475ー魔力量なんだって
でもレオ兄は、叩きながら鑑定眼で見ていた。
「ああ、分かった。ウォルターは魔力量が少ないんじゃないかな?」
「ええ、レオ坊ちゃんの言う通りです。私は辛うじて生活魔法を使える程度しか、魔力量はないのです」
「だからだ」
なんですと? 魔力量で違ってくるのか?
レオ兄が鑑定眼で見た結果だ。俺やレオ兄みたいに魔力量の多い者が叩くと『キュポン!』と鳴る。だけどウォルターさんみたいに魔力量が少ない人が叩くと、その音は鳴らないらしい。
何故なら人は無意識に微量だけど魔力を放出しているから、それに反応しているのだろうということだ。
俺はそんなこと全然知らなかった。
「魔力に反応しているんだよ。これって、魔力を流すと強くなるだろう?」
「あ、しょうなのら」
「え? そうなのか?」
ニコ兄は今更何を言っているんだ。俺は何度か、魔力を流して叩くと強くなると言っていたぞ。
「その魔力に反応しているんだ」
ほうほう、それは凄いじゃないか。ならエルがピコピコハンマーを叩くと『チュン!』と鳴るのも、エルの魔力に反応しているということかな? 俺のピコピコハンマーで、魔鳥をぶっ叩いている時にも『キュポン!』と鳴っていたし。
「れおにい、えるのも?」
「そうだね、ピコピコハンマーは三つともそうだ。ロロが作る時に魔力を流しているからじゃないかな?」
「しらら〜い」
「アハハハ。ほら、ディさんが言ってたじゃない。ロロは無意識なんだってさ」
そうだっけ? そんなことを言われたような気もする。
「それにエルも魔力量は多い方じゃないかな?」
「なんれもいいけろ、これはぼくのら」
エルったらまだお祖父様を警戒している。それも仕方がない。だってお祖父様ったら、さっきからエルが持っているピコピコハンマーから目を放さないから。
「ロロ、私も欲しいぞッ!」
「だからお祖父様。お祖父様は剣があるでしょう?」
「テオ、それとこれとは違うだろう!」
いやいや、エルはまだ剣が使えないからピコピコハンマーなのだよ。そこを忘れてはいけない。俺だってまだ剣は使えない。でもマンドラゴラをバシコーンしたくて作ったのがピコピコハンマーだ。
元々、斬るつもりはなかったのだから。今回はエルの希望で、ぶっ叩く反対側で斬れるようにはしたけども。でも危ないからそんなに鋭くはしていない。
「ろろ、こっちれ、きるんらろ?」
「うん。けろ、しょんなになのら。ばしこーんが、めいんなのら」
「なんら? ばしこーん?」
「しょうしょう、ばしこーんってたたくのら」
「おー、しょっか」
斬るのはエルがもっと大きくなってから剣を習うといいよ。エルは身体を動かす方が得意みたいだし。俺はそうじゃないから。この前みたいに魔鳥が襲ってきたら、魔法で対応するしかない。
「ロロ、どうしたの?」
「れおにい、ぼくはけんを、ちゅかえないのら」
「まだちびっ子だからね」
「ちがうのら。おっきくなってもむり。こわこわ」
「アハハハ。ロロは魔法があるからいいんじゃない?」
「しょう?」
「うん、そう思うよ」
けど、レオ兄は槍も使えて魔法も使える。それってチートって言うのじゃないか? 俺の兄はとっても凄いぞ。
「れおにいは、しゅごいのら」
「そう? ありがとう。アハハハ」
どうしてそこで笑うのかな? 俺は本当のことを言っているだけなのに。
そんなことをしていたのだけど、どこからかとっても香ばしい良い匂いがしてきた。これは何かな? 今日の夕ご飯かな? こんなに良い匂いがすると、俺のお腹が反応しちゃうぞぅ。
――キュルルルル
「あ、なったじょ」
「えるのおなから」
俺のお腹じゃないからね。俺のお腹は堪えてくれた。これはエルのお腹が鳴った音だ。
「皆さーん! ご飯ですよー!」
マリーがお邸の前から大きな声で呼んでいる。こらこら、ルルンデの家じゃないのだから。マリーったらマイペースだ。どこにいても変わらない。それがまた俺は安心するのだけど。
「とっても、いいにおいなのら」
「な! いいにおいらよな!」
「今日は魔鳥の丸焼きだろう」
「ておしゃん、しょうなの?」
「ああ、そうだと思うよ。ほら、前庭にみんな出てきているだろう?」
「ほんとら」
「おー! やった!」
俺たちも行こう。いつ出るかと楽しみにしていた魔鳥の丸焼きだ。初めて食べる。ふふふ、ワクワクしちゃうじゃないか。
「れおにい、にこにい、たべたことある?」
「ないよ、初めてだ」
「おう、丸焼きなんて初めてだな」
「わふん」
ピカまで、とっても良い匂いで楽しみだね! なんて言っている。ピカはたくさん食べるから、丁度良いかも知れない。
「わふわふ」
「うん、おっきいからね」
「わふ」
体が大きいからたくさん食べるんだって、ピカが言い訳している。
「キュルン」
「あ、ちろもたべるのら」
「キュル」
チロまで匂いに反応している。ピカの頭の上で体を持ち上げて、まるでクンクンしているみたいに見える。可愛いね。チロは魔法を使うたびに少し大きくなっているような気がする。
「れおにい、ちろ」
「またちょっと大きくなったかな? きっとチロは、魔法を使うと大きくなるんじゃないかな?」
「やっぱりしょうなのら!」
「ふふふ、多分ね。チロも成長しているんだね」
これは鑑定眼でなくても分かる。お墓参りから帰って来た時も大きくなったもの。お祭りの夜にブラックウルフと戦ったあともそうだった。やっぱそうなのだ。




