471ー4巻発売記念SS なんらかな〜
ルルウィン祭が終わりララちゃんたちが帰って行って、いつもの生活に戻っていた。大勢のお客様が来たものだから、とっても賑やかだった。だから今はちょっぴり寂しい。
俺は庭先でいつもの場所に座って、ボーッとどこを見るでもなく庭先を見ていた。相変わらずフォーちゃんたちとプチゴーレムは元気に畑の中を走り回っている。
お野菜の緑がとっても綺麗で、ニコ兄の畑のお野菜も生き生きしているな~なんて思っていた。
なんだろう、これって? お祭りの後の空虚感? 楽しかったし、魔物を討伐するなんてこともあったから余計だ。とっても刺激的だった。
終わってみると、あっという間だった。そういえば、俺って馬車に乗ったのだ。ディさんとララちゃんと一緒に。
「わふん」
「うん、ぴかもらね」
僕も一緒だったよ。とピカが言ってきた。そうそう、ピカに乗って馬車にジャンプしたのだ。あの時は驚いた。ララちゃんと二人で乗っているのに、軽々と馬車までジャンプしたから。
ふむ、来年もまた行こう。とっても楽しかった。いやそれよりも、やっぱあの川辺でのディさんだ。あれはきっと……
「あら~、ロロちゃんったらどうしたの~?」
俺の日向ぼっこ友達のセルマ婆さんだ。セルマ婆さんも、いつもの場所になっている俺の隣に座り込む。
「おまちゅり、たのしかったのら」
「それは良かったわね~」
「うん。けろ、なんらかな〜」
「あらぁ? どうしたのかしら〜?」
「ちょびっと、ふぅ〜ってなるのら」
「ふぅ〜なの?」
「しょうなのら。たのしかったから」
俺が何を言いたいのか、分からないだろうなぁ。だって言葉が思いつかないのだもの。
「たのしかったのに、おわっちゃったのら」
「ふふふ、よほど楽しかったのね〜」
「しょうなのら。らいねんも、じぇったいにいくのら」
「そうね、またみんなで行きましょうね」
セルマ婆さんの温かい感じで、少し心がポカポカしてきた。こういうのって、ロスかな? 推しのライブが終わっちゃったよ〜みたいな?
「ふむふむ」
「あらあら、ふふふ」
軒下にちょこんと座り、ピカにもたれながら腕を組む。ちょっと考えているポーズなのだ。
「ロロー! セルマ婆さん! おはよう!」
今日も元気にやってきたディさんだ。相変わらず、眩しいくらいに綺麗だね。
「二人で日向ぼっこなの?」
「ロロちゃんがね、お祭りが楽しかったのに終わっちゃったと言っていたのよ〜」
「なんだ、また来年あるじゃない」
いやいや、ディさん。また明日みたいな感じで言ってるけどね。
「らいねんまで、ながいのら」
「すぐだよ。あっという間だよ〜」
「しょう?」
「そうだよ。来年もララちゃんが来るって言ってたね。楽しみだね」
「うん、ららちゃん」
そっか、ララちゃんとは来年まで会えないのか。せっかく仲良くなったのに、それも寂しいなぁ。
「しょれまで、あえないのら」
「遠いからね、仕方ないよ」
ふむふむ、お隣の領地だものね。ちょっとそこまでって感じにはいかない。
「あれあれ〜? ロロったら、ララちゃんに会えないのが寂しいのかな?」
「しょうなの?」
「アハハハ! 僕が聞いているんだよ」
ん〜、ララちゃんに会えないからかなぁ? お祭りの間、ずっと一緒にいたものね。柔らかくて小さなお手々を繋いでた。ふわふわした髪に、ふんわりとしたおリボンがお似合いだった。
「また来年なのら」
「来年も一緒にパレードの馬車に乗ろうね」
「しょれは、いやなのら」
「ええー! ロロー!」
ディさんが抱きついてくるけど、それだけは遠慮したいのだよ。
◇◇◇
今年もなんとか無事にルルウィン祭は終わった。あの夜のウルフの襲撃は予想外だった。あれは辺境伯家にいる先輩に要相談だ。詳しく状況を書いた文を送ってあるから、そのうち返事がくるだろう。
「でぃしゃん、おやしゃいとりにいくのら」
「うん、ロロ!」
さっきまでピカに凭れて、まったりしていたのに復活したらしい。ヨイショとピカに乗って手綱を握っている。もう慣れたものだ。僕も麦わら帽子を被って、さあ畑に行こう。
「ねえ、でぃしゃん。でぃしゃんはじゅっと、ああしてきたの?」
「ん? なにかな?」
「おまちゅりのよる、かわでしてた」
「結界を補強してたことかな?」
「しょうしょう。じゅっとしてたの?」
この子には本当に驚かされる。僕が結界の補強をしているからといって、それがずっとしてきていたことかもと、どうして考えられるのか? 僕がこの街に留まっている理由がそれだ。
約300年前のことだ。もう駄目だと誰もが思った時に光の精霊様が力を貸してくださった。あの結界はその名残なんだ。それを毎年補強している。約300年間続けてきたことだ。
だからといって僕は仕方なくしているわけじゃない。あの時、仲間と一緒に守ったルルンデの街が好きなんだ。時々他の領地に行くこともあるけど、ルルウィン祭の時期には必ず戻ってくる。
何かしているなと周りは思っているだろう。だけど、ロロのようにずっとしているのかと聞かれたことはない。まさか300年もの間続けているなんて、僕たちよりずっと早く寿命が尽きるヒューマン族には考えつかないだろう。
「ロロはそう思ったの?」
「うん。でぃしゃんが、まもってくれてるんらって」
「ロロは本当に良い子だね」
ロロの柔らかい髪を撫でる。まだこんなに小さいのに、よく考えついたものだ。
「でぃしゃん、ありがと」
「ふふふ、どういたしまして」
そっか、辺境伯家にいる先輩が言ってた。時々こういう子がいるのだと。辺境伯家の300年前のご先祖様にもそういう令嬢がいたと。
普通では考えつかないことを当たり前のように考えて、それに向かって行動を起こす。しかも能力も飛び抜けていると。
ロロの場合、まだ3歳だ。今はまだロロよりレオの方が能力は高い。だけど、この子はきっとそうだ。それにロロの持つ加護も特出している。
「ロロ、いつか一緒にエルフの国に行こうね。僕が案内するよ」
「うん、でぃしゃん。たのしみなのら」
ふふふん、と鼻歌を歌いながらロロはピカに乗って畑を行く。このまま素直に成長してほしい。
いつか僕が生まれ育った国を見てほしい。僕も楽しみだ。
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宜しくお願いします。
恒例の発売記念SSです。本日4巻発売です! ドッキドキです:(*°⬠°*):
どうかたくさんの方が手に取ってくださいますように!(ღ*ˇᴗˇ*)。o♡
4巻の内容にあわせて、ルルウィン祭直後のお話になります。
もう読んでいただいた方もおられるみたいです。いきなりwebにはないお話から始まりますが、大丈夫でしたでしょうか?
4巻もpotg様のイラストが超可愛いです!
よろしければ、感想をお聞かせくださいませ。日々の糧にさせていただきます(^◇^;)
明日も通常の投稿はお休みさせていただいて、発売記念SSになります。
続きではありませんが、お読みいただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします!(*´ᵕ`ㅅ)




