとこなんて考えられない。ルルンデの生活は大好きだ。でも俺たちだけでなんとかしなきゃと、リア姉とレオ兄は思っていたはずだ。俺は呑気に毎日ピカに乗ってのんびりしていたけど、リア姉とレオ兄はどんな気持ちでクエストを受けていたのだろうと初めて思った。
二人だってまだ親に保護されていて当然の年齢なのに、俺たちを食べさせて守ろうとしてくれていた。だからきっと……こっちの家に来る方が二人のためなのだと思う。
思うのだけど、俺の心はそう簡単に決心できないでいる。だって、ルルンデの生活も大好きだから。みんなと別れるのは寂しいから。だから、もう少しだけ時間が欲しい。
「う……ぐしゅ」
「ロロ、どうした?」
「れおにい……ひっく」
「ろろ、ろうしたんら? あちゅかったか?」
「ちがうのら、なんれもないのら」
俺ってば本当に弱々なのだ。寂しいなと考えただけでもう涙が出てきてしまう。弱っちすぎないか? それとも3歳だからか?
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宜しくお願いします。
ロロの物語も後半戦です。この後どう繋げるか、なかなか難しく。書籍は5巻の段階で、プロットから見直そうとなってます。
うちの担当さんは鬼改稿なので(^◇^;)
いつもめっちゃお世話になってます。
皆様に書籍を購入して良かった。と思っていただけるように頑張ります(๑•̀᎑•́)و✧
ロロはどんな段階でも楽しい作品なのです。皆様にも楽しんでいただきたいので!
とっても寒くなってきました。
昨日は九州地方で地震もありました。大丈夫でしたでしょうか? 何人かの方が九州地方にいらっしゃると把握してますが、どうかご無事でいてくださいますように!




